麗しき姉弟愛……?
「ハムよ、サンドイッチと言えば、ハムサンド。ハムサンドがないサンドイッチ専門店なんて、柴犬のいない犬百科事典のようなものよ!」
「犬?」
「違うわ、犬は食べません、ハムは豚肉で作ります。ハムサンドを作るために、ハムが必要です。料理長にはまず、豚肉でハムを作っていただきます」
料理長が無の顔になった。
なぜに?
「ハムが作れたらハムサンドだけじゃなくてハムカツサンドも作れるしハムエッグのせトーストも食べられるのよ? 厚切りハムステーキだって食べられるし……」
ああ、想像しただけでよだれが出そうになる。
料理長がそんな私の顔を見て深く息を吐きだし、そして、悟りを開いたような顔をする。
「ええ、わかっております。フローレンお嬢様のその顔が出たときは、美味しい料理が閃いた時の顔に間違いないと。ハムという謎の料理もきっとおいしいのでしょう。作らせていただきます。私の料理人人生は、お嬢様とともに……」
「ありがとう。いつも私の期待以上の素晴らしいものを作ってくださるもの。大丈夫よ。生ハムが食べたいなんて言ったりしないから。普通のハムでいいの」
生ハム美味しいんだけどな。きっと火を通さないというだけで拒否されるだろう。ああ、刺身への道のりは長い……。
「おかしい……なぜパン屋のはずが、私は豚肉に囲まれているのだろう……」
料理長が、さっそく料理人たちが用意してくれた豚肉を前に乾いた笑いを漏らす。
だから、ハムサンドを作るためだってば。
作り方を覚えている限りざっくり伝える。塩漬けと燻製と加熱。
燻製に関しては初めて聞く調理法だと驚いていた。
「あ、とりあえず燻玉夕飯に出してね」
ついでに頼んでおいた。楽しみだなぁ。燻製卵。しまったな。もっと早く思い出していれば、燻製イカも領地で食べられたのに。おいしいよねぇ。
あ、そうだ。明日のダイエット用のお昼ごはん、何にしようかなと思ったけどなんちゃって和食でいいや。
海が遠いから魚介類は領地にいた時のように食べ放題というわけにはいかないけれど……。持ってこられるものは持ってきた。
ラミアの口に合うかな? イーグルたんもお父様も喜んで食べてたけど。和食は好き嫌いがあるよね。まぁいいか。苦手なら他のを用意するだけだし。食堂のメニューもあるからくいっぱぐれることもないもんね。
ラミアの持ってきてくれるものはどんなものかなぁ。これ以上髪や肌が美しくなったら、天使から女神に昇格しちゃうわ! なんちゃって。
調理場から部屋に戻る途中、書類を抱えたイーグルたんと会った。
「お義姉様、何か楽しいことでもありましたか?」
あら、この天使さんはこれ以上美しくなったら何になってしまうのかしら? まぶしすぎて目がつぶれちゃったらどうしましょう。
「瞬きをそんなにして、お義姉様、目にゴミでも入ったんですか?」
すっかり私よりも身長が高くなったイーグルたんが、顔を近づけて、顔を覗き込む。
近い。
イーグルたんの顔が目の前! まぶしくて目がつぶれるぅ~!
ああ、本当に綺麗な子だ。かわいらしい天使から、美しき大天使なお父様に似てきた。しかも、大人へと成長をとげる少年時代。一番美しい年齢だ。眼福すぎて拝ませていただきありがとうございますだよ。
「ありがとう、イーグル」
「いえ、お義姉様のためなら僕は何でもしますよ?」
「何もしなくても、存在しているだけで幸せよ」
私の言葉にイーグルたんが目を細めた。
「お義姉様も……そばにいてくれるだけで僕は幸せです」
イーグルたんの言葉に、胸がギュッとなる。
感想の返信がなかなかできなくて申し訳ありません。
とても嬉しく目を通しております。
評価、ブクマありがとうございます。




