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おいしい惣菜いかがですか! シーズン2  作者: 蒼凪 悠


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28話 やっと出番です?

 こんにちわ! ひな子です。

 前回、本当に出番がありませんでした……

 えっ? 名前が出てただけマシだって?

 いや、贅沢は言わないですけど……一応私、主人公なんですよねぇ。

 でも今回わっ! 題名からして、いよいよですっ!

 でわっ! 28話始まります!


 △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△


 私の名前は山田(やまだ) 雫(しずく)。

 スーパーあかつきに今年入社して、チェッカー部に配属された18歳です。

 引っ込み思案、人見知りな私の学生時代は、友達もできることなくいつも一人で過ごしていました。

 そう、よくいう陰キャです。

 人と話す時は、恥ずかしさと怖さで早口になります。

 それでいて、自分を誤魔化すように淡々と話します。

 勉強はそこそこできます。することがなかったから……特に英語は得意なんです。

 中学の時、たまたま見たアニメのキャラがすごく気になって、追いかけるようになりました。

 そこからどんどん沼り、自分好みの作品はほとんど見て、アニメショップにも通うようになりました。

 しかし、だんだんと学校には興味がなくなり、一段と気配を消すことになりました。

 そうです。自分の生活は2次元が支配していったのです。

 幸いにも、勉強が好きだったこと、周りに害を与えてくる人がいなかったので、不登校にはなりませんでした。

 そんな私にも友達ができました。それは会ったこともないネットの住人たち。

 異世界系アニメが好きな私は、いつしかSNSに推しへの愛を呟き始めるようになり、そこから色々な人との交流が始まりました。

 ネットはいいです。本当の自分じゃない姿を演じられるから……

 言葉がどんどん浮かんできて、気がつけばチャットで3時間なんてのもザラです。

 アバターというフィルターにかけてみんなに接する、山田雫という一人のキャラクター。

 ちなみにネットの世界での私の名前は【テケテケさん】です。

 仲良くなると、リアルでの話もお互いに話します。

 ネットのいいところなのかもしれませんが、友達は色々です。

 おじさん、主婦、OLさん、学生、最近では小学生だっていう子も。

 こんな職場で働いているだとか、このお店のケーキ美味しかっただとか、昨日旦那が帰ってこなかった! きっと浮気だとか。

 私も、もちろん話します。同期の子が床で滑って思いっきり後頭部をぶつけてタンコブができたとか。

 そして、お互いそうだと思うのですが……

 ネット界での素顔とでもいうべきアバター。

 話し方。

 プロフ。

 そこから想像する、その人のリアルの世界。

 それぞれの性格。

 十人十色とは本当によくいったものです。

 もう50歳手前のおっさんなのに、百合系が好きっていったら引かれるし、ヤバいやつだと思われる……

 BLが好きなんだけど、周りがお堅い人ばっかりで……

 漫画が好きだけど、みんなお人形さんで遊んでばっかりだから、話が合わない……

 そんなみんなの話を聞いて。聞いてもらって。

 画面に向かって笑っている自分がいます。

 ……最近は思うんです。それもまた……本当の自分なのかと。

 就職が決まって、今の部門に配属が決まったとき、こんな性格の私にできるわけがないと、次の日に辞めるつもりでした。

 でも、そのことをみんなに相談したら、友達に言われたんです。


「ここではいっぱい話して、いっぱい笑って草生やしてるんだから、テケテケさんならきっと大丈夫だよ」

「チャレンジしてみて、それでもダメだったら辞めたらいいじゃん」

「そうだそうだ、俺なんて今までどれだけ辛い思いをしてきたか……」

「そうよぉ、若いうちに悩め悩め! きっと後で得をするから!」


 と――

 私はその言葉を受けて、泣きました。

 応援してくれる人がいるんだと。

 今はもう、一人じゃないんだと。

 その涙で崩れているはずの自分が映る鏡には、涙は流せど、笑顔の自分が映っていました……

 

「そうだね……私、頑張ってみる」

「うん、頑張って! みんな応援してるよ!」


 次の日から、自分を変えようと必死で頑張りました。

 人の前だと小声になる自分が原因で、買いに来てくれたお客様に不快な思いをさせたくない!

 でも……どうしても笑顔がぎこちなく、きっとそれを見たお客様は怖かったと思います。

 その私を助けてくれたのは、一人のお客様でした。

 私のおばあちゃんぐらいの年齢のその人は、ぎこちない笑顔の私を見て


「新人さんかい? 頑張りなよぉ。 また明日も来るからねぇ」


 そう言ってくれたんです……

 嬉しかった……頑張ろうと思った……

 そして、リアルの世界にも、応援してくれる人がいるんだって知ったんです。


(ありがとうみんな――――)


「……まだ……やまだ……山田……おおぃ山田ぁ!」

「ふえぇ?! ひゃ!ひゃい!?」

「お前そろそろ休憩時間終わるぞ、寝てると遅刻すんぞ」

「…………あ、はぃ」

「なんだ? 夢でも見てたのか」

「…………いぇ起こしてくれてありがとうございます店長」

「おう! 気にすんな」

「店長久しぶりですね……」

「おう! やっと出番だぜっ!」

「まぁ私もですけど……」

「ところで山田、3番レジの釣り銭が50円合わないんだよ。休憩終わったらもう一回、お前も計算してくれ」

「はいわかりました」

「ところでさ……」

「はいなんでしょう」

「お前、寝言で【春の残響さん】っていってたけど、それなんだ?」

「…………な、なんのことでしょう?」

「いや……こっちが聞いてるんだけどな……」

「そんなことは申しておりませぬ……寝言など一切申しておりませぬ……」

「……なんで武士語? まぁいいや、計算頼むなぁ」


(夢! 今の夢を見てたのか!? 昨日遅くまでチャットしたせいかな……恥ずかしい)


「50円、50円っと……あ、これだ。レジ下に転がってる……」

「おおぃ、どうだった? 50円あった?」

「計算してもやっぱり合わなかったんでレジ台動かしてみたら落ちてましたよ」

「まじかっ! よかった!」

「…………店長。パートさんから店長がレジ上げしてる時に小銭ばら撒いてたって聞きましたが?」

「……さ、さぁ。なんのことだろうねぇ」

「誤魔化すんですかちゃんと調べなかったんですかどうなんですか」

「……その、句読点なしで一気に話すのいい加減やめて……」

「それは仕方ないんですこういう性格なので」

「そうか……まぁ、見つかってよかった! ありがとう山田!」

「やっぱり誤魔化すんですねちゃんと調べなかったんですねダメじゃないですか」

「はい、ごめんなさい……」

「高橋店長、また雫に怒られてるの?」

「あはは、店長も困ったもんだね」

「おお、葛木(かつらぎ)〜! 水本(みずもと)ぉ! 助けてくれぇ」

「お疲れ様です文さん千秋さん」

「お疲れ、もっとしばいちゃっていいんじゃない。この間も惣菜の唐揚げひっくり返したから」

「あはは、そうそう」

「……わかりましたその分も含めてお説教しておきます」

「……ごめんなさい」

「あはは、新入社員に怒られる店長ってのもいいんじゃないですか? アットホームで」

「もう、しっかりしてください店長!」

「そういえばさ、チャット友達にさ、人見知りでスーパー業界に入ってレジに配属されたから嫌だって悩んでた子いたな」

「何? いつも文が参加してるオタクの集いチャット?」

「そうそう。 昨日も1時間だけ参加した」

「なんだったかしら、確か【春のなんとか】って名前だったわよね、文は」

「こら! 迂闊にチャットネーム言ったらダメだよ! 誰が聞いてるかわかんないだろっ!?」

「あら、そうなの? ごめんなさい」

「それに似ているけど、私の名前はそれと違うから」

「…………」

「あんた本当に【神々の残響】だっけ? 好きねぇ。何が面白いのか全くわからないわ」

「そんなこといわない! 作者泣くぞ!? てか登場回数減らされるぞ!?」

「それはいやね……」

「…………」

「も、もういいかな山田……」

「あ、はいどうぞこれから気をつけてください」

「さぁて、掃除でもするかな」

「そうね、終わったらコーヒー飲みにいかない?」

「いいよ、じゃぁ早く終わらそう」


(文さんって……同じチャットにいたんだ……)


 △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△


「…………」

「どうしたのひな子?」

「……なんでもないです」

「その段ボールに突き刺したカッターを見る限り、なんでもないようには見えないけど……」

「大丈夫です千秋先輩……期待させといて、本文に登場させなかった作者への怒りだとかは言えません。しかも会話劇のはずがなんかエッセイみたいになってるのも気にくわないとか言えません。」

「……そ? 言ってるようにしか聞こえないけど。まぁいいわ……私帰るわよ」

「お疲れ様です…………」

 

 ザクッ! ブスッ! ザクッ!


「お……覚えておけ作者……この恨み……一生忘れないからなぁ……」

「キャ、キャラ変わってるよひな子……」

「文先輩……申し訳ないですが……予告をお願いしたいです……」

「お、おぉ……次回 【緊急事態なのです!】 お楽しみにぃ……ひな子大丈夫?」

「ふぇっふぇっふぇっ……大丈夫ですよぉ……」


 

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