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【プロローグ】
「もう少しだけ待っていてくれ、アイリス……。今度こそ…きっと……」
男は冷たい部屋の中で、一人つぶやいた。
吐く息すら白く凍りつきそうな地下室。
そこは光の届かない、静寂の空間だった。
石造りの壁には冷却用の魔導具がひっそりと稼働し、部屋全体の温度をひたすらに下げ続けている。
男の視線の先には、白い布を被せられた何かが横たわっていた。
彼は愛おしそうにそれに手を伸ばすが、あと少しのところでその動きを止める。
冷たい指先が震えていた。
それは寒さからくるものではない。
彼の心を満たす、狂気にも似た深い執着と悲哀が彼を震わせているのだ。
何度も傷付けてきた後悔と、これからも繰り返すであろう苦悩。
男は再び深く息を吐き、重い扉を閉めて薄暗闇の世界を後にした。




