19話 幽霊船
港街に着いて辺りの様子を見ながら歩いていると
でかい船が港に止まっているのが見えた。
「あれか」
どうやって乗るのかわからないので近くにいた係員らしき人に聞いてみた。
「すいません、どうすれば船に乗れるのかな」
「あちらの券売所でチケットを買って頂きます」
「ありがとう」
券売所の前まで行き声を掛ける
「すいません、船のチケットを買いたいのだが」
「はい、今日はもう船が出ないので明日になりますが、よろしいでしょうか?」
「ああじゃあそれで」
「では2万モンナシいただきます」
「はいじゃあこれで」
「ちょうどになりますね、では明日の朝に出港致しますので、乗り遅れないようご注意ください」
「はいどうも」
明日の朝ということなので宿屋を予約してから、適当に街の中をぶらついて暗くなったので酒場に行く。
俺が酒場で飲んでいるときに隣の人たちが
「おい聞いたか幽霊船の噂」
「ああなんでも霧が立ち込めて、気づいたらボロボロの船が隣に付いてくるそうな」
「まじかよ気味が悪いなぁ」
「それで何か被害はあるのかい」
「いやそれがしばらくしたら消えちまうんだとよ」
「害はないならいいじゃねぇかぁ」
「まぁ今のところはないってだけで用心するに越したことはない」
などと言う噂を耳にした。
「お客さん朝ですよ」
宿屋の人に起こしてもらい軽く朝食を食べてから船着き場へ。
係員にチケットを見せて乗船した。
個室も用意されていたが、異世界の海がどんな感じか見たいためにデッキへと移動する。
俺が船からの景色を眺めていると突如霧が発生した。
その霧はどんどん広がり、やがて俺の乗っている船まで覆いつくしていった。
視界が真っ白に染まる。
「なんも見えねぇ…」
何かにぶつかったのか、突如として船が大きく揺れる。
「ぐっ…!」船の手すりにしがみつく、危うく海に落とされそうになった。
ふと目の前を見ると老朽化した船が見えた。
この船がぶつかって来たのか、その船のデッキには男が立っており無表情でこちらを見ている…やがてその男は手招きをしはじめた。
「誰が行くか怖いんじゃあボケが」と言ったら突然土下座をしはじめた!
「土下座!?そうかどうしても来てほしいのか」
土下座までされたら行かないわけにはいかない。
しかし、どうにか行かずに済む方法はないだろうか?
俺は土下座している幽霊に向かいテレパシーで交信を試みた。
… … …
ダメだった。
「幽霊にテレパシーは通用しないのか?」
こうなったら乗り込むしかない。
すぐ隣なので手すりを乗り越えてもよかったが、海に落ちたらまずいと思い
慎重にテレポートを使い向こうの船に移る。
辺りを見回すと男は扉の前にいて、俺の姿を確認すると扉に吸い込まれるように消えて行った。
ついてこいということか。
「いやだな~こわいな~いやだな~」と思いながら、にぃ~というドアの軋む音と共に扉を開ける。
船内にはいくつもの部屋がある、一番奥の部屋の前にあの男が立っている。
俺を確認するとその扉の中に消えていく。
「こわいな~こわいな~やっぱり帰ってもいいかな~」と後ろを振り向くと
あの男が無表情で出口に立っていた。
進むことにしよう。
奥の扉の前で深呼吸をしてゆっくりと扉を開けた。
中の部屋の様子は机があって椅子に誰かが座っている、よく見ると骸骨だった。
「うわぁ!」思わず悲鳴をあげてしまった。
「もしかしてこの躯があの人なのかな?」
躯の様子を調べてみよう。
手にはペンを持っていて、その下には書きかけの手紙が置いてある。
「じゃあ失礼します」と一言躯に言ってから手紙を手に取り読んでみた。
婚約者のエルダへ
どうやら私はもう長くはなさそうだ。
君と過ごした楽しい日々が、波のように頭の中を駆け巡る。
君とデートで行った店や手を取り合って歩いたこと、笑い合ったこと、
約束した未来――まるで昨日のことのように目に浮かぶ。
もう一度君に会いたい。
君の声を聞きたい。
せめて最後に、この想いを言葉に残しておきたかった。
願わくば、この手紙がきみのもとへ届
(ここで筆が途切れている)
「最後まで書く前に力尽きたか」
ふと机に目をやると小さな箱が置いてあった。
なんだろうと開けてみると、中には控えめな宝石が入った指輪がある。
状況から察するに婚約指輪かな?
俺にこの指輪と手紙を婚約者に届けてほしくて出てきたのか?
「でもエルダだけじゃわからんよ、せめて住所くらい書いてあればな…どうしよう」
考えていたらある考えが頭をよぎった。
それはテレパシーとサイコメトリーを同時に使うという合わせ技だ。
「もしかしたら物と会話できるかもしれん…名付けてテレトリーだ」
「試してみよう」
手紙と指輪を手に取り、深呼吸をしてから意識を集中させた。
「こんに」
俺の頭の中に、甲高い声が突然響いた。
「えっ!?」
思わず声に出して驚く。
なんだこれ、心の中で誰かが喋ったのか?
「こんに」
また同じ声が語りかけてきた。
「今の声…手紙か?」
「そ」
語尾が切れているのは俺の能力の至らなさなのか、手紙が書きかけだからなのかはわからないが、どうやら成功した?みたいだ。
「ちょっと聞きたいことがあるのだがいいか?」
「なっ?」
「なってなんだよ?いいってことか」
「なっ!」
「それじゃあ聞くぞエルダって人の手がかり、どこに住んでいるのかとか知らないか」
「しらんっ」
「そうか…って、いきなり話が終わったぞおい!」
こうなったら指輪に期待するしかない。
「頼むぞ指輪」
俺は意識を指輪に向けて集中させた。
薄れゆく意識の中で見たものは、町の風景と店の映像そして奇妙な歌が聞こえる。
「ルンルンルビ~ルンルンルビ~ハッピー気分でリングの絆を」
謎のテーマソングの歌を聞きながら、俺の意識は遠のいていった。
気づいたら元の船の個室で寝ていた。
脳に負荷がかかり過ぎたのか。
「ここは…あれは夢だったのか?」
ふと机の上を見ると手紙と指輪の箱が置いてあった。




