ep68 決戦④
レックスとバルドスの剣撃がぶつかる。
レックスの剣の光は雨粒に反射しキラキラと輝き、バルドスの剣の闇がそれをかき消す。
光魔法との相性の良さで聖剣に纏わす光は以前より輝きを増していたが、バルドスの強さも退けをとらないものになっていた。
少しずつレックスが圧されていく。
剣撃を弾いたバルドスが即座に闇魔法を放つ。レックスではなく、その足元を狙った。
レックスは咄嗟に避けたが、衝撃と雨でぬかるんだ地面に足をとられ、バランスを崩した。
そこへバルドスが一撃を放ち、レックスが吹っ飛ぶ。
追撃にでたバルドスにレックスが光球を放ったが、バルドスはそれを受けながらもレックスを蹴り飛ばした。
「ぐはっ!」
レックスは立ち上がりながら、泥と血の混ざった唾を吐いた。
バルボスが剣に闇を纏わせながら、ゆっくり近づく。
「俺は、お前だけを殺せればいい。だが、お前は違う。俺を殺した後、リベルやガイラックを殺すところまで考えている。」自分の主への敬称すら無くなっていた。
「俺は死を厭わない。お前は死を恐れている。それが力の差だ。」
「死を恐れるなんて当たり前のことだ。」
「その当たり前の上にいる以上、俺には勝てん!」
バルドスが切り掛かる。
「そんなものっ!」
レックスは剣を弾くが、直後に放たれた魔法で吹き飛ぶ。
受け身を取ったレックスが地面を抉るように切り上げると光が地面を這っていき、バルドスの足元で弾けた。
直撃したバルドスだったが、転がると同時に剣を地面に刺す。
レックスの足元から闇の刃が飛び出し、レックスは宙を舞った。
レックスの息は上がっていた。
「そろそろ、終わらせるか。心配するな、痛ぶるつもりはねぇ。ただ殺したいだけだ。」
バルドスが腰からもう一本の剣を抜く。その剣は根元から折れ、剣先は無くなっていた。
「覚えてるか?お前に壊された剣だ。」
バルドスの剣から闇が消えると同時に、折れた剣から闇で出来た剣身が現れた。
駆けだしたバルドスが二刀流による連撃を放つ。
その猛攻にレックスは剣で受けながらも、どんどん後方に押されていく。
「安心しろ、お前がひとり死んだところで戦況は変わらねぇよ。」
「ふざけるなっ!」
レックスが力任せに剣を振った瞬間、バルドスは一歩下がり空振りさせた隙に、足を切りつける。
「ぐっ!」
思わずレックスは膝を付いた。太ももの傷からは血が流れる。
「終わりだな。」
下がったバルドスが2本の剣を合わせるように持つと纏っていた闇が更に大きくなった。
「くだばれっ!」
バルドスは飛び上がり、大きく剣を振り下ろした。
レックスが目を瞑った瞬間、聖剣が大きく脈打った。
レックスの光属性と聖剣が共鳴、身体を包むように丸い光のバリアが出来る。
バルドスの斬撃を弾き、そのまま後方へ吹っ飛ばすとバリアは消えた。
「何だ今のは!」
バルドスが驚いていると、レックスがゆっくりと立ち上がる。
「僕は死にたくないんじゃない。この世界を救うため、まだ死ぬわけにはいかないんだ。」
レックスは聖剣を構えた。
「この剣が、まだ僕を生かすことを選んだんだ!」
「ふざけるなよ。剣にそんな事がっ!」
バルドスは牙突を構える。
レックスの足の傷を見れば、牙突を躱しきれないの分かっていた。
バルドスが渾身の魔力を溜める。
レックスは剣に光を纏わせる。
「・・・僕はお前を倒す。」
「しゃらくせぇ!」
バルドスの牙突が飛ぶ。
レックスが思い切り剣に魔力を込めると、聖剣はまばゆい光を放つ。それは輝きではなく閃光だった。
視界を塞がれたが、バルドスはそのまま突っ込んだ。
次の瞬間、転がるよう前転したレックスが屈んだまま、切り上げる。
バルドスの腹部に当たった瞬間にルークスヴェインが発動し、大きな光の剣はバルドスを鎧ごと切り裂いた。
上半身と下半身に別れたバルドスが倒れる。
「馬鹿な・・・この俺・・・が・・・」
バルドスは死ぬ間際に手を掲げ、魔力を込める。
掌より遥かに小さい闇球に魔力を凝縮した。
不安定に凝縮された魔力が崩壊し、バルドス諸とも大爆発を起こす。
巻き込まれたレックスが吹き飛び、地面に叩き付けられた。
倒れたレックスは全身の痛みで意識が朦朧としていた。
空から降り注ぐ雨の感触だけがはっきりと感じられた。
「勝った・・・のか。」
血と雨でぼやける視界の中にヴィクトールが映る。
「レックスさん、大丈夫ですか?」
「ヴィクトールさん・・・バルドスは?」
「死にました。こちら側もサハギンたちの援護のお陰で優勢です。」
「良かった・・・」安堵で力が抜けていく。
「レックスさんも橋の向こうへ移動させますので、傷の治療を。」
「でも、まだリベルが・・・」レックスはベイルたちの方を見た。
リベルの作り出した炎の壁は雨で徐々に低くなっていた。
「二人に任せるしかありません。どのみち今のレックスさんでは戦えません。」
レックスは西を見た。戦闘中は気付かなかったが、遥か遠くで強力な魔力の衝突が感じられた。
段々と雨脚は強くなっていた。




