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それぞれの祝詞4

AM 9:00 龍神の滝、近くの小屋の庭


「うむ!皆、集まったようじゃな!」

朝早くにアマテラス様が朝食の準備をすると言うので私も手伝い、その間に紅ちゃんとくーちゃんが洗濯物やシーツの交換をしてくれた。そして、ご飯と味噌汁、ダシ巻き卵と海苔、ホウレン草の胡麻和え、さらには、焼きたての軟らかい鮭といった、いかにも日本の朝食とも言える数々の料理に、舌鼓を打ち、その後、食器の片付けや細々とした整理や掃除を済ませてから、アマテラス様に、小屋の外に呼び出されたのであった。


「どうじゃ?朝食は舌に合ったかの?」

「はい!す~~~っごく美味しかったです!」

「うん。絶品だった。あんな朝ご飯、毎日食べたい。」


私と紅ちゃんが、それぞれの感想を言い合い、朝食の余韻に浸っている横で、くーちゃんが、おいしかったー!と元気良く叫んでいる。


「そうかそうか、なら良かったのじゃ、腹が減っては、カグラ舞も舞えんからの!かっかっか!」

その小さな体の腰に両手を当てながら、相変わらず豪快な笑い声を周囲に響かせる。それと同時にカグラ舞の事を思い出した。私達が高天原に来た理由、神様に願いを届けることである。うん、決して忘れていた訳ではないよ?


「って事は、アマテラス様、今から・・・?」

「うむ。そうじゃ、これからカグラ勝負を始めるぞ!」

コホン、と咳払いをした後、私達から2メートルくらい距離をとる。


「お主達、カグラ勝負は初めてじゃな?」

「は、はい!初めてです!」

「私は何回か、ツクヨミ様の暴走を止めに行った時に勝負自体はした事あるけど、何か違うの?」

「まぁ、似たようなものじゃが、勝敗条件が少し変わるの。」

アマテラス様は近くに落ちていた木の枝を拾い、地面に文字をガリガリと書き始めた。


「お主達が、神様に願いを届けて、護符を貰うためには、カグラ勝負で神様に勝たねばならぬ。これはもう分かっておるな?」

カグラ士協会に入会した時に、うずめさんから一番最初に教わったことだ。この、”カグラ勝負で勝つ”ということが大前提で依頼は達成できるからだ。うん、とっても大事。


「では、このカグラ勝負に勝つ、という事なのじゃが、勝利条件は2つある。それが、これじゃ。」

地面には勝利条件と書かれ、箇条書きで、2つの項目が書かれた。

一つ目は、カグラ舞で相手を倒す。

二つ目は、祝詞で神を納得させる。


「えっと、一つ目は分かるんですけど、二つ目の、祝詞で神様を納得させるっていうのは……?」

「うむ!この二つ目こそが、カグラ勝負での味噌とも言えるじゃろう。」

アマテラス様が手に持っていた木の枝を棄て、まるで子供に教える先生のような口調で、カグラ勝負の説明を始めた。


「よいか?まず、カグラ勝負は基本的に神とカグラ士が、お互いのカグラ舞をぶつけ合う事で勝負を決める。まぁ、要はカグラ舞を用いた戦闘じゃな。この戦闘で相手に参った!と言わせた方が、勝者となる。これが一つ目の、カグラ舞で相手を倒すという事になるの。」

「うん。これはツクヨミ様の暴走を止める時と変わらないね。」

紅ちゃんが、うんうんと頷きながら聞いていた。いつも授業とか説明の時は、すぐに立ってでも居眠りする紅ちゃんが、ここまでしっかり話を聞いていたのが意外だった。それほど真剣ってことなんだな……。


「そうじゃな、確かに勝負事なら、戦闘で相手に勝つだけで良いかもしれん。じゃが、これはお主達の”願いを届ける”という仕事じゃ、ケンカとは訳が違う。そこで、二つ目の、祝詞で神を納得させる、という勝利条件が加わるのじゃ。」

すると、紅ちゃんの頭にクエスチョンマークが浮かび上がり、


「どうしたら、勝ちになるの?」

私と同じ疑問をアマテラス様に質問した。するとアマテラス様は、簡単な事じゃ、とでも言わんばかりの含みのある笑みを浮かべながら、


「わらわを納得させれば良い。わらわが、カグラ勝負中、お主等に問いを投げかかる、そこでお主等はその問いに答えれば良い。その答えにわらわが納得できれば、お主等の勝ちとなる。まぁ、その答えが、祝詞と言っても良いかもしれんがの……。」

「もし、アマっちが祝詞に納得しなかったら?」

「あっ、それは私も思った。」

「うむ。その時は、残る選択肢は一つじゃ、一つ目の、カグラ舞で相手を倒すしか無くなる。まぁ無理やり神様に願い事を聞いてもらう形にはなるがの!しかし、わらわは強いぞ!」

かっかっか、と笑いながら言っているが、実際、今の私に神々の頂点に立つとされるアマテラス様に勝つことができるのだろうか?


「これが、カグラ勝負の大体の説明となる、分かったか?」

イマイチ、祝詞でのやり取りが頭にピンと来なかったが、アマテラス様が百聞は一見にしかずじゃ、と言うので、とりあえずはやってみようと思う。


「では、そろそろ始めようとするかの。お空、ここは危ないから家の近くまで下がっておれ。」

「はーーーい!」

アマテラス様の指示に素直に従い、トテトテとくーちゃんが退避する。そして、この場には私と紅ちゃん、そしてアマテラス様の三人になった。


「よし、これで準備オッケーじゃな、さて、どちらからカグラ勝負するのじゃ?どっちかが勝てばその場で依頼は完了となるぞ。」

「んじゃ、私から。夕華、カグラ舞での実戦は初めてになるでしょ?大体どんな感じになるのか見てて。」

紅ちゃんがさっそうと手を挙げる。確かに紅ちゃんなら、ツクヨミ様の暴走も止めたことがあるくらいだし、カグラ勝負も慣れてるんだろうな。


「うむ、十五夜家の当主が相手か。ツクヨミの暴走を止めるほどのカグラ舞、どれ程のものか確かめさせてもらうぞ!」

「ん。まぁ、ほどほどにヨロシク。」

アマテラス様が凄みを効かせてくるのを、紅ちゃんはスルリとかわしマイペースに受け答えする。


「では……。」

アマテラス様が目を閉じながら低いトーンで言うと、まるで何かを差し出すかのように、ゆっくりと両手を前に突き出し、眩しい光が辺りを照らす。思わず右手で目を覆い、光が収まってだんだんと目が慣れてくると、目の前には十二単じゅうにひとえに身を包み、背中には日輪のような、まばゆい輪を付けたアマテラス様が立っていて、その体の周りには、電気のようなバチバチとした紫電が走り回っていた。


「これが……神様……。」

あまりに神々しい姿に唖然としてしまったが、それも束の間、次の瞬間には空気がピンとい張り詰め、アマテラス様と初めて自己紹介した時に感じた、気を失ってしまいそうな緊張感が辺りを覆った。

そして、アマテラス様がゆっくりと目を開けると、これから始めるカグラ勝負が楽しみでしょうがないと言った、闘争心剥き出しの笑顔を見せると、紅ちゃんを睨みつけ一言。


「さぁ、楽しいカグラ舞の始まりじゃ!」




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