ep43 旅立ち
4日後。ポルガはチェミネルを放棄した。
正確に言えば、狼たちに譲ったのだ。
ミカゲの死んだ高台には簡易な墓が建てられ、その周りには未だ狼たちが集まっている。
傷心のライムを除いて、ロイ、オリビア、ベイルの3人がアルム王と話し合いをしていた。
「未だ、大きな動きはありません。リベルの言葉通り、一旦ポルガへの侵攻は諦めた可能性もあります。」
ロイがアルム王へ報告した。
「魔王城に近いだけに油断は出来ないですけどね。」とオリビア。
「しかし、狼の脅威が無くなったと考えるならば、ある程度は我が軍だけでの防衛も可能でしょう。」ロイが返した。
「我々はファーランへ戻り、西方への作戦を進めようと思います。」ベイルが提案する。
「うむ、それが良いであろう。ポッソムの一件でノワルドの事も後回しになってしまったからな。」
「はい。ですがロズウッド様が戻られた事とデルタニアの氷壁が解かれた事で、防衛面での不安は消えたように思います。」
「それは何よりだ。両軍には色々と迷惑を掛けてしまったな。」
「いえ、我々は同盟軍ですので、お気遣いは無用です。」
「ひとつ、頼み事があるのですが。」ロイが言う。
「頼み事?」
「ライムを連れていって貰いたいのです。」
「王女を?しかしそれは・・・」
オリビアがアルム王を見ると、彼は静かに頷いた。
「ライムにはもっと世界を見て、知見を広めて貰いたいと考えます。良い機会だと思いますし、ライム自身、ミカゲの仇討ちをと考えているでしょう。」
「まぁ、お二人がいいのと言うのであれば、我々は構いませんが、本人の意思は良いのでしょうか?」
「いえ、実は昨日・・・」ロイは目を伏せた。
「ライムから言ってきた事です。」
アルム王は腕を組んだまま、大きく息を吐いた。
「言い出したら聞かないところは儂に似てしまったようだ。」
レックスとフィーナはポルガの街を観光していた。ここに来てからというのも落ち着くことの無かった2人は、改めてその街並みを楽しんでいた。
「見て見て、あの置物も可愛いよ。」嬉しそうに言うフィーナを見て、レックスはこんな日が続けばいいのにと思った。
だが、ムビアナやアリアンの事を考えるとポッソムのようにこの日常を奪われた町がいくつもあるのだろう。
レックスは少し複雑な気持ちになった。
「勇者様、どうしたの?」
「いや、何でもないよ。」
フィーナが道の先にライムを見つける。従者の姿はなかった。
「王女様!」
フィーナに気づいたライムが寄っている。
「もう大丈夫なのですが?」
ミカゲの死に臥せっていたと聞いていたフィーナが尋ねた。
「うん。いつまでもクヨクヨしててもしょうがないし、それにあいつはもそもそ敵だしね。」
笑顔を見せたライムは、少し無理をしているようにも見えた。
「あと王女様は止めてよ。これからは共に旅する仲間なんだから。」
「えっ!」
「あれ?聞いてないの?私も一緒にファーランに行くんだよ。」
「そうなんですか!」
「うん。これから宜しくね。」
「はい!宜しくお願いします。」
年の近い女性がいなかったフィーナは本当に嬉しそうに喜んだ。
「そう言えば、薬屋は覗いた?」
「いえ。何かあるんですか?」レックスが訊いた。
「ポルガには少し変わった薬があってね。ポーションじゃなくて丸薬なんだけど、一時的にかなり力が上がるんだよ、だけど効果が切れると立ってられないくらい疲労がくるんだよね。」
「それって使えるんですかね?」
「どうだろうね。絶対止めを刺せるって時には使えるかもね。模擬試合では使用禁止だったけど。」
ライムが二人の肩に手を置く。
「まぁ、兎に角。ノワルドじゃ見れない物も沢山あると思うから、私が案内するよ。」
そうして3人は買い物を楽しんだ。
魔王城。ガイラックの前にリベルの姿があった。
「そうか、ミカゲがな・・・」
リベルはミカゲの死を淡々と報告していた。
「はい。ポノノアの準備が整ったとの事ですので、私は例の作戦を進めます。」
リベルは一礼すると部屋から出ていく。
リベルの後ろ姿を見ながら、ガイラックはある種の恐ろしさを感じた。
「実の妹をな。」
「どこまでも忠義に堅実な方ですね。」秘書官が珍しく自信の感想を口にする。
「ヤルグはどうなった?」
「ノワルドでの一件はヤルグの仕業で間違いないようですが、現在の所在は掴めておりません。」
「ガフは?」
「ガフ様はイルサーナ城から動いておりません。恐らくヤルグを待っているのかと。」
イルサーナにいる限りは南からの壁にはなる。だがしかしガフの行動には不安が付きまとった。
「やはり、一応保険を掛けておくか。」
「例の提案ですか?」
「ああ。しかしヤルグの所在が掴めていないのではな。」
「私が参りましょうか?」
ガイラックは少し思案し、頷いた。
「畏まりました。では私が探して伝えて参ります。」




