ラフテル到着
二人を連れて俺は、本拠地の入口に来た。
入ってしまえば、問題ないのだが、見た目だけ言えば
雷がドラゴンのように飛びまくり、雲が黒く渦巻いている。普通の人間なら、こんなとこにはまずこない。
まぁ、だからこそ、本拠地に向くのだが。
「な…なぁ、本当に行くのかよ。」
「心配するな。俺がいれば問題ないし、ビビリなお前はこの船にのせてやったんだから、ゴチャゴチャぬかすな。この船は、海上要塞だ。嵐だろうとも揺れず沈まずびくともしない仕組みになっている。この船の側にいれば、迷わずにたどり着ける。」
「いや〜しかしこの船はスゲェな。大砲の数もそうだが、この装甲バケモンかよ。しかも、乗組員がこぞって戦闘員ときた。」
「アイツラが戦闘員なんて言ってたら、うちの提督は、死神かなんかなのかもな。」
いらんことを言うな、アルヴェール。ホニーゴールドが
固まっちまったじゃねぇか。
「提督さん…強いのか?」
「あんたなら、即死だな。」
ほれみろ。気絶しちまったじゃねぇか。
「アルヴェール。責任持って部屋に運べよ。」
「…へい。」
「さてと、お前ら…かえるぞ。」
「「「「ウォォォォーーーー!!!!」」」」
俺たちは、船を進める。流石のサッチも雲の中に入る瞬間は目を閉じて屈んでいた。
「おい、見てみろ。」
俺は、屈んでいたサッチに前をむかせる。
「こ…これは、どういうことだ?」
勿論、今もとんでもない嵐にはなっている。ただし、この船の周りだけは一切の雨もふらない。俺が船の周りだけ、天候操作してるからな。
だが、それを言うのはやばいから、別の作がある。
「この船には、海獣の素材を利用している。海獣は天候さえも操ると言われている。」
「神話だろ?確か、海の王、リヴァイアサンといったか。」
「リヴァイアサンはいる。読んでやろう。」
「は?」
〚来い…リヴァイアサン〛
俺はスキルを使い、リヴァイアサンを呼び出し、船の前に顔を出させる。顔だけで学校のプールくらいの大きさがある。
これでもまだ子供だ。
振り向くと今度は、サッチが硬直している。
「言ったろ?いるって。」
「何で、神話の海獣がここにいんだ。」
「俺友達だ。」
「あんた、神様かなんかか?」
「まぁ、これで信じられんだろ?俺がいれば安全だ。」
「ああ。俺も従おう。」
「なら、大人しく、部屋で待っていてくれ。これから、こいつに頼んで速度を上げる。」
「分かった。」
船員にサッチを案内させて、俺は速度を上げた。
まぁ、もう見えてきているのだが。俺も早く陸に降りたい。
陸が見えてきた。イメージ的に考えれば、
スペインのアンダルシア地方のアルコス・デ・ラ・フロンテーラや、ギリシャのサントリーニ島のように白を基調としたレンガ造りの町並み。
加えて、金色の絨毯のように広がる農園。
色彩様々な木々の森。
子供達の楽しそうな笑い声が響く。
この時代の人々…特に海賊からすれば、桃源郷のような島。
因みに島についたことを知らせ、ひと目見たホニーゴールドは、美しさに感動し泣き崩れ、サッチはまたも呆然としている。
港に船をつけると、乗組員達は我先へと船から飛び降り、
家族との感動の再開繰り広げている。
特に家族がいない船長、航海士一行は、島の中心部へと向かう。
街並みを涙を流しながら歩いていたホニーゴールドは、
俺に近寄ってきた。なんかキモい。
因みにさっき俺の名前は教えた。
「バルバトス提督。この島に俺の屋敷をくれませんか?」
「良いのか、ここで?いずれ貴族になるんでないのか?」
「貴方が辺境伯になったときに騎士爵にしてくだされば十分。正直、こんな街を私は知らない。街並みだけではありません。船から見えた絨毯のように広がる農園。どうかお願い致します。」
街のど真ん中で土下座を繰り出すこの男。周りの住民がヒソヒソと貶しているようだが、彼には届いていないんだろうな。
まぁ、これでコイツの絶対的忠誠が得られれば、ナッソーを
騎士団から守り抜けるだろうし、改革がより進めやすくなる。
「分かった。農園等は、今後だが屋敷については用意してやる。」
「ありが…」
「ただし、俺の直属の部下になる限り、本日からはそのだらしない格好を辞めろ。俺の民意が疑われる。アルヴェール。」
「はい?」
「こいつにルーク達のような服装を準備してやれ。後、軍服も用意してくれ。ルークの下につける予定だから、編成をどうしていくかも、あいつと詰めておいてくれ。」
「了解しました。」
「ホニーゴールド。アルヴェールについて行け。こいつはこれでも次席だ。今後のお前の業務についても説明がある。」
「承知致しました!」
ものすごい嬉しそうに行ったな。
まぁ、貴族になれる見込みができたんだ。
後はあいつ次第。これでケンウェイに殺される
世界線から脱却したわけだ。
それからというもの、
俺はここ最近と同じように暇を味わうことになった。
アルヴェール、ルーク、エルトンとサッチ、ホニーゴールドは、今後の方針と海賊団の構成について話し合いをしているようだ。俺としては、特にやることもないので、島を馬に乗ってぶらぶらと回ってみたり、リヴァイアサンを呼んで、彼の背に横になって日向ぼっこしてみたり、のんびりと過ごしていた。
こんなことしていていいのだろうか…。
今この瞬間も世界で現代人が殺されているかもしれない。
俺のあこがれのアイドルや女優さんが犯されているかもしれない。俺の夢を果たすには、時間が惜しいのだが、俺一人では何もできないため、仕方がない。
1週間後…
俺たちはようやく、出発の時を迎えた。