01 Prologue「アンジェリカの為に」
01 Prologue「私のアンジェリカの為に」
今年も・・・ヨーロッパは、雪の季節
真っ白な雪と共に、「穢れを知らない真っ白い天使」達が
青い空の上の天から、舞い降りて来ているのだろう・・・
毎年、11月末か12月初めの日曜日「第1アドヴェント」から
「クリスマスマーケット」目当ての天使が地上に降り始め・・・
一番の賑いを見せる「第3アドヴェント」と
クリスマス直前の「第4アドヴェント」には・・・
こっそりと、天使が人間に交じって
クリスマスマーケット満喫しているのを見かける事ができる。
私は、アンジェリカ達・・・
特に役職を持たぬ名も無き「天使達」に見つからない様に
「伝統のドイツ菓子」宗教の儀式に使う薪みたいな形の
「シュトレイン」ラム酒香る、ドライフルーツやナッツが入った
重くしっとりした「甘いケーキ」を手に入れ
「私のアンジェリカの為」に、ミュンヘンベルクの名物
柑橘系のピールとナッツ、香辛料と蜂蜜がたっぷり入った
平たい焼き菓子「レープクーヘン」を置いてある店を探す。
幾つかの屋台で「レープクーヘン」を見付けて・・・
マーケット内を歩き回り、一番良い物を物色している最中
その途中に、彼女が喜びそうな「クリスマスオーナメント」と
厩でのキリストの誕生を祝福にやってきた3人の賢者
赤ちゃんのキリスト・マリア・ヨーゼフと・・・
羊・馬の人形がセットとなった小さなドールハウス
「クリッペ」に、目を止める。
『今でも、あの時・・・
直ぐに「一緒に行く」と、言えなかった事を後悔している』と
前に、ベファーナが言っていた事を思い出し
精巧に手作りされた素朴な色合いの「クリッペ」を手に取った
「作り手の優しさ」と「幸福への願い」が感じられる
この「クリッペ」なら、ベファーナも喜んでくれるだろう
私は「オーナメントとクリッペ」を購入した。
・・・また、冷たい雪が降り出す・・・
『今年も随分、寒くなったモノだな・・・』そう呟き
私は、荷物が濡れてしまわない様に紙袋の口を閉め直し
抱え直してから、天を仰ぐ
・・・昔の「このクリスマスマーケット」で、
幼い頃の私は「幼い彼女」と出会った。・・・
次に「彼女」と言葉を交わした時には
「彼女」は、私の存在すら忘れ去っていたのだが
それも良い思い出だ・・・
「彼女」は、私がずっと見ていた事を知らないし
私が一方的に「彼女」を見て、一方的に憧れを抱き
眺め、観察していた事だって知らないのだから
過去の出来事に思いを馳せ・・・
私は少し苦笑いしながら、自らの滑稽さに溜息を吐いた。
今回「集めた魂」の中に、「彼女の欠片」が在るとは限らない
・・・彼女と・・・
今年、会えるとは限らないのに
・・・私は・・・
「彼女の為」に「クリスマスを感じられる物」を集めている
それ以前に、「死神」である私が・・・
「こんな風にクリスマスの買い物を楽しんでいる」って、
本当に、如何なものか?
他のモルス・・・自分と同じ「死神達」に発見されても
「天使達」に見付けられても・・・良い顔はされないだろう
そんな事を考えながら・・・
良さ気な「レープクーヘン」を見付け購入する。
『良いクリスマスを!』商品を渡す売り子の声に
自然な笑みが零れた・・・
『ありがとう、良いクリスマスを・・・』
受け取った商品から「幸せへの願い」が感じられた
この「レープクーヘン」は
売り子をしている少女が作った物なのだろう
「機械的に作られた物」ではなく
とても「良い魂」が込められているのが感じられた。
この「レープクーヘン」なら
「彼女」が「彼女」としてクリスマスを体験できなくても
「レープクーヘン」に込められた思いで
「彼女」が、クリスマスを疑似体験ができる筈だ
良い買い物ができた事に、私は満足した。
後は、イタリアに行って・・・ミラノの銘菓「パネットーネ」
パネットーネ種の酵母でじっくり発酵させた
ドライフルーツの入りの「ブリオッシュ」を買うのと・・・
コインが入ってて、切り分けた時に運試しができる
「パンプディング」をイギリスに買いに行く予定だ。
そしてイヴの夜を越えた、夜明け前には・・・
クリスマスマーケットには欠かせない「グリューワイン」
スパイスの入った甘く温かいホットワインを
確実に2人分調達したい
今年は・・・少し違う地域にも足を延ばして
レモンの薄切りが入った、白ワインの「グリューワイン」も
調達できれば・・・と、考えていたりもした。
・・・今年も・・・
「私のアンジェリカ」と、会えるかもしれない
・・・「クリスマスの聖なる朝」を・・・
私は、クリスマスマーケットで購入した戦利品達に囲まれて
・・・「自分の手で亡くした彼女」・・・
私だけの「アンジェリカ」を1人、待ちわびる。
ドイツのクリスマスマーケットの上空を
死神達が忙しく、飛び交い通り過ぎていく中・・・
天使達は、優雅にクリスマスをエンジョイしている
モルスは、空を見上げ
『そろそろ、交代勤務の時間だな・・・』と、呟く
人間のいない場所に移動し、人間達から見える姿を消し・・・
呼び寄せた3つの頭を持つ「ケルベロス」が牽く
犬橇に乗って仕事に戻った。
クリスマス、日本では「鶏」だけど
本場では「七面鳥」なんですよね・・・
(食べた事ないけどw)
(ホロホロ鳥や、ドードー鳥な時期もあったらしいけどww)




