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響-ヒビキ-  作者: nozomu
16/16

第16話 コスプレ喫茶

お待たせしました

「三組に到着したんだが……なんだこれは。この学校って、こんな企画をするような連中の集まりだったのか?」

 佐々木のいる一年三組の企画。それは……

「『コスプレ喫茶 fountain』って……。誰だよ、こんな案出したのは」

「俺だが?」

 その声に振り返った先、軍服のようなものを着た男が立っていた。

 明らかに校則を無視した、茶色に染められた髪。

 チャラい様に見えながら、人に良い印象を与えている爽やかな笑顔。

「やっぱりおまえか……一ノ瀬」

 一ノ瀬和樹。山崎と同じ軽音部の所属だ。好きなものは二次元のもの。つまり、オタクってやつだ。ちなみに、なぜか顔良し・頭良し・運動神経も良しという無駄にハイスペックな男である。

 簡単に言えば、残念な男だということだ。ちなみに、今回の文化祭でもバンドメンバーに超マイナーなアニソンを歌うことを提案、そして一蹴されたらしい。

 山崎曰く、「声が良い、演奏技術も良い。だけど、こいつを同じバンドに引っ張ったのは失敗だった」とのこと。

「瀬川はやっぱり佐々木を見に来たのか? 俺は桜木のほうかと思っていたんだが」

 一ノ瀬はニヤリと笑うとそんなことを言ってくる。

「別にそんなんじゃあねえよ。同じ部活のやつに会いに来て悪いかよ」

 新聞部一年生の女子は二人そろって可愛いと言われているため、俺たちは時々他の男子から羨望の眼差しを受けることがある。まあ、その気持ちも分からなくはない。俺も同じ部活になると知ったときはかなり嬉しかったからな。

「まあ、入れよ。佐々木、瀬川が来たぞ」

 一ノ瀬は俺を教室に招き入れると、わざわざ佐々木を呼んでくれた。まあさっきはあんなことを言っていたし、俺と佐々木の様子が見たいということだろうが。

「守君」

 左から聞こえたその声に、振り向く。

「佐々木……」

 結論から言うと、かなり可愛かった。

 佐々木は白いワンピースに淡い黄緑色のカーディガンを羽織っていた。涼しげで、自然な感じの服装だ。黒く艶やかな髪が、より一層引き立てられている。

「元ネタは今年の夏に放送されたアニメなんだけれどな。そのメインヒロインが、主人公に初めて会った時と最終回で着ていた服なんだ」

 一ノ瀬の説明が入る。まあ、俺にとってはどうでもいいんだが。

 その後一ノ瀬は「じゃあ、ごゆっくり」と、佐々木と俺を残して客の呼び込みに行ってしまった。

「ご、ご注文は?」

 佐々木は恥ずかしそうにしながらも、仕事をする。これ、絶対変な接客のマニュアルを作っただろ、あいつ。

「アイスココアで」

「は、はい。アイスココアですね。それではしばらくお待ちください」

 コスプレを知り合いに見られたことが恥ずかしいのか、佐々木は顔を赤くしたまま急いでいるように奥に行ってしまった。確かに、あの真っ白なワンピースは普通の人通りで着ていれば人目を引くだろうけど、周りに比べればそんなに奇抜な服装ではないと思う。周りはアニメに出てくる学校の制服っぽいものならまだいいほうで、女子だったらメイド服やらものすごく丈の短いジーパンなんかの、恐らく生徒会の方にもギリギリで許可がもらえたのであろう服装が多かった。男子は執事服とか司祭? 神父? のようなものが多いのでまだマシだろうが。

 しかし、改めて周りを見ていると何人かの客が佐々木が入って行った奥の方を見つめていた。佐々木もサクラとは方向性は異なるが容姿が良い上に、あの清純、といった感じの格好をしていたからか。

 奥から佐々木が姿を現すと、再び佐々木に周囲の視線が集中した。男ばかりではなく、女性客からも注目をされているようだ。まあそんなことを言うと、佐々木が本当に接客をしなくなってしまう可能性があるので言わないでおこう。知らぬが仏ってやつだ。

 そんなことを考えているうちに、「お待たせいたしました」と声をかけられる。佐々木が盆の上に乗せたコップを、俺の前に置いた。

“やっぱり恥ずかしいよ……”

 俺が口を付けた瞬間に『声』が伝わってきて、俺は盛大に噴き出した。

“か、可愛いっ!”

 しかし、俺も『声』が伝わってしまった。二人の間に微妙な空気が流れる。


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