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ど近眼の鑑定令嬢ですが、あの一夜が見えていませんでした  作者: 宇和マチカ


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長く語り継がれる私達

お読み頂き有難うございます。ラストです。


 えーと……。

 事の顛末というか、誤解の本質はこうね。

 私って見た目は概念美女だけれど、見かけ倒しなのよ。

 儚い美貌も無いし、前世チートもないし、仕事は派手に見えて地味だったし。

 で、お酒にもそんなに強くないし。

 この残念さが、心の奥でおどろおどろしくコンプレックス化してたんでしょうね。

 実際、言われたこともあったのよ。


 でも忙しかったとはいえ、いい大人がテキトーな気分でなだれ込み一夜を共にして。

 オレオン様のお言葉をよく聞かずに、グッサーと勝手に自傷してたってこと。

 アホすぎる。


「……俺の言い方が悪かったんです……。

 言い方次第で褒め言葉も武器になってしまう」

「いいえ。驚いたとは言え逃げずに素面に戻った時、よくお伺いすれば良かったんですわ」


 それなら顔を見ずとも、誠実なイケメンだと分かった筈なのに……。謎の文字とお金だけとか、どれだけ失礼極まりないのよ。

 そして慌て過ぎて粗忽が過ぎるのよ、私。

 そして逃げグセが付きすぎていたわ。

 逃げてはダメなのよ。


 因みに此処は港が見える喫茶店。レニアはルシアンに預けてきたわ。

 此処でオレオン様と対峙……いや、デートよ!

 おおっと、鬼気迫る感じになってしまったわ。


「それで、俺の印象は上向きましたか?」

「ええ、勿論ですわ!」


 と言うか、こんな勘違い失踪バカ女を追いかけてくるガッツに白旗を上げるわ。

 私がオレオン様なら、何だこの面倒くさい女! 放置しようぜ! ってなるわよ。


「……結婚しましょう、ユララ嬢」

「……私のような粗忽な女、止めておいたほうが良いのでは?

 加えて悪女でしたら、レニアは本当にお子様なのか分かりませんわよ」


 良い方だから、余計にねー。

 私なんぞを抱え込んだら、良くないでしょってなるのよねー。

 おうおう! しようしよう結婚結婚! ウェーイヒャッハー! とはならんのよ。


「悪女は騙す本人に一部始終言わないものですよ」

「そ、そうですか……。確かに」


 余所の殿方との子を、黙って旦那様に育てさせるケースは山程有ったものね……。

 オレオン様のお父様もそれを疑って、血統鑑定しにしたんだったわね。

 不貞を隠す為だったという悪事はバレて……迄は良かったけれど。


 何故か父親が引き取った長男が、病的なファザコンで女性と共にロマンス詐欺を働きまくったのかは分からないままだわ。

 病的なファザコンが特に分かりたくないわね。


「世の中には特殊な詐欺師がいますから」

「今度こそ守らせてください」


 今日の風は雨を含まない、乾いた海風。

 日差しを遮る大きな傘の下の私とオレオン様は、まるで相合傘の下にいるようね。


 明るすぎるのは嫌い。……常に日差しを遮って欲しい。


 前途多難ではあるのよ。

 私は乳飲み子抱えてるから海を渡るのは不可能に近い。

 オレオン様は……今此処に来ている出張からもう直ぐ戻らなければならない。

 この微妙な関係で実質、離れ離れ。


「ユララ嬢」

「はい」

「俺は来週には一度ここを離れます」

「ええ」


 嫌だわ。少し睫毛に湿気が……。海風のせいね。乾いてるとかいうツッコミはなしよ。


「此処に来て貴女を見つけてすぐ、教会を予約しておきました」

「……はい?」


 なんですって?

 協会を予約? 何の協会? いえ、教会と言うと……。


「間に合ってよかった……」

「……ま、間に合って……」

「明日が期限なんです……」

「何と……」


 ……何故、私の返答も待たずに……。

 この方、せっかちが過ぎるわ……。いや、私が逃げたからか。

 私のせいじゃんよ。ああ、真っ赤になっておられる……。

 そうよね、不安よね……。

 でも、私も……もう逃げないわ。

 だって、考えてもみなさいよ。こんなに良い方、そうはいないわよ。


「あの……オレオン様。

 私と一緒に、今からご近所さんとルシアンに、結婚式に出てくださいとお伝え願えます?」

「喜んで!」


 そんな訳で、交易都市トリアイの風変わりな出来事のひとつとして……。

 またご近所さんの噂の的になってしまったのよ。


 手を繋いで申し訳なさそうな私と、満面の笑みのオレオン様の事が、長く語り継がれてしまったわ。




お読みくださった貴方に心から感謝を!


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