ep28 洞窟の戦い
「バルドス!」レックスが叫んだ。
「レックス。まさか勇者の末裔だったとはな。」
バルドスの後ろには5人の部下がおり、出口に繋がる穴の前にはサハギンが2人、出口を塞ぐように立っている。
「そんな・・・どうして?」サハギンを見たフィーナが呟いた。
「もう魔王軍の手先だったと言う事か・・・」ベイルが溢す。
サハギンの1人が、その言葉に思わず叫ぶ。
「違う!我々は・・・」
バルドスが引き継いだ。
「ちょっとサハギンどものガキを預かったらな。快く協力してくれたんだ。」
「人質を取ったのか!何て卑劣な!」レックスが罵る。
「卑劣?これは戦争だ。勝つ為に最善の策と取るのは当たり前のことだろう?戦略と言ってもらいたい。」
「貴様!」レックスが叫ぶ。
「それにただ、お前達と戦う場所を提供してもらっただけだ。」そう言ってバルドスが剣を抜く。
「本当の卑劣ってのはな・・・こういう事だっ!」
言うと同時に牙突を繰り出す。しかしその狙いはレックスでなく、フィーナだった。
「フィーナ!」
咄嗟にレックスがフィーナの前に出るが、それを分かっていたバルドスは直前で地面に剣を差して、その勢いのままにレックスを飛び越え、フィーナに飛び蹴りを入れた。
悲鳴とともに蹴り飛ばされて、壁に激突したフィーナはそのまま気を失った。
レックスが駆け寄り抱き上げる。
「フィーナ・・・」
その後ろでバルドスがゆっくりと地面に刺した剣を引き抜いた。
「戦場に恋人を連れてくるなんて、随分とお気楽だな。まぁ、しかしこれで前のように補助魔法は付けれなくなったな。」
フィーナを安全な隅に寄せたレックスが剣を抜いて振り向いた。
「貴様!」
「やる気は十分だな。こいつは俺がやる。お前達は5人でベイルをやれ。」
指示をされた部下たちがベイルに向かう。
「レックス。大丈夫か?」
流石のベイルもバルドスの小隊に選ばれた精鋭5人相手では、余裕が出来そうにない。
「大丈夫です。僕がやります。」その声にはバルドスに対する怒気が含まれていた。
レックスは走り出し、連擊を繰り出す。
バルドスが剣で受けながら言う。
「前よりは腕を上げてるようだが、怒りに感けて、動きが雑になってるな。」
叩き付けるように振った剣をバルドスが受け止める。
「僕はお前を許さない。」
「殺し合う相手に許されようなんざ、思っちゃいねぇよ。戦場でウィークポイントを晒すのが悪いのさ。」
バルドスが鍔競り合いから頭突きを入れ、怯んだところへ蹴りを入れる。
吹っ飛ばされたレックスだったが、受け身を取って態勢を立て直すと、すぐに光球を放ち、それと同時に走りだす。
光球を躱したバルドスに所へ目掛けて体当たりした。
転がり倒れた二人の手から剣が離れた。
レックスは態勢を立て直し、素早く剣を拾うが、次の瞬間、バルドスに顔を殴られ、吹っ飛んだ。
バルドスが剣を拾い、二人は再び間合いを取る。
レックスは口から流れる血を腕で拭き取る。
「泥臭い戦いは嫌いじゃないが、肉弾戦に持ち込めば、フルアーマーの俺に分があるぜ。」
「レックス!落ち着け!」敵の攻撃を往なしながらベイルが叫ぶ。
レックスは目を瞑り深呼吸した。
目を開けると再び走り出す。
先程の同じように連擊を打ち、バルドスが剣で受ける。
次の瞬間、レックスの剣が白く光る。光属性を纏わせたのだ。
斬擊の威力は増し、若干ではあるがレックスが押し始めたように見えた。
「ちぃ!」と舌打ちをしたバルドスが剣を弾き、バックステップで距離を取る。
「思ったより力を付けてやがる。」
バルドスの剣に黒い靄が掛かる。
「やはりここで潰しておくべきだな。」
バルドスは再び牙突を繰り出した。
レックスは横に避ける。それを読んでいたバルドスは急停止し、振り返る動作と共に切り上げ、衝撃波を飛ばす。
レックスは衝撃波を剣の腹で受けた。衝撃とともに痛みは感じたがイヤーカフスのお陰かダメージはほとんど無かった。
怯むと思い、追撃に出たバルドスの剣を受け止める。
両者は再度、鍔競り合いの形になった。
バルドスの剣の靄が更に濃くなり、ジリジリとレックスが押されていく。
「俺を相手に苦戦しているお前が、リベル様やガイラック様を倒せるとでも思っているのか?」
「倒せないさ。」
「何?」
レックスがバルドスを睨みつける。
「僕一人ではね。」
レックスが剣を弾き、後ろに下がった瞬間、バルドスの背中に雷撃が当たる。
「ぐっ!」
その後方には意識を取り戻したフィーナが横たわったまま、杖を向けていた。
怯んだ一瞬の隙にバルドスの腕を掴んだレックスが投げ飛ばす。
地面に叩きつけられたバルドスは、立ち上がるとフィーナに向けて手を翳す。
「このアマっ!今度こそ殺してやる。」
手の前で禍々しい黒球が形成される。
レックスもフィーナの前に立ち、バルドスに向け光球を作った。
それを見たベイルが叫んだ。
「馬鹿な!止めるんだ!」
異なる属性の魔法がぶつかり合った時、爆発が起きる。それは魔法を扱う者なら誰もが知ってるはずだった。
しかし、二人は睨みあったまま、同時に魔法を放った。
魔法が重なり大きな爆発が起きる。開けた場所とは言え、洞窟の中である以上、巻き起こった爆風にその場の全員が壁まで吹き飛ばされた。
静まった洞窟にカタカタと音がし、小さな石が落ちてくる。
「まずい!崩れるぞ!」
ベイルの言葉にサハギン達が逃げ出す。
レックスはフィーナを守るように覆い被さる。
そして、大きな音と共に洞窟は崩壊した。




