ep14 騎士団長
レックス達はファーラン城へ向かっていた。
ファーラン城には正門・東門・西門の3つがあり、正門からはノワルド軍、東門からはデルタニア軍が仕掛けて陽動を行い、その隙に西門からレックスを含むベイルの小隊が内部へ侵入する作戦となっている。
「ベイル様はノワルド軍の指揮をしなくて大丈夫なのですか?」
「あぁ、ヴィクトールに任せておけば問題ない。彼は実質副団長のようなものだ。指揮能力だけで言えば私より上と言ってもよい。」
「ベイル様、ひとつ聞いても良いですか?」珍しくフィーナが質問した。
「何だい?フィーナ君。」
「ベイル様は副団長なんですよね?団長様はどんな方なんですか?」
「そう言えば僕たちが村にいた頃にもベイル様の話は聞いても、団長様に関する話は聞いたことなかったです。」フィーナの質問にレックスも同調した。
ベイルが顎を掻き、苦笑いをしながら答える。
「あの方は・・・少し放浪癖があってな。」
「彼らの世代では知らないかもしれませんよ。」隣にいた兵がベイルに言う。
「確かにそうだな。君たちはローランド陛下のご子息、つまり皇太子様は分かるかい?」
「ハビル様ですか?」
「そう。だがハビル殿下は長子では無い。兄上がいらっしゃるんだ。」
「えぇ!知りませんでした。」
「正確にはもう家督ではないからね。陛下の長子にあられるロズウッド様が団長を務められている。ロズウッド様は武を志し、強さを求める方でな。陛下も若き頃はそうであった為、自分の様に王位継承で煩わせたくないと次子であるハビル様に王位継承を譲ることを提案した。ロズウッド様もそれを快諾したんだが・・・まぁ、国政にも関わることだし色々あってね。結局王国軍の団長という肩書に落ち着いたというわけだね。」
「そうだったんですか。」
「でも肩書だけの方ではなく、実力も団長に見合うだけのお方だよ。」
「今はどうされているのですか?」
「それが正直分からない。さっきも言ったように普段からどこかの魔物を討伐しにいったり、他国へ武者修行しに行ったり、ノワルドに居ないことが多かったんだ。魔王が現れてからは、ムビアナが攻め入られた時に助太刀に行くと言ってから音信不通だよ。」
「それって大丈夫なんですか?」
「大丈夫では無いんだが、陛下もロズウッド様に関しては楽観的でね。「まぁ、あいつなら死にはしないだろう」って申されてるよ。」
「な、何か凄い話ですね・・・」
「まぁ、豪胆で面白い方だから、もし戦いが落ち着いたら、君たちにも紹介するよ。」
「ありがとうございます。」
「あと、これから長い旅になるだろうからね。済まないが、二人とも「様付け」は止してくれ。どうもむず痒い。」
「して、ノビエはどうであった?」
ガイラックの言葉にリベルが答える。その後ろにはバルドスが控えている。
「こちらの予想以上の軍勢でした。ノワルド・デルタニアとも本国にも戦力を残している事を考えるとかなりに数になるかと思われます。」
「では予定通りファーランまで手放すということか?」
「はい、ただアズラを配備しましたので多少の戦力は削れるかと。」
「成る程な。ムシュラはどこにおる。」
ガイラックが横にいる秘書官に尋ねた。
「ムシュラ様はムビアナに移動させましたので、まず大丈夫かと思われます。」
「ムビアナ?アリアンにいると聞いたが、何かあったのか?」
リベルが疑問を挟んだ。
「失礼しました。お二人にはお伝えしておりませんでしたが、アリアンでひとつ問題がありまして。」
「問題?」
「まだ確証はありませんが、ライノ様が倒されました。」
「何っ!」と驚くバルドスに対し、リベルは冷静に答えた。
「確証が無いとは?」
「アリアンからの伝令で、ルドミナ様とガフ様の見解とのことなので、まず間違いは無いかと。」
「アリアン南部で反抗があったという事か?」
「いえ、お二人の話では聖剣が見つかり、掛けられた呪いにより魔王ヤルグが復活したと。」
「何だとっ!」再び驚くバルドスと「あの時の歪な魔力か・・・」と納得するリベル。
「アリアンの戦力も強化致しますか?」リベルがガイラックに尋ねる。
「いや、ガフが捜索に向かったらしいから、とりあえずは様子見だな。」
「なるほど。ガフ殿が。」
「ワシに忠義は無いが、裏切るようなたまでは無いからな。だが一応ファーランにモクナナも飛ばしておけ。」
「あの鳥をですか?」秘書官が確認する。
「ああ、万が一の為だ。」
「畏まりました。」
「ニドーレルの策は上手くいったか?」
「少し西にズレましたが、概ね問題なくノワルドとデルタニアを分断出来ています。恐らく魔導士の一部は壁の破壊に回すでしょう。」
「どの位持ちそうか?」
「数週間は持つかと。今のうちにノワルドを攻めますか?」
「山越えはな・・・グランドムはどうなっとる?」
秘書官に尋ねる。
「現在、魔界より連れてきた2頭の竜の調教中とのことです。」
「なるほど。空から攻めますか。」
「ああ、グランドムの飛行部隊だけでは厳しいが竜がいるなら戦力としては十分であろう。」
「グランドムに調教を急がせるよう伝えておけ。」
「畏まりました。」
「それでは私はムビアナに行き、ファーランの動向を見て対応します。それとバルドスなんですが・・・」
「どうかしたのか?」
「ノワルド軍ベイルの遊撃に回したいのですが。いかがでしょうか?」
リベルの後ろでバルドスが頭を下げる。
「ベイル?」
「ノワルド軍の実質的な軍団長です。」
「ノワルドの大隊はヴィクトールなる者が指揮しており、ベイルはレックスという青年についているようです。」秘書官が情報の補填をする。
「レックスとは何者なんだ?」
「どうやら、かつて魔王ヤルグを倒した者の末裔のようです。」
「成る程、士気を上げる為の偶像か。死なせるわけにはいかんな。いいだろう。小隊を組んでベイル隊の遊撃に当たれ。」
「ありがとうございます。必ずや成果を。」




