スケッチブックのもう一人の僕
そして僕とアシュリーは、残りの三人の才能の持ち主を探すことにした。その為今は二人で屋敷を探検中、ということになっている。
やっぱり仲間がいるのといないのとでの差は一目瞭然だ。心強いのは勿論、三人いれば文殊の知恵ということわざがあるように、僕にはない知識をもっていたりする。協力プレイだ。
アシュリーは徐々に心が打ち解けてきたのか、時折微笑を浮かべるのだ。そのせいで僕は直視出来ないのだけど。
順調に進んでいくうちに、僕らは書庫に辿り着いた。本をびっしりと並べられた本棚が、いくつかの平行な列をつくっていた。
これだけ本があれば、魔女の日記とか、魔導書が混じってあっても可笑しくはない。でもこんな大量の本の中からピンポイントで見つけてくるのは難易度が高い気がする。
本を探していると個人的に気になる本が所々あり、途中で魔女なんかそっちのけで本に没頭してしまった。アシュリーには申し訳なかったな。
でもアシュリーも僕が本を読んでいる間に、アシュリーのトートバッグからスケッチブックと鉛筆、消しゴムを出して、僕をスケッチし始めたのだった。流れていくように滑らかで早い。
美少女に模写してもらえるなんて機会はもうないとは思うが、やはり恥ずかしいものはある。
「…なんで僕を描いてるの?」
「…だって、もしかしたら会えなくなって忘れてしまうかもしれないから。私、絵を描くことくらいしかできないし…」
アシュリーは早口でそう返すと、真剣な眼差しで僕の金色の瞳を覗いた。頬の火照りが止まらない。
「ほら、できたよ」
結構早描きだ。僕はアシュリーのスケッチブックを覗き込んだ。そこには、本当に数分間という短時間で描いたとは思えない、僕の姿があった。
本を両手に持ち、カッターシャツに黄土色のカーディガンを羽織った上にパーカーを羽織っている少年。黒髪の蓬髪に周囲から中性的とからかわれた顔つきは、細部までこだわっている。
「凄いよアシュリー!凄く絵が上手いね!」
我ながら僕の語彙力のなさに脱帽してしまう。
「ありがとう…私も結構自信あったよ。今日は調子がいいからか、鏡に映したみたいに描けた気がした」
鏡、か。
多分アシュリーは知らないだろうし、悪気は微塵にも感じないから、ただ比喩的に表現しただけなんだろう。
僕は微笑を返した。




