第3話 後編
夕方、ウルトラピザの店内。
テーブル席の一つで、遠塚と川瀬が向かい合って座っていた。
遠塚は水だけを飲んで淡々と話をしている。
川瀬はチーズピザとコーラのセットを食べていた。
殺人事件に関する話を聞き終えた川瀬は、頭を抱えて呟く。
「……それで容疑者から一転、殺人事件を解決したわけですか」
「ああ。ドラマの主人公になれた気分だった」
「何を暢気なことを……」
川瀬は大きくため息を吐いた。
それから周囲を素早く確認し、声量を落として遠塚に告げる。
「あなたは殺し屋なんですよ」
「元だ。今は違う」
「じゃあ、元殺し屋なんですよ。目立つ行動を控えてください。面倒事に巻き込まれても知りませんからね」
「それならもう手遅れだ」
「え?」
「窓際の一番奥の席だ。さりげなく見ろ」
遠塚に指示された川瀬は、水を取りに行く際に件の席を確かめる。
そこには刑事の五十嵐が座っていた。
スマホを操作するふりをして遠塚を注視している。
席に戻った川瀬は怪訝そうに尋ねた。
「あの女性は?」
「刑事だ。俺の素性を怪しんでいる。事件当時の言動が気になったらしい。自宅まで尾行されることもある」
「思い切りマークされてるじゃないですか……っ!」
「だから手遅れと言った」
「まったくもう……」
川瀬は再びため息を洩らす。
彼は鞄からタブレットを取り出すと、それを遠塚に見せた。
液晶画面には遠塚の顔写真が表示されている。
「それと、遠塚さんが賞金首のリストに載っていました。金額は三億です」
「誰の仕業だ」
「不明です。刑事のマークも危ないですが、そっちも注意してください」
「なるほど、そういうことだったのか」
遠塚は何かに納得したように頷くと、荷物を持って立ち上がった。
川瀬は不思議そうに尋ねる。
「どうしました?」
「少し片付けてくる。五分ほど待っていてくれ」
「ああ、バイトの掃除を忘れてたんですか」
「違う。賞金稼ぎの殺し屋だ」
遠塚はさっさと店の外へと出て行った。
その後を追うように、数人の客がぞろぞろと退店する。
少し遅れて、早足の五十嵐もついていった。
一連の光景を目撃した川瀬は嘆息し、残ったピザを口に運ぶ。
「なるほど……片付けかぁ。さすがに警察は殺さないだろうけど、証拠隠滅が大変そうだ」
愚痴る川瀬は、馴染みの死体処理業者に連絡するのであった。




