21.猛烈に〜Impetuoso〜
羽鳥蝶子ですわ!『蝶子様』って呼んでもよろしくってよ!私の出番少なくない?作者は何してるのよ。ビビを追いやって前書きに登場しちゃったわ。早く出たーい!
作者「後書きは回数出てるじゃない。我慢なさいな。」
エレベーターから土橋みみを支えながら、法律事務所の受付の前に来た響は、先ほど口紅で裏に自分のサインを書いた名刺を黙って出す。その横で、土橋みみは荒い呼吸を繰り返していた。
受付の女性の1人がその名刺を見た瞬間、柔らかな表情が厳しいものに変わる。そして響の顔を確認すると、もう1人の女性に指示を出す。
「至急、代表に連絡して!」
「えっ?!今、クライアントと面談中で…」
「良いから早く!『5番ファイル』だと伝えて!」
急かされた女性が、慌てて内線を鳴らす。
「先生、申し訳ありません。『5番ファイル』の案件についてお客様がお見えです。」
その言葉を確認すると、指示を出した女性が響たちに笑顔で応対する。
「お連れ様の体調が優れないようですね。すぐにお部屋にご案内致しますので、そちらで休みながらお待ち下さい。今、係りが参ります。」
するとすぐに、事務員らしき女性が現れ、響たちは仮眠室に通された。暖色系の暗めのライト、森をイメージしたような壁紙に、木のシンプルなベッドが2台。間にはカーテンがあり、仕切ることができる。鳥の鳴き声や、川のせせらぎのような音が、耳障りではない音量で絶えず流れている。ベッドサイドの小ぶりなテーブルには、縁に金色で蔦の絵が描かれた白いカップが2つ、湯気を立てていた。ほんのりカモミールティーの香りがする。響はベッドに土橋みみを座らせると、カップを手渡した。先ほどより落ち着いてきたのか、彼女の手の震えが少しおさまっていた。土橋みみは少しずつ、カップに口を付けた。飲み終わるのを待ち、横になるように勧めると、素直に横になり目を閉じた。暫くすると寝息を立て始める。響は土橋みみの顔にそっと触れる。顔色もだいぶ良くなってきている。眠る土橋みみに毛布をかけ直す。
「逃げるタイミングを見失った…」
そう呟き、ため息をつく。土橋みみの眠るベッドの足元に腰を下ろし、意味もなく、自分の足元をじっと見つめた。
さてさて…どうやってこの状況を説明するか。和臣からはすでに連絡が入っているはずだが…そんな事を考えていると、廊下からバタバタと慌ただしい足音と声がする。何事かと扉を開けたのが……運の尽きだった。
「響っ!何があった!響っ!」
髪を振り乱し、ネクタイを緩めた、背が高く体格の良い男が突進してくる。あれは、猪か何かか?
「代表!――先生っ、鈴木先生!落ち着いて下さ〜いっ!」
若手弁護士らしき人物が半泣きになりながら『先生』を止めようとしている。いや、そいつは止まらないぞ?一周回って逆に冷静になった響は、心の中でツッコミを入れてしまったが、慌てて廊下に出て扉を閉める。今は土橋みみを休ませることが最優先だ。
「―――き、響っ!!無事だったか!何をしたんだっ?!」
ガシッと両肩を掴まれて、体をガクガクと揺らされる。
「ちょっ――待っ……て、してないってば〜〜〜」
首がムチウチになりそうだ。
猪……じゃない、止まらないこの男は、ここの事務所の代表弁護士『鈴木要』。響の長兄だった。
完太「最近さ、僕も出番少なくない?ビビはどう思う?ビビ?え?無視?」
ビビ↓
ー蝶子に前書きを奪われて落ち込んでるフリ中(リベンジプラン思考中とも言う)ー




