小さな神様と幼い式神4
「では、さっそく、カグラ勝負と行きたいところじゃが・・・。」
さっきまでの張り詰めた空気は消えさり、アマテラス様は腕を組み、、左手で顎を支えながら何か考え込んでいる様子。どうしたんだろう?この依頼、もしかして却下されちゃうとか・・・?
「お主ら、祝詞はきちんと考えておるのか?」
アマテラス様が心配そうな表情で見つめてくる。
「あっ・・・。」
「何、”祝詞”って・・・?」
キョトンとした表情で、こちらを見てくる紅ちゃん。
いやいやいや、紅ちゃん!?高天原に行く前に、うずめさんから説明受けたよね!?
思わず、ツッコミを入れそうになったが、よく考えてみると、その時、紅ちゃんは居眠りをしていたのだった。しかも、立ったまま・・・。
「え~~~っとね、紅ちゃん?祝詞って言うのは・・・。」
「うんうん。」
真剣な表情で、じ~~~っと、こちらを見つめてくる紅ちゃんにドギマギしながら、うずめさんに言われた事を思い出す。
「祝詞って言うのは、その依頼の本質を理解して、その願い事に必要なものを、神様の前で言う事、だったかな?」
うずめさんが言っていた事を思い出し、そのままの言葉で伝える。
「うむ。その通りじゃ!今回の依頼は、”自由に生きたい”じゃな。自由に生きるためには何が必要か?と言う、わらわの問いに対する、答えを言えばよいのじゃ!中々難しいぞ、これは!」
その後、アマテラス様は、豪快にかっかっか!と笑うのであったが、今の私達には、その様子を見ている余裕はなかった。なぜなら・・・。
「も、紅ちゃん、ど、ど、ど、どうしよう!?私、祝詞なんて、全然考えてなかったよぉ~。」
「大丈夫、夕華。安心して。」
おぉ!いつになく、紅ちゃんが強気だ!これは安心して、頼ることができ・・・
「私も、全然考えてないから。」
できなかった・・・。うん。そうだよね、紅ちゃん寝てたもんね。考えてるはずないよね・・・。
おろおろと、焦る私達に気づいたのか、アマテラス様は、またしても豪快に笑った。
「かっかっか!やはりお主達、何も考えてはおらぬようじゃの!まぁ良い!初めての依頼ならよくある事じゃ。まぁ、いずれにしても、今日はもう遅い。」
そう言われて、外を見てみると、あたりには、茜色の空が広がっていた。
「お主達、今日はここで泊まって、明日の朝にカグラ勝負をするから、それまでに祝詞を考えておくが良い!」
アマテラス様の横でじっと座っていたくーちゃんが、期待の眼差しで、アマテラス様の顔を覗き込む。
「ゆーかと、もみもみ、お泊りするの~!?」
「そうじゃぞ、お泊りじゃ!晩飯と風呂、あと布団の用意もせねばならんの!」
「うん!くーちゃん、じゅんびするー!お泊りだー!」
嬉しそうに、囲炉裏の周りを駆け回るくーちゃんだったが、正直、私達は、この状況をどうすればいいか分からなかった。
「紅ちゃん、紅ちゃん。アマテラス様は、ああ言ってるけど、そもそも、高天原で一泊ってできるの?依頼は今日中にこなさないと、いけないんじゃ・・・。」
「う~ん、分かんない。・・・でも、」
「でも・・・?」
下を向いて、何か考える紅ちゃん。どうしてんだろう、何か困った事でもあったのかな?
「でも、私も今日一日で終わると思ってたから、パジャマ持って来てない・・・。」
本気で困った様子の、紅ちゃん。いや、もう紅ちゃんの中で泊まる事は確定してるんだね・・・。
「問題そこなんだ・・・。」
「夕華も困るでしょ?パジャマないと。」
「そ、そうだね。」
真剣に聞いてくる紅ちゃんに同意するしかなかった。ちなみに、私はパジャマじゃなくて、ジャージで寝る事のほうが多い。もしかして、紅ちゃんより女子力低い・・・?
「それなら大丈夫じゃ!わらわが昔使っておったパジャマが、確かタンスの奥にあったはずじゃ!ちと待っておれ!」
いやいや、アマテラス様!問題はそこじゃないんですっ!そうじゃないんですっ!そう言おうとした時にはもうすでに、アマテラス様は部屋の奥に行ってしまっていた。
「もみもみ~。お泊りできるの~?」
「うん。パジャマがあれば、問題ない。」
「やったーーー!ご飯とお風呂の用意しなくちゃー!」
「そだね。ご飯作るのは苦手だけど、お風呂は任せて。」
どうしたものかと、考える込む私の横で、くーちゃんと紅ちゃんが、着々と、お泊りの用意を始めていた。あ~・・・、どんどんお泊りの方向に話しが進んでいく~。まぁ実際、うずめさんも、今日中に依頼を達成しなさい、なんて言ってなかったから、大丈夫だとは思うんだけど・・・。
「あぁ、そうじゃ、言い忘れておった!お主ら、高天原で一泊は初めてじゃろ?」
奥の部屋でパジャマを探してるであろう、アマテラス様の声が聞こえてくる。
「はいー!初めてですー!」
アマテラス様に聞こえるように、声を大きくして返事する。
「うむ。なら、ウズメに一言、連絡入れておくんじゃぞー。」
ん?今ウズメって言った?私の思い当たる人物は、一人しかいなかった。
「ウズメって・・・あの、うずめさん?」
「なんじゃ?お主ら、ウズメには、会っておらぬのか?」
そう言いながら、奥の部屋から出てくる。
「カグラ士協会の受付でおらんかったか?ぼけーっとして、すぐに服を脱ぎたがる、無駄に乳がデカイ娘じゃ。」
間違いない!すぐに服を脱ぐ、っていう時点で、私の知ってる、うずめさんだ!
「知ってます、会ってます!というより、私たちが、カグラ士協会入会する時に、受付してもらいました!」
「まぁ、そうじゃろうな。カグラ士協会の受付は、あやつしかおらんからの。それと、ほれ。」
いきなり手渡された物をみると、それはパジャマだった。しかも、スケスケで、レースの付いた、世間一般で言う所の、ネグリジェと呼ばれる物だった。
「む、無理無理無理!あ、アマテラス様!私、こんなの着れませんよ!?」
「大丈夫じゃ。わらわがまだ大人体系の時、ちょうど、お主と背丈が変わらん時期に着ておった物じゃ!サイズなら問題ないぞ!かっかっか!」
背丈の問題じゃないのに・・・。どうしてだろう、さっきから紅ちゃんといい、アマテラス様といい、話が噛み合わない。私がズレてるのかな・・・。もしかして、高天原では、常識に囚われてはいけないのかもしれない・・・。
「でも、これ、私には派手過ぎます・・・。」
そうすると、アマテラス様は、少し困った表情になり、
「じゃがのぅ、パジャマと呼べる物はこれしかなくてのぉ、あとはジャージぐらいしか・・・。」
「それで、大丈夫です!」
バンッ!と立ち上がり、アマテラス様の手を繋ぐ。
「じゃが、しかし、女子として、それは不満があるのでは・・・。」
「いえいえ、そんな事ありません!!貸し手貰えるだけで十分です!」
うん。いいよね!ジャージ!ジャージ最高!ジャージ万歳!
この時、天界高天原で、私ほどジャージを着たいと思った者は、他には、絶対いないと思った。




