表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/172

ついに襲ってきた

 きっちり閉じたカーテンで遮られているため、月光の具合がわからない。その射しこみ具合でいまどのくらいの時間なのかを推測できるのに。


 暗闇の中、天蓋を眺めている。


 ともすれば緊張感が薄れ、集中力が途絶え、意識が遠のいてしまいそうになる。


 それを気合いで取り戻そうとするも、その気合がでてこない。


(ほんと、わたしってダメダメね。昼間、はしゃぎすぎたのよ)


 自分自身を呪った。本気で罵った。全力で反省した。


 とはいえ「後悔は先に立たず」だし、すべてが遅すぎるのだけれど。


(お願い。くるならはやくきてちょうだい)


 まだ見ぬ人物の来訪を心待ちにしてしまう。というか、すぐにでもきて欲しい。


 寝台の上、わたしの準備はすでに整っている。


 もう何度目かに睡魔に負けそうになったとき、やってきた。


 複数の気配が。心待ちにしていた来訪者が、やっときてくれたのだ。



 襲撃者たちの狙いは、やはりエレノアとニックだった。彼らは、迷わずテラスから入ってきた。


 しかも、気配を断つことなく。さらには、その存在さえ隠すことなく。


 彼らは、テラスからガラス扉をぶち破ってド派手に入ってきたのである。


 これには、さすがのわたしも度肝を抜かれた。


 エレノアは、たしかに素人である。おそらく、だけど。そのエレノアにたいし、あまり気を遣う必要はないということなのか? それでも、屋敷から大人を拉致するのだ。こっそり行動しないと本人に抵抗されては面倒臭いことになる。さらには、使用人たちに気づかれてはもっと面倒臭いことになる。


 だからこそ、気配の主たちはこっそり浸入し、拉致するのだとばかり思いこんでいた。


 しかし、わたしの推測や考えは違っていた。


 根本的に誤っていたのだ。


 やはり、わたしは焼きがまわっているようだ。


 ダメダメどころか、完璧にアウトだ。


 現役を離れて勘が鈍っているとか、疲れきっているとかは言い訳にならない。そもそも、それ以前の問題だ。


 襲撃者たちがガラス扉をぶち破った瞬間、すべてを悟った。


 彼らは、エレノアを、あるいはエレノアとニックを拉致しようとしているのではないということを。彼らは、ふたりを殺そうとしているのだということを。


 そのときには、彼らはわたしのいる寝台に襲いかかってきていた。


 合計で五名。全員の手に得物が握られている。


 扉がぶち破られたと同時にカーテンも悲惨な末路を迎えた。いまや主寝室内は月光に満ち溢れている。


 皮肉にもそれでおおよその時間がわかった。


 朝を迎えるにはまだまだ先である時間帯だということが。


 刹那、五本の刃が同時に上掛けを貫いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ