根源までの道のり(その壱)
霧先先輩と二人、旧校舎の廊下での会話に、今までの謎だった部分が徐々に明確化されて行く。
不明な部分が、まだまだたくさんあるが、俺はこれからも、それに向き合い続けて行くだろう。
**旧校舎での1幕が今より始まる**
旧校舎に急いだ二人が見たものは、複数に増えている朝の男子高生達だった。
その後、俺こと千丈蔭の大活躍により。
苦闘しながらも、なんとか一人を捕獲した。
捕獲した男子生徒は、霧先先輩の魔女の能力で消し去る。
そして魔女の能力について聞かされたのであった。
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根源までの道のり(その壱)
014
「先輩の能力を聞いて、納得しました」
驚きと、驚愕のち、納得である。
なるほど、これなら俺と花咲が、ここに来ることが解っていても不思議ではない。
「じつは、それほど千丈くんが思ってるほど便利でもないのよ」
「そうなんですか、未来が見えたら便利じゃないですか」
「未来については、夢の中で見るといった感じかしら、なので未来が解ると、いうわけではないの。狙って未来は見えないし、見えた未来も、ほんの少しの出来事で変わってしまうのよ」
確かに見えた出来事の断片だけで、判断や危機回避をするのは難しい気がする。
「じゃあ、さっきのは、なんだったんですか?」
「さっきのってなあに?」
「ほら、霧先先輩が手を当てて、男子生徒を消したじゃないですか」
「ああ、あれはね、魔女の基本的な能力のひとつで、基礎的な使い方かしら」
「使い方ですか?」
「そう、魔女だけでなく、そういった力を使う者は自身にある力を外に出すとか、内側で消費することができないと、能力は使えないのよ、わかるかな?」
電池みたいなもんかな? 電球を点けたり、モーターを動かすとか。俺のピンクの脳細胞は今日も、優れているぞ。
「何となくですが、理解しました」
「そ、よかった。もちろん全て無制限というわけではないの、溜めてる力は限られているから、外部から吸い込んで補給する、といったことができないと困るでしょ。当然、使い続ければ尽きてしまうの」
「有限ならそうですね」
「だから、千丈くん手を出してくれる」
「手をですか?」
なんか前に、こんなことがあったような気がする。霧先先輩に左手を差し出すと、白魚のような細い指を曲げて、俺の左手を優しく包んでくださった。柔らかさ、そしてほんのりとした暖かさを感じる。これだけで至福のひとときだ...
小さな幸せを感じていると、俺の左手から、何かよくわからないものが、先輩に向けてゆっくりと流れてゆく。
そうだった! すでに体験済みの出来事なのに、完全に忘れていた。
ただ、今朝ほどの勢いはなかった。ゆっくりと、俺の鼓動に合わせるように流れていく。
先輩が手を離すと、その感覚はピタリと止まった。
「ご馳走さまでした 、ということなのよ。こうして外部から力を取り入れること、これが魔女の基本的な力の基なのよ」
「なるほど、基本的な力なんですね」
納得した、そしてまた吸いとられてしまった。
今回は別に変化はないけど。
「それにしても、千丈くんは凄いわね。これだけ力を吸われても"ピンピン"しているなんて、普通じゃ考えられないわよ」
「どういう事ですか?」
「普通の人なら、これだけ力を吸い出せば、ほぼ動けなくなるのよ。下手すれば廃人確定ね」
なんですと!! そんなことされてたの、俺!?
うーん... 別になんともないんだが。
「特に身体の不調は... 感じませんが」
「だから、千丈くんは特別なのよ。普段は空間に漏れだした分だけで私達は十分なの、力の純度といい、濃密さといい、最高級よ、うふふっ...」
純度とか濃密とか... なんとな~く響きがエロイなぁ。
上級生の女性にそう言われると、興奮してしまう、変な性癖に目覚めないようにしないと。
「だから、そういうことは、あまり考えない方がいいと思う」
「...えっ!?」
そういえば先輩の能力は心を伺うとか、見通すとかも出来ると聞いていたのだった!表情がほんのり赤くなっていて、正直気まずい...
「どうせなんか、エッチなこと考えてたんでしょう。そんな意味じゃないわよ。えっと思春期の男の子は、みんなそうなの?」
「そうですね... いえ、少数派だと思います」
「そう願うわね、こういうのは、見えても良いことはひとつも無いの」
迂闊なことは... 考えない方が良さそうだな。
主にエロ関係は要注意です。
「ところで、俺の力ってなんですか?」
「さあ何かしら、わからないわ? でも、ずっと凄い力のある人が、校内にいることは知ってたから、気にはなってたのよね」
俺の力については、霧先先輩にもわからないのか。一体この力はなんなのだろう?ちゃんと自分の力についても知る必要がある気がした。
楓が来るまで、こんな世界があることを知らずにいた。俺は本当に、平凡以下の高校生だ。これも必然ということなのか、流れには逆らわないで行くポリシーだったが、これからはそうも言ってられなくなりそうだな。
なにしろ命に係わるから。
「先輩のような魔女に知られていたことは光栄です、そう思うようにします」
「そういっていただけてよかったわ、じゃあ、そろそろ行きましょう」
霧先先輩は、そう言って教室のドアに向かった。俺もそのあとに続く。ドアの外は薄暗い廊下で、人の気配はない。時刻は5時過ぎ、日暮れまではあと2時間位だろうか。
夕食時間までに帰れるかな、などど考えながら歩く。
ここ数日で、随分と非日常に馴染んでしまった。
「もう少しね、その先よ」
「あぁっはい!」
声をひそめて話ながら廊下を歩いて、予備備品室の手前まできた。先輩は立ち止まり、目を閉じて斜め上を見ている...
「減ってる?」
「えっ、何がですか」
「気配が1つになったのよ、今は凄く強い気配を室内から感じる」
「それってまた朝の状態に戻ったって事ですか?」
「そうかも知れないわ。室内をさっきから覗いてるけど全く見えないの、まるで霧が立ち込めたようで見透せない」
薄暗い廊下に二人で、立ちつくしている。霧先先輩は腕を組んで、起きている異常事態に対してどうするか悩んでいる。
俺はやることがないので、先輩のうなじを眺め続ける事しか、出来ることがない。
その時だった、背後から大きな物音が聴こえた。
それは、廊下に設置された消火器が倒れた音だった。ずっと静寂に支配されていた、廊下を切り裂くように響き渡る。
そこから物語りは、急展開で進んで行った。
今日も昨日も、本当に沢山お越しくださりまして楓は感激、です。
ご主人に変わりまして御礼を申し上げる、ですよぉ。
今回のお話では、楓の出番はありませんでしたがこれから、ですぅ。実はぁぁこれから...次のお楽しみ、でーす。
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ご意見、ご感想は"楓"が責任を持ってご主人に良いことだけお伝えするっす、ですよぅ。