アングラ魔窟へ行く前に
ケンパチ 160cm 70キロ 16歳 小太りで明るい やんす口調 鍛冶屋2級
ぴぴぴぴぴ
「たしかワープポートって中央聖堂からいけるんだっけ?」
「そうだよ?あ・・・そういえばおとぎは下層に降りるの初めてだったね!
下層に行くには、中央聖堂のワープポートから降りるんだけど、下層で死んじゃうとライフストックだけじゃなくて、持ち物と持っているルーンを全部ロストしちゃうから、必要最低限しか持って行かない方がいいかもね!」
なるほど。中層で死んでもライフストックが1減るだけだが、下層で死ぬと1ライフストック、持ち物、ルンも全ロスか…。ライフストックについては俺はまだ死んでないから初期に貰える5つ残っているが、ルンがなくなるのは相当きついな。
ん?
ぴぴぴぴぴ
「下層がグール地区で、ここが中層なら、上層って何があるんだ?」
ハイドランジアが3層(上層・中層・下層)に分かれていることは中央聖堂のポータル説明を見て知っていたが、下層がグール地区だとは知らなかった。
「それは、ロメリアも知らないの。ごめんね!」
てへぺろしながらもロメリアは全て知っている顔をしている。ロメリアは初歩的なことやすぐに答えが分かることは教えてくれるが、おそらく重要なキー要素的なことは何一つ教えてくれない。まあこれも一つの楽しみにとっとくか。
ぴぴぴぴぴ
「わかったよ。じゃあ、1000ルンと回復薬以外預けて行こう。下層で死んだときもスポーン地点はここだよな?」
ハイドランジアの初期地点は、オンボロ倉庫に大量に並べられたベッドの上であり死んだときのスポーン地点もここ。皆そこから始まるように設定にされているが、それが嫌で嫌でアパートのワンルームを借り、ここをスポーン地点に設定している。
あんな次々に誰かがポンポン出てくる場所は、引きこもりの俺にとっては、精神へのダメージがでかすぎる・・・
「もちろんそうだよ!んー・・それとねえ、さすがにその装備はまずいと思うよ?ルンも結構あるし先に装備見に行こうよ!」
初期のナイフと、普通の布服で今までやってきたけど、さすがに限界か。ナイフも刃こぼれしてきたしな。ルンを装備に使う分には損しないだろう。
ぴぴぴぴぴ
「そうだな。先に装備屋に行ってから下層に行くとするよ」
「りょーーかいっ!」
―部屋を出て装備屋に向かう。スラム街のように暗く不穏な町―
『装備屋ケンパチ→こちら』の看板が目に入る。路地に向いて矢印が向いている。
あれ、こんなとこに装備屋あったっけ?この先に装備屋があるのは知ってたけど、ここにも装備屋があったとは。
ぴぴぴぴぴ
「ロメリア。ここの装備屋しってる?」
「んー。ロメリアも知らな―い。たぶんあなたと同じ、プレイヤーが開店したんじゃないかなー?パルセットには鍛冶屋もあるしね!気になるなら行ってみようよ!初めてのお友達になれるかもよ?ぷぷぷ」
こ馬鹿にされてる?
おとぎは一人先々と路地に向かって歩いていく
「待ってよ~!ごめんってばー!おとぎ怒った?」
後ろを急いでロメリアが追っかけてくる。
ぴぴぴぴぴ
「怒ってないよ。俺が友達いないのは事実だろ」
結構暗くて狭い路地だな。
っとここか…。木造の建物に大きく『装備屋ケンパチ』とへたくそなペンキ文字で書かれている。大丈夫か?ここ。
ガチャっ キー…
ドアを開けると、中にいるおそらく名前はケンパチは驚いた顔をしていた
「いっ…いらっしゃーいい!!!」
大きい声で興奮しているのが、すごい・・・分かる。
「お客様!何をお求めでやんすか?武器でやんすか?防具でやんすか?・・・・・プレイヤーでやんすよね?
あなたがオープン初日の初めてのお客様ですやんすよ!サービスしちゃいやすよ!
それで、武器でやんすか?防具でやんすか?」
鼻がフガフガしている…やんす…やんす…
「ごめんねー!店主さん!おとぎは喋れないの。キーボード機能オンにしてくれたら、おとぎと会話できるからね。ちなみに今日は、武器も防具も見に来たよ!ちなみにおとぎは引きこもりだから、バーバー喋ると店でちゃうよ!」
おいっ。ロメリアはこっちを見ててへぺろしている。
「おっと。これはすいやせん!つい興奮しちやって…。今日から店を始めやして、店の名前にもなってるけど、名前はケンパチと申しやす。今キーボード機能をオンにしやすね」
ケンパチがキーボード機能をオンにする。ちなみにキーボード機能はデフォルトでオフになっている。
「で、どんな武器と防具をお求めでやんすか!?」
少し興奮が収まってきたな…
このケンパチって人プレイヤーだな。アームリングしてるし。でもバディがいないな。まあいいか。
そうだな…
考えてみると、実際どんな武器が欲しいのか自分でも分からないな…。
ぴぴぴぴぴ
「おススメある?」
「ん…と。ちなみにパルセットとかスキルは何ですか?パルセットやスキルによって、おススメは変わってくるでやんすよ」
あまりパルセットや能力については話したくないが、敵意はなさそうだし…まあ大丈夫か。
ぴぴぴぴぴ
「パルセットは『暗殺者』と『悪魔との契約者』」
「ジャッカルでやんすか!これまた物騒なパルセットでやんすね!…おっと失礼しやした。
ちなみにメフィストって何でやんすか?初めて聞きやした」
こいつもメフィストについて知らないのか…。
今は、ジャッカルのパルセットを生業にしているが、メフィストっていうのは正直俺も分かっていない。
基本的に、自分が持つパルセットをもとに依頼に受注申請したり、このケンパチのように開店を申請することができる。合ったパルセットがないものは申請には通らないというのがここの仕組みである。
俺の場合、初期のパルセットは『暗殺者』と『悪魔との契約者』であり、ジャッカルというパルセットのおかげで楽にルンが稼げた。まだパルセットにジャッカルは少ないらしく需要と供給のバランスが偏っているため、簡単な暗殺でも級が高くなっておりその分ルンも高い。
《しかし、まあ…昨日までに結構暗殺系はこなしてしまったから、グール狩りに行くんだが…。グール狩りについては特に申請がいらないから誰でも受注できる》
この甲に2つの黒石が縦に埋め込まれたグローブがおそらくメフィストと何か関係していると思うのだが、これが何なのかまだわかっていない。
ぴぴぴぴぴ
「これが何かわかる?」
左手に着けているグローブを見せる
「この左手に着けているグローブのことでやんすか?いやあ、始めて見やしたね~…。なんのグローブでやんすか?」
ぴぴぴぴぴ
「いや、俺も分からない。とりあえず、ジャッカルでおススメはあるのか?」
「わからないんでやんすか…了解しやした!ちなみに今日はオーダーメイドオンリーでやんすよ!細かい希望まで聞けるでやんす!もちろんジャッカルでおススメの武器防具も一からつくれるでやんす!」
オーダーメイドか…高そうだな…
ぴぴぴぴぴ
「ちなみにオーダーメイドは高いのか?」
「おっとぎー。オーダーメイドはよっぽど級の高い鍛冶屋じゃないと1日から2日かかっちゃうよ?しかも、級が低いとそんなに時間をかけて作ったものでも、いいものできるか分かんないし…」
ロメリアが割って入ってきた。耳元で話しているが、もう少し声のボリューム小さくしないと丸聞こえだぞ…。
「…大丈夫でやんすよ」
ほら聞こえてた。
「おいら、初期から鍛冶屋2級でやんすから2時間ほど時間貰えればできるでやんす!質もこの店にある商品を見てほしいでやんす!」
壁に掛けてある大剣をロメリアがまじまじとみる。
「おとぎ…。これ凄いよ…。ケンパチってただものじゃないよ!この白刃の光見てよ。しかも、初期で鍛冶屋2級って現実世界でも相当器用なんだろうね!」
確かに素人目でも凄いっていうのが分かる。この大剣の大きな刃に吸い込まれそうになる。
ってまてよ…。「現実世界でも相当器用」?現実世界でのスキル也がこの世界での基準なのか?暗殺者の俺って…。もしかして引きこもりスキルが暗殺者すきるなのか?もしかして、現実世界はリア充ばっかなのか?リア充○ァック
「おとぎ暗い顔してどうしたの?剣にビビっちゃった?」
ロメリアが口を押えてプププな顔をしている。
おっと…いけないいけない
ぴぴぴぴぴ
「で、どれくらい?頼みたい」
腕が良いことは分かった。あとは値段だ。
「そうこなくっちゃでやんす!武器も防具もオーダーメイドでやんすから結構高いでやんすよ!
それだと、ジャッカルだと身軽な短剣と軽い防具の方がいいでやんすね…だと…材料は…で…に…をして、それで、ここはこれの方がいいでやんす。身長は…体重は…。方がなで肩で…それだと…いやこっちの方がいいでやんすね…。じゃあこっちは…やんす」
何かぶつぶつやんすやんすと言って、紙と鉛筆を取り出し絵を描き始めた。そして電卓を取り出してはじきだした。
「だいたいこの装備で、これぐらいでやんす。他に希望があればその都度修正するでやんすよ!」
分かり易い絵だな…リアル過ぎるというか何というか…図で解説まで入っている。それにしても独特なフォルムだな…大きくカーブした両刃の曲剣か…。防具も黒いフードにいかにも暗殺者らしい身なりだな。それにしても、値段が…とんでもなく足りない。
「ちなみに、武器は少し扱いづらいかもしれないでやんすが、めったに手に入らないこのオリハルキアの爪で作りやすから使いこなせれば間違いなく最高の装備でやんすよ!防具もジャッカル用に軽装にしてやすが、こっちにもオリハルキアの爪を混ぜやすから、軽くて頑丈でやんす!」
ケンパチは大きい爪を取り出しこれだよという感じで見せてきた。
隣でロメリアがおおー本物だあ!と感心している。
ぴぴぴぴぴ
「ロメリア。オリハルキアの爪ってそれほど珍しいのか?」
「もちろん!オリハルキヤはA級モンスターなんだけど、なかなか出会えないし出会えたとしても強いから、武器商人たちもこぞって欲しがるくらい希少で高価なものなんだよ!オリハルキヤの爪で作られた装備は強いし貴重だから、価格が高騰してるし、何より相当な技術がないと作れない代物だからね!でも、ケンパチはこんな高価なものどうやって手に入れたのー?おそらくケンパチじゃ手に入れれない代物だよね?弱そうだし!」
「ロメリアさんは正直でやんすね!おいらが初めてハイドランジアに来たとき、自分のパルセットが鍛冶屋だと知ったんで試しに長剣を作ってみたでやんすよ!じゃあそれを見てた人が『君凄いね。下層に降りてたから持ち合わせがこれしかないが、これでその剣俺にくれないか?』って言ってきたでやんすよ。
おいら初めて作った剣が褒められたのが嬉しくて交換したんでやんす。その時はこの爪が、そんなに貴重なものとは知らずに交換したんでやんすが、調べていくうちにとんでもない代物を貰ったんだと気づいたでやんすよ」
「おそらく全ロス回避のためにルンを全部預けてたんだね!それにしても、普通は交換なんてしてくれないよ?売ったら凄いルンになるのに!」
ぴぴぴぴぴ
「そんな高価で思いで深いものを使ってものか?」
「いいんでやんすよ!装備屋ケンパチ初めてのお客様に、初めて貰ったこの爪で最高の装備を作れるなんて…この上ない幸せでやんすよ!それに初めてのお客様にこの爪を使うことを開店前から心に決めてたでやんす!だから一人目のお客様はオーダーメイドしか頼めないんでやんすよ」
てへへへへと頭を書きながら照れている。
そんなに凄い装備なら欲しいが…。
ぴぴぴぴぴ
「ありがとう。でも…ルンが足りないんだ…。武器だけだといくらになる?」
「お代はいいでやんすよ!さっきの金額は、これくらい高価なものをあげるから御ひいきにして下さいってことを伝えたかったでやんす!…気を悪くしないで欲しいでやんす!
じゃあ、作業に2時間ほど欲しいから、2時間ほどしたらまた店に来てほしいでやんす!
あ…細かい注文はいいでやんすか?一応…おとぎ様…でやんすよね?おとぎ様の体格とか加味して考えたでやんすけど…」
そういえば自己紹介していなかった
素人が口出しするより、任せた方がよさそうだな。
「いや。そのままでいい。よろしく頼む」
「じゃあ、また2時間後に来てくれでやんす!」
満面の笑顔で、ケンパチは色々材料を持って、店の奥に向かった。
「それにしてもおとぎ超超超ラッキーだね!こんな激レア装備ゲットできちゃうなんてさ~!でもいきなりタメ語使うからびっくりしちゃった。凄い上から目線だしねー。ただでこんなに良い装備もらえるのにほんとありえない。嫌われちゃうよー?」
ロメリアが興奮気味に目の前ではしゃいでいたと思いきや、急に説教が始まった。
「そんなにひどかったか?」
自分ではそんなつもりはなかったのだが…うん…気を付けよう。




