第9話 失敗
大学の学園祭も終わったので、投稿ペースを速めたいと思います。
守に負けないためには先を行き続ける必要があるだろう。しかし、とりあえず1度状況を整理しておく必要がある。
①佐々木がおとなしくなった(怯えたようになった)のは、『声』の件が始まった
のと同時
②佐々木が普段通りに少しずつ戻っていくのとほぼ同時に『声』の発生頻度が減っ
た
③守が佐々木を疑うような発言を佐々木が聞いてから『声』の頻度が再び増加した
やはり、佐々木はこの『声』の発生について関わっている、最悪佐々木が『声』のコントロールを握っている可能性があるな。サクラや先輩たちに協力してもらって問い詰めればいい。佐々木のあの性格だ。すぐにギブアップして白状するだろう。少し荒治療となってしまうが、佐々木にとってもこのほうがいいはずだ。
そう、このほうがいい。……俺は正しいんだ。
昼休みも終わりに近づいていたが、守に気づかれないように教室を出る。この時間なら佐々木は自分の教室から離れていることはないはずだ。予想通り、佐々木が教室内にいるのを確認する。今なら誰も佐々木の周りにいないな。好都合だ。
「なあ、佐々木」
俺は近づくと声を落として話しかける。これなら周りの人に内容が聞こえることはない。ただ、時間は少ない。一気に勝負を仕掛けよう。
「守と話していて思ったんだが……お前、『声』の原因について心当たりはないか?」
「えっ! そ、そんなことないよ!」
佐々木はあからさまに過剰反応しつつ、俺の言葉を否定する。
「俺は最初から、もしかしたら佐々木がこれを発生させているんじゃないかと思っていたんだけれど、違うか?」
嘘だ。俺が佐々木と『声』を深く結びつけるようになったのは守の言葉を聞いたからで――
「やめて!」「っ!」
佐々木が今までに聞いたこともない大声を出したので俺は思わず一歩下がる。
なんだよ。お前は助けを求めているんだろ? おとなしく目の前の俺に全部話してくよ。……守ではなくてよ!
なんで――
「もう、やめてよ……」
――俺ではないんだよ
「……そういう訳で。あの、勝手なことをしてすみませんでした」
「そうだったか……。まあ、気にするな」
そのあとの放課後、部室で俺は先輩たちに対して、報告と独断行動についての謝罪を済ませた。ちなみにまだ他の一年生は来ておらず、部室にいるのは先輩二人と俺だけである。
「まあ独断行動はまずかったけれど、それでも話を聞く限りには響香ちゃんに何かあるのは間違いないかもね」
だけど、どうやって行動を起こしたらいいのかはわからないままだ。
「すみません、掃除当番があって少し遅れました……って、まだ佐々木は来ていませんか」
そこで扉が開くと、守が入ってきた。
「ああ、図書委員の仕事があるから来るのは少し遅くなるらしい。ところで、その佐々木のことなんだが、渡辺から今話を聞いたところだ。じゃあ瀬川の考えが正しいと仮定して、どうするかが問題なんだがな」
「はい、それにほとんど憶測で出した考えですから証拠がありませんしね……」
「まあ、確証がなくてもやってみればいいんじゃない? もちろん、響香ちゃんがそのことで気負ったりしないようにすることには気を付ける必要があるけどね」
原田先輩はまるで、もうすでにやり方が分かっているかのように話す。
「お前のその口ぶり……何か作戦があるのか?」
「いや、作戦と言えるほどは考えられてないんだけれど、ちょっとした考えはあるよ?」