第2章〈都〉3
「そう……、でも、わたくしも、オトマルという方に同感よ」
フアナシィーの眉根が寄った。
「わたくしたち、婚礼までどんな間違いが起きてもいけないわ」
「間違いって何? ユミトといるのが間違いなんてことはないわ」
ユーニスは、思わぬ言葉に涙が引っ込んだが、フアナシィーは、青い目を細めて言った。
「あなた、まだ何も知らないのね。それで、王太子妃になれると思うの? 」
「わたしは、王太子妃になるつもりはないの。友達を探しに来たんだから」
ユーニスが、いっそ誇らしげに言ったところ、フアナシィーは目を見開き、次に眉根をさらにきつくして、嘆息しながら言った。
「……呆れた」
「え? 」
ユーニスが驚いて聞き返したところで、休憩の終了を知らせるベルが鳴らされる。
「さぁ、次はダンスの時間でございます。皆様、広間へ」
フアナシィーは、さっと席を立つと部屋を出て言ってしまった。ユーニスは、慌ててあとを追いかける。先程言われた言葉が、頭の中をぐるぐるする。
呆れた、と言われた。
ダンスの授業は、そのことで一杯になってしまったユーニスは、足元も覚束なく、何度も注意されることになってしまった。
いくら王太子妃に興味がないと言っても、さすがのユーニスも落ち込んでしまい、とぼとぼと自室に帰る。
その日の夜は、あまり眠れなかった。友達になれると思っていたフアナシィーに対する期待が外れ、失望感が胸に迫る。
こんな時、ユミトの側にいたい、とユーニスは泣いた。ユミトは言葉こそ少なかったが、ユーニスが会いに行けば、いつだって隣に居てくれた。
しかし、そんなユミトも、ユーニスを拒絶したのだ。ユーニスは、涙が出てきて仕方なかった。ユミトと一緒にいるのが、何故間違いとされるのか、わからなかった。
ユーニスは、三日フアナシィーを避けた。しかし四日目になって、朝の開始時間前、フアナシィーに自ら近づいていった。
「あの……、フアナ。教えてほしいの。わたしが、あなたに嫌な思いをさせたのは、謝るわ。でもわたし、あなたと友達になりたいのよ」
「わたくしは、友達など求めていない」
フアナシィーの声は冷たかった。
「わたくしは、何が何でも王太子妃に選ばれなくてはならない。実家は破産寸前なの。あなたみたいに、能天気でいられないのよ」
「そうだったの……」
ユーニスは、フアナシィーの言葉に打たれるような思いだった。確かに、家の名誉を背負うフアナシィーにすれば、ユーニスの言葉は侮辱にも取れるものだったかもしれなかった。
「ごめんなさい、わたしの思いがあなたを傷つけていたのね。……でも、わたしたち、友達になれると思う」
なおも言い募ったユーニスに、フアナシィーはため息をついた。
「あなた、本当に愚かな子ね」
「だって、わたしは王太子妃になりたいわけでもないし、フアナの敵になりようがないでしょう。ううん、わたし、フアナを応援する。ますますそういう気持ちになったわ」
ユーニスが明るく言うと、フアナシィーは苦笑いした。