第41話:三年間の「強制デスマーチ」回想
「……はぁ、やっと着いた。見てよこの景色の変わらなさ。五年前から更新されてない化石サイトかよ。……っていうか、あのお姉さん(カナデ)、最終的に『死ななきゃ安い』とか言い出したからね。労基に駆け込んだら一発で営業停止だよ、あの学園」
カイト、15歳。
見た目はシュッとした美少年だが、口を開けば「だりぃ」「糖分」「有給」が三種の神器。その死んだ魚のような瞳には、三年間のスパルタ教育で培われた、底知れない「サボりの極意」が宿っていた。
カナデとの修行は、もはや「教育」の域を超えていた。
空から降る数千の火炎鳥を、雷速の移動のみで回避し続け、一秒でも静止すれば足元が爆発する「強制ダンス」。風の力で大気中の熱量を排出し続けなければ、肺が焼ける極限状態。
「カイト、今の回避、0.01秒遅かったわよ? はい、残業確定!」
あの赤い女の笑顔を思い出すだけで、カイトの胃がキリキリと鳴る。
「(……ま、おかげで雷と風の同期は完璧だ。……これで誰にも邪魔されず、実家でニートのプロとして君臨してやるぜ。……ただいまー。帰ったぞ、この野郎共ー)」
玄関の扉を開けた瞬間。
――ドォォォォン!!
挨拶代わりの巨大な拳が、カイトの顔面スレスレを通過し、背後の門を粉砕した。
「ガハハハハ! 帰ってきたか、カイト! 随分とひ弱な気配になったじゃねぇか! 骨が錆びついたか、お前!」
大笑いしながら巨大な腕を振るうのは、父ガモン。相変わらずの筋肉ダルマである。
「……ちょっと、オヤジ。帰宅一秒でリフォーム工事開始かよ。……あのさ、こっちは長距離移動で疲れてんの。今のパンチ、普通なら首が飛んで『はい、サービス終了』だよ? コンプラ的にアウトだからね?」
カイトは首を数センチ傾けただけで、その剛拳を「回避」というより「無視」してのけた。
「……あなた。玄関を壊すのは二度目よ。次はあなたの頭を玄関代わりにするわよ?」
背後から、氷点下の声が響く。母レンだ。
彼女は手に持ったお盆を、まるで名刀のように静かに構え、冷徹な目でカイトを見つめていた。
「(……出たよ、冷徹・オブ・冷徹のレン母さん。ガモン父さんが『物理破壊』なら、この人は『絶対切断』担当だ……)」
「カイト。……お帰りなさい。学園で何を学んできたのか……私が直々に『人事査定』してあげるわ、あなた」
「……査定? 嫌だよ、評価面談なんて一番嫌いな言葉なんだよ。……俺はただ、母さんの飯食って寝たいだけなの。わかって?」
そんなカイトの思惑などどうでもいいとガモンとレンはさっきを漲らせながら迫ってきた




