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【百合】メイド二人と吸血衝動 ―― 愛しているから、あなたの血は飲みたくない。  作者:


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1/8

01. 尖った八重歯

 始めに気づいた異変は、八重歯でした。


「キウイさん、なんだか尖った八重歯がありますね」


 満月の蒼い光が差し込む、薄暗い寝室。ベッドの中で私の口の中を覗き込むのは、私の愛しい妻であるチェリーさんです。


「そうなのですか?」

「ええ。本で見た、吸血鬼(ヴァンパイア)さんみたいですよ」


 甘い吐息とともに、私の唇へと細い指先を這わせるチェリーさん。

 透き通った瞳が、いたずらっぽく細められます。


 いつもはきっちりと二つに結われているワインレッドの髪は(ほど)かれ、シャワー上がりに塗り込まれたヘアオイルの香りを漂わせていました。


 そんな隙だらけで愛くるしい姿を前にしては、私の理性など簡単に崩れ去ってしまいます。

 気づけばその華奢な身体を、衝動のまま腕の中へと閉じ込めていました。


「ほら、チェリーさん。吸血鬼(ヴァンパイア)に捕まってしまいましたよ」

「あっ。……ふふ、どうしましょう」

「逃がしませんよ。生き血を啜って差し上げましょうか」

「……優しくしてくださいね?」


 冗談めかした私の言葉に、チェリーさんは拒む様子もありません。

 少しだけ頬を朱に染めながら、自ら白い首元を晒すように私に身を預けてきます。


「もう、チェリーさんは無防備すぎるのですから……っ」

「あ……キウイ、さんっ」


 首筋に唇を寄せると、チェリーさんの身体が熱を帯びてぴくりと跳ねました。


 唇から(じか)に伝わる、とくとくという愛らしい脈動。

 温もりを確かめるように手足を絡めれば、チェリーさんも愛おしそうに私の背中に腕を回し、ぎゅっと引き寄せてくれます。

 こうして二人きりで熱を分け合う夜は、私にとって何よりもかけがえのない日常でした。


 ――この時の私は、まだ知らなかったのです。


 唇を滑らせたチェリーさんの柔らかな肌。

 この薄皮の向こうを流れる紅い蜜が、愛では抗えないほどの渇きを私にもたらしてしまうことを。






『人魚と姫』でお馴染みのメイドたちの

ちょっぴりダークな吸血百合ファンタジー

始まりました!


全8話で完結です。

最後は甘々ハッピーエンドで終わるので安心してお楽しみください!

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