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白物魔家電 楓(しろものまかでん かえで)  作者: 菅康
第弐章 予備備品室の幽霊譚
13/115

魔女の力

楓は体育館に置き去りにされましたぁ、です。

ご主人とあの女は、二人で何処にぃぃ、ですぅ。


**

遊びに夢中な楓を残し、二人は旧校舎に向かった。そこで千丈は、霧先先輩から驚愕の事実を告げられた。

魔女の秘密が今、明かされる。それの目撃者は貴方だぁ。

 体育館用具室内での捜索は無駄に終わった。

 探索を諦めたその時、霧先先輩は何かの気配を察知して、俺と共に気配の元である旧校舎に向けて移動を開始した。


 バスケ部に混ざり、特殊な能力を発動する楓を置いて。


 **

 魔女の力

 013


「霧先先輩、これはいったい!?」


「遅かったようね……」


 急ぎ旧校舎に戻り薄暗い廊下で例の男子生徒が立っていたのに気がついた。しかも、ここから見える範囲で数人が立っている。


 皆同じように身体を左右に揺らしている。男子生徒の意識があるのか無いのかはまだわからない。


 昔やった、ゾンビを倒しながら進める"カプコ○"のゲームに出てくる敵キャラのようだった。まだ距離があるので、こちらに気がついている様子はなかった。


「一人でもあれだけ苦労したのに、なんでこんなにたくさん?」


「驚きだわ、でも全てがここ旧校舎に集中しているようね、校内には……うん反応は無いわ」


 旧校舎一階に来る生徒は、いないと言っていい。部室のある二階以上に行くには、ほとんどの生徒が旧校舎と繋ぐ渡り廊下を通るので、ここで人を見かけること自体が希である。


 例の男子生徒が、旧校舎に集中している分には騒ぎにならずにすむだろう。


「じゃあ、楓を連れてきて全部ぶちのめしますか」


「それはちょっとまって。さすがに暴力で全て解決するのもどうかと思うのよ。とりあえず、あそこから一人捕まえてきてほしいの、千丈くんお願いできるかしら?」


「わかりました、じゃあ俺が一人捕まえて来ます……って!! 無理っすよ。出来るわけないです!?。霧先先輩ごめんなさいぃ」


 机を粉々にしたり、人を吹き飛ばすほどの存在に徒手空拳で立ち向かうなんて正気の人間がとる行動ではない。それは魔家電の仕事だ。


「そこまで気負わなくても大丈夫よ。それに、この場所は私のフィールドだから。ほら、今ならちょうど一人になったわよ」


 確かに、ふらふらしながら数人が廊下の角を曲がっていった。

 視界の先にいる男子生徒は一人だけとなった。


「じゃあ、とりあえず行ってきます。無理そうなら全力で逃げますので、先輩も心づもりと準備をお願いします」


「ええ、いってらっしゃい」


 小さく手を振る先輩に背を向けた。そっと歩いて、音を立てないように気を付けて男子生徒に近付いた。


 目の前にいる男子生徒は、周りを警戒している様子がまったくない。これは午前に出会ったものとは思えなかった? 増えたことが何か関係するのだろうか?


 しかし、どうやって捕まえようか。

 殴りかかって気絶させる? いや、幽霊は気絶しないと思うぞ。


 口を手で塞いで、引きずってくる?

 そもそも、あいつ呼吸とかしてないだろう。よし、担ぎ上げて走るかぁ!!


 どうやるかについて、逡巡(しゅんじゅん)していると、男子生徒は急に振り返ってきた。


 白目むき出しの表情でこちらを見る男子生徒と、中腰で立ち止まる俺の決断の時はいまだぁ!!


 慌てて飛びかかり、なんとか馬乗りになることに成功した。

 男子生徒は不思議と、なんの抵抗もせずされるがままである。


 よく見ると、首だけは左右にゆっくり動いている。

 腹這いにさせて、後ろ手に固定した。

 これで相手は動けないだろう。そのまま、腰のベルトをつかんで引きずろうとしたら、すごく軽い! 多分一キロも無いくらいだったので、そのまま、バーベルのように持ち上げて先輩の元に走る。


 霧先先輩は、横の教室の扉を開けて待っていたので男子生徒を持ち上げたままで、教室内に飛び込んだ。


 **


 空き教室に入り、先輩と運んできた男子生徒を観察する。

 見た目は全くおんなじだが、なんと言うのか、危険度というか、迫力が全くない。切れかけの電池で動くウサギのぬいぐるみを見ているようで、今にも完全に動かなくなりそうだ。


「さて、千丈くんご苦労様」


「いえ、たいしたことでは、と言いますか。あまりにも朝と違って...」


「存在が希薄すぎて驚いた、でしょう」


 先輩は俺の言葉を途中で引き継いで、疑問点を話した。

 どうやら先輩には、わかっていたようだ。



「気配をあの後ずっと調べていた話はしてあるわよね。その際に、場のエネルギーを集めては消えてを繰り返していたのだけれど。少し変な気配はそこに残っていたの」


「少し変な気配?」


「そう、消えそうで、消えない程度の気配が、ううん残り(・・・)ね。それがなんなのか私にはわからなかったけど。今そこにいる男子生徒からははっきりと感じるのよ。残り香は、ここ旧校舎で初めて実体化したようね。初めの男子生徒が戦闘力4,500,000位とすると、これが450ぐらいかしら」


『弱っ!!』

 それで、先輩は平気だって言ってたのか。

 ちなみに俺の戦闘力は幾つなんだろう?

 現実は知らない方が良いこともあるだろう。敢えて聞かない勇気を持とう。


「それで、なぜ旧校舎で実体化したのでしょうか?」


「わからないわ、ただ予想だけど、初めの男子生徒の分身のようで、まるで操り人形みたいなのよね、前に実家で見た傀儡、式神に似ているの...」


「はあ、式神ですか...」


 いよいよもって怪しさ抜群だ。

 現実離れをしているなぁ。先週までの日常に戻りたい。



「とりあえず、これどうしますかね?」


 いまだに、うつ伏せのまま動かない男子生徒を俺は指差した。

 本当に暴れる様子もなく、ただそこにあり続けるだけの存在のようだ。それは、まるで何かから脱皮した脱け殻のようだ。


「そうね、もう確認するべきことはなさそうね」


 霧先先輩は、そう言って男子生徒の後頭部付近に手を添えた。


「えっ⁉」


 先輩の手が触れた所から、徐々に男子生徒が薄くなっていく。

 触れている頭部はすでに半透明となって、リノリウムの床が透けて見えている。


「力を吸いとってしまえば、これは存在し得ないのよ。実体があるようで本当はないの。これはエネルギーが、ここで実体化しただけ...これには()がないの」


「核ぅ、ですか?」


「そう、核よ。傀儡、式神はね、本来は中心に核と呼ばれる物を持つの、それに力を絡めて初めて実体化出来る。これは、ただ力が人の形になっただけの物よ、核を持たない儚い存在よ」



 そうなんだ、という感想しか持たない。だが、実際に目の前で消え行く男子生徒を見ると、現実だという事を認識する。

 時間にして数分だろうか、もうすでに男子生徒の形は薄れて、影のようになって、そして消えてしまった。



「さて、もう消えちゃったわね。順次かたずけてもいいけどさすがに一晩中かかっちゃいそうね。」


「何体いるのかわからないですからね、霧先先輩のその術を見ると改めて魔女と思い直しましたよ?」


「そうよ、急にどうしたの?」


「先輩の能力は、あまり荒事に向かないということでしたが。どういったことができるのですか?」


「...何も言わないのはフェアーじゃないわね。わかったわ、説明するわね。私の能力は調べものに特化しているの。さっきのは魔女なら普通できるわよ」


 手を当てて、幽霊を消し去るのは普通なんだ。

 それと、先輩が言う調べものとはなんだろう?


「調べもの...ですか」


「そうね、遠くを覗く、相手の心理状態を伺う、未来を垣間見るそういった"(わざ)"を代々受け継いできたの」


 それって凄いことではないだろうか?

 先輩の告白に対して、俺は言葉もなく立ちつくした。

なお、最新投稿は、Twitterで投稿時期をお知らせして行きます、です。http://twitter.com/yasusuga9

ご意見、ご感想は"楓"が責任を持ってご主人に良いことだけお伝えするっす、ですよぅ。

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