鍛冶屋ケンパチ
―2時間後―
ガチャっ キー
ドアを開けると、それに気づいたケンパチが笑顔でこちらを振り返った。
「おとぎ様!お帰りなさいでやんすー!もうバッチリできてるでやんすよ!」
ごそごそと大きな布で包まれたものを取り出して、ニカニカとしながら手渡す。
「開けてみるでやんす!切れやすいから気を付けるでやんすよ」
手渡された瞬間布が切れ曲剣が顔を出し、親指を少し切ってしまった。
「ほら!言ったでやんすよー!ティッシュティッシュティッシュティッシュ」
ケンパチは急いでティッシュを持ってきて親指にあてる。
「おいらが悪かったでやんす。鞘に入れて渡せばよかったでやんす…。でも、せっかくの曲剣を見て欲しかったでやんす。」
泣きそうな顔で申し訳なさそうに、親指を抑えている。
ぴぴぴぴぴ
「大丈夫。心配ないよ。この世界での痛みはしれている」
それにしても、薄く氷を剥がしたような美しい刃紋、背筋が凍るくらい鋭い刃渡り。まさに秋剣。それに何より軽い。
ぴぴぴぴぴ
「試し切りしたい」
「も…もちろんでやんすよ!」
ケンパチは急いで店の奥から木材を持ってきた。
「投げるでやんすよー!よいしょっほいっ」
飛んできた木材を能力アジリティーを使って、空中で回転しながら素早く切る。シュンっていう風切り音とともに真っ二つになった木材がぽとっと落ちた。
全く切った感触もなく、柄が手にしっくりと馴染む。まるで剣が自分の手の一部分であるかのようだ。
「おとぎ様すげえでやんすよ!速すぎて切ったのが見えなかったでやんす!なんかスキル使ったでやんすか?曲剣の感想はいどうでやんすか?」
ドキドキした様子で手を胸の前で組みながら聞いてきた。
ぴぴぴぴぴ
「びっくりした。ここまでとは思わなかったよ。今のスキルはアジリティといって動きを加速させるスキルだよ。暗殺の時は、背後に回り込んで首を落とすときに使うんだ。」
「さらっと怖いこというでやんすね…。おとぎ様一度鞘に曲剣を納めてみてくださいでやんす!」
ケンパチの顔からわくわく♪ワクワク♪ってのが凄い伝わってくる。俺の反応を楽しみにしてるって感じでやりにくいな…
ぴぴぴぴぴ
「分かった」
左手に鞘を持ち、右手に曲剣を持ちゆっくりと近づけていく。この曲がり具合で入るのだろうか。隣でロメリアが顔を近づけ、より目気味に見つめている。あれ?ちょっと可愛いかも…
スーーーーーーーーー
鞘に刀が収まっていく
カチ
気持ちいい。これは気持ちいいぞ。この寸分の狂いなく合わさる感じがたまらん。
「何か嬉しそうでやんすね~!顔がにやけてるでやんすよ?おいらも喜んでもらえて嬉しいでやんす!」
さっきよりケンパチがニカニカしている。俺今こんなニカニカしているのか?