『小説家になろう』のランキングにランクインしたのに、ブックマークも増えないし、感想も書かれないっておかしくない? おかしいよね!
※この物語に登場する二人の女子高生は、小説のタイトル及び名言しか知りません。本編は皆さまが実際に読んでお楽しみ下さい。
「うちさ……日があいてゆさりんのあだ名がなんだったか……忘れちゃった」
そう言って、膝から崩れ落ちる所作をする、堕無。もちろんそれはバレバレの演技で彼女は一切の悲壮感はない。
「一日しか経過してないのに、そんなメタい発言しないの、あかちゃん」
「はあい」
叱られた子どものように、きまり悪そうに俯く堕無だったが、もちろんこれも演技で彼女は一切の呵責はない。
「なぜなら……私たち!」
「「なしなしコンビだから!」」
そう言ってオチなしヤマなしコンビは笑い合う。今日も今日とて二人は談笑に精を出し、談話に生を見出している。
「いやあ、今日もネタ提供……おっと違った。作品提供してくれる人がいてよかったね」
「ほんと、ほんと。まあ次回のネタ……じゃなくて作品はないから、実質今日が最終回になるんだけどね」
「えー! もっとやりたい、やりたい~! 親切な読者さんがいなくてもや り た い ~」
駄々をこねるのは演技ではなく、本心からやっているようで様になっていた。少年の心はいつになっても忘れたくないものだ――少年ではなく少女だけれど。
「『小説家になろう』のランキングにランクインしたのに、ブックマークも増えないし、感想も書かれないっておかしくない? おかしいよね!」
「それって単純におもしろく……」
「それ以上……言わなくていい。言わなくていいんだ……うちらの会話をだらだら続けるだけの小説なんてさ、需要無かったんだよ……分かってるって……」
――アニメ化されたら、CV.はさ、水瀬い○りさんが良いなって思ってたのに……
「いや、夢でかいなぁ。アニメ化どころかコミカライズも無理だよ」
夢を語るのは自由さと儚げに言う堕無、視線はあさっての方向を向いている。
「まあ、たしかにね。作者的にはもっとたくさんのネタが提供されると思ってたみたいだけど無理だったみたいね」
「まあ、くよくよしてても仕方ないので、最終回(仮)の作品を紹介しましょう!」
「お釈迦様の慈悲で異世界に転生したけどチート能力を貰わなかった事を後悔しています~続・三匹のクズ~」
「これよ、これこれ! こういうのがさ、ザ・なろうって感じじゃん」
「どこから解説したら良いか分からない、大盛り特盛りてんこ盛りって感じね。異世界+チートってだけで一次審査は通過してる感じ」
勢い良く会話を弾ませる二人。今日も自由に、そして、饒舌に話を展開する。
「お釈迦様の慈悲ってあたりから昔話感をにおわせて、からの最後の三匹のクズってのが定番の三番モノパターンにつながるのね」
「三匹の子豚だけじゃなくて、この世には三がつくネタって多いよね」
「三の倍数だけなんかやる人とかも……」
「あの人は、二番煎じじゃない一発屋だったけど、三の魔力に呑まれたよ」
「三の魔力って何!?」
この「なろう少女の自由談話」も実は今回が三話である。三日坊主にならないように、これからも少女たちの談話に期待したい。
「三人寄れば文殊の知恵とか言うし、三人目の少女が欲しいよね」
「そう言うと思ってね、用意しときましたよ。ゆさゆさ」
堕無がそう言いながら、扉の方を指さした。その顔はいつもの演技している顔には見えなかった。
「あかちゃん! すごいわね! どんな人を呼んだの!?」
「それは、見てのお楽しみです」
「楽しみね!」
「それでは登場してもらいます! 三人目のゲストの八真有さんです!」
二時間後……
「いや、二時間たってないから! 時間詐欺しないの!」
「時間詐欺って何言ってんの、ゆさゆさ」
二時間は経過していないものの、一向にその八真有さんが現れることはなかった。実際に扉の奥には誰も存在していなかったということだ。
「いやあ、私の名演技、どうだった」
「こんなところで発揮しなくていいって思ったわ、以上。アニメ化されたら私は佐○綾音さんに声をあててもらうんだから……」
「いや、ゆさゆさ今それまったく関係ないから。うちらの物語、今日で最終回だから」
「嘘だと言ってよ! あかちゃん! 私たちの物語はこれからだなんて嫌だよ!」
打ち切りエンドのにおいを嗅ぎ取った夜馬無が悲痛な叫びを声にする。その表情を見た堕無が無慈悲に言った。
「ゆさゆさ、婚期が遅れて、必死になってるアラサーおばさんキャラの顔になってるよ。ほらほら、笑顔えがお」
「ほっといてよぉ!」
これがお釈迦様とは違い、慈悲のない堕無と言う少女である。遠慮なく、忖度なく、配慮なく、堕無は続ける。
「さ、次は名言だよ。うちが言うから、ゆさゆさがコメントしてね。『主人公のジョブはナイトが良いんじゃないか?』『ダメです、それはイケメンの為のジョブです』はい、ゆさゆさ、どーぞ」
「…………」
しばらく沈黙の時間が続いた後、重々しく夜馬無が口を開いて言った。
「世の中、身の丈に合った生活と言うものがあります。可愛い人が奇抜なオシャレしたら様になるように。背の高い人が、ぱっつぱつのタイトジーンズ履いて、スラっとしている美脚をアピールするように。巨乳の人が胸元の開いたシャツを着ていまにもはちきれんばかりのバストを強調するように。世の中には分相応なんです。持って生まれた長所を生かして戦うしかないんです。すべて持たないものは、慎ましく、せせこましく、大人しく生きていなければならない。そう、近年はスクールカーストと言って学校ですでに序列化が始まっている。自分の分を知り、弁えなければならない世の中になっているのだ。自らの立ち位置を理解した行動をとらなければ、たちまちに他者から迫害され、攻撃され、心無い痛罵をあびせれれることとなるのだ。そう、誰でも良いなんてことはない、真の平等など存在しない。最初から! はっきりと! こんな人はダメですと言ってくれた方がマシだ! そもそも……」
「ちょーっとストップ! 分かった、分かったから。ゆさゆさは江戸時代から続く身分制度に親を殺されたんでしょ、そうだよね!」
語気を強くして堕無が言った。そうでなければ、ここまで熱弁する理由が分からないという熱弁っぷりだった。
「いけない、私ったらつい平静を失って、冷静さを欠いてしまったわ。氷雪系最強の異名を持つ夜馬無ゆさななのに……ね」
「いやいや、氷雪系最強とか誰も言ってないから。誰もそんな異名与えてないから。勝手に拾ってこないでちゃんともとあった場所に返してきなさい」
今度は堕無が夜馬無を諭すように言った。
「そうやって、自分の可能性をやる前から否定してたらできるものもできなくなっちゃうんじゃない?」
「まあ、そう言う意見もあるだろうけど。考えてみてよ、よくあるでしょ、イケメンに口説かれたら女の子はドキドキするけど、イケメンじゃない人から同じことを言われたら気持ち悪っって言われるやつ。後でSNSに書きこまれたり、グループラ○ンに書きこまれてて拡散するやつ」
――ああなっちゃうと、取り返しつかなくなっちゃうんだよ。
物憂げな表情で、夜馬無は言った。きっと彼女もこの時代の牙にやられてしまった被害者なのだろう。
「怖いわよね、情報化社会って」
「まあ、こうして会話をわざわざ全世界にバラまいているうちらが言っても説得力ないんだけどね」
たしかにと言って、夜馬無はいつもの表情になる。もうこうして二人で話をする時間も少なくなってきていると感慨深いのかもしれない。
「あかちゃん、最後になんか言っとくこと……ある?」
「次うちらが会話する時はブクマ五桁、レビューも感想もたくさんきている時がいいな」
「相変わらず、夢が大きいわね……私ももっと多くの人に私たちの自由談話を聞いてもらえると嬉しいわ……」
こうして今回の談話が幕を閉じた。きっと読者が忘れない限り、この二人の談話が無駄だったということにはならないだろう。きっと「小説家になろう」に読者がいる限り、これからもこうした無謀で無茶な自由談話が繰り広げられる。
なにより、最終回の雰囲気を醸してしまったが、最終回になるとは限らないのだ。
今回、タイトルと名言を頂いた作者の『すあま』様に多大なる感謝を申し上げます。ありがとうございました。引き続きまだまだ作品募集を行っておりますので、少しでも興味を持っていただけた作者様、どうか感想欄に作品名を記入して頂けると嬉しいです。
今回紹介させてもらったのは、すあま様の「お釈迦様の慈悲で異世界に転生したけどチート能力を貰わなかった事を後悔しています~続・三匹のクズ~」
【https://ncode.syosetu.com/n4578eu/】
でした。