猫柳の花言葉は……4
「まったく!こんな出来事、何千年も神をしておるわらわですら初めての事じゃぞ!」
アマテラス様が今世紀最大級の発見をした科学者みたいに興奮しながら語っているのに対し、
「え~っと、つまり……どういう事ですか?」
私は、まったくもって今の状況を理解出来ずに居た。客観的に見れば、アマテラス様のカグラ舞を、私が水のカグラで相殺した風にしか見えないのだが、その相殺の仕方に問題があったらしく、アマテラス様はあの痛々しい小石を私にぶつける事で、何かの確信を得たらしい。
「なんじゃ?夕華よ、今の説明で自分が今どれ程凄い事をしたのか、まだ理解しておらんのか?」
キョトンとした表情を見せた後、コホンと咳払いをして、
「まぁ、簡単に言うとこうじゃ。お主は不可能とされておった、カグラの無力化を意図も容易くやってのけて、わらわの攻撃を見事に凌いだのじゃ!うずめの”芸能”の本質ですら感情を”無”にする事が出来んと言うのに……。」
うずめさんですら出来なかった、という言葉に。じわじわと自分の行動の凄さに気が付き始め、思考が少しずつ回転を始める。
……じゃ、じゃあ、この明鏡止水を使えば、アマテラス様に勝てる?だって、うずめさん、1回アマテラス様にカグラ勝負で勝ってるだよね、って事は、そのうずめさんですら不可能だったカグラの無力化を、私が出来るんだったら上手く行けば、もしかすると――――――。
そんな、A君に勝ったB君、そのB君に勝った私は、A君より強い!みたいな子供じみた屁理屈で自信をつけると、微かな希望を胸に、勝利への算段を開始する。
「くーちゃん、もう一回、明鏡止水できる?」
(…………。)
「ん?くーちゃん?」
(ゆーか……くーちゃん、もう、げんかい)
くーちゃんの声が頭の中で途切れる様に響き渡るのと同時に、私の身体はゆっくりと地面に着地し、背後にあったブラックメタルのスピーカーは眩い光りを放ちながら形を変え、くーちゃんの元の姿に戻り、その場に倒れ込んだ。
「くーちゃんっ!?くーちゃんっ、どうしたの、大丈夫ッ!?」
急いで、陸上100m走選手並みのスタートダッシュで駆け寄り、意識を確認すると、
「にゅ、にゅ~……りょうりのさしすせそは……おぼえたよ~……。」
と、訳の分からない寝言を言いながら、スヤスヤと寝息を立てていた。
「恐らく、初めての現神化で体力を消耗しすぎたんじゃろう。その上、第一奥義を二発連続で使ったのじゃ、無理もない。まぁ、そのまま寝かせておればその内目を覚ますじゃろ、心配はいらん。」
声に反応し、慌てて後ろを振り返ると、カツカツと下駄の音を鳴らしながら、アマテラス様が私達の方に近づいて来て、そっとくーちゃんの顔を覗き込み、その場にしゃがみ込んだ。
「まったくっ……、無茶をしよって、初のカグラ勝負じゃからと言って頑張りすぎじゃぞ、お主も、お空も。」
アマテラス様が悪戯っぽい笑みを浮かべ私の方を見てニコッと笑い、そしてくーちゃんの前髪を掻き分け、その疲れ果ててグッスリと眠る表情を母親さながらの優しい瞳で見つめていた。
「夕華、さっきの何アレ?クーもいきなり飛んで行ったし。」
そう言って、遠くの方で観戦していたはずの紅ちゃんもやって来て、相変わらずのマイウェイ感全開で紅ちゃんが質問してきた。
「かっかっか!いやなに、夕華とお空が現神化しただけの事じゃ。」
さらりと簡単に言ってのけたアマテラス様ではあったが、その言葉を聞いた瞬間に紅ちゃんの目はカッ!と見開き、「やっぱりか……」と頭を抱えた。
「いやいや、しただけの事って、只事じゃないよね?」と紅ちゃん。
「まぁ、そうじゃな。」とアマテラス様。
「え~~~っと、どゆこと?」と私。
私は二人の会話と言ってもいいのか分からないほどの短いやり取りを聞いて、何だか少しだけ疎外感を感じてしまった。
「まぁ、難しい事は後でするとして……、」
アマテラス様は立ち上がり、膝をパンパンと払い、私の方を獲物を狩るような鋭い目でチラリとみると、
「ささっ!カグラ勝負の続きじゃーーーっ!」
まったくへばる事なく両手を挙げて、万歳のポーズで叫んだ。こ、この神様、まだ戦う気だ……。でも、もう現神化が解けてしまっている状況では、明鏡止水でのカグラ無力化が出来なくなるため、勝率はほぼゼロに等しいのだけれども、やるしかない!
と勢い込んで、戦闘態勢に入ろうとした時、
「と、言いたい所じゃが実際、わらわは夕華の祝詞には納得しとるし、カグラ勝負でも無力化などというカグラ勝負の根本を覆すような面白い物も見えたからの、わらわは充分楽しめた!満足なのじゃ!このカグラ勝負、夕華、お主の勝ちじゃ!」
と太陽が光ったよな眩しすぎる笑顔を見せ、私達のカグラ勝負は終了した。その後に……、
「それに、お空が疲れて寝てしもうた。こんな所で風邪でも引いたら大変じゃ、家の布団まで運ぶのじゃ。」
と、ついでみたいに言ったつもりのアマテラス様だったが、本心はバレバレだった。まったく、本当にアマテラス様はくーちゃんに溺愛なんだから。
「うん。本音が隠しきれてないね。」
と紅ちゃんが言い放ち、手伝うよと言ってアマテラス様と一緒に、地面の上でスヤスヤと寝ているくーちゃんを家まで運ぶのであった。




