ガール・ミーツ・ガール6
「わらわは、誰もが尊敬し、崇拝する、全知全能、神様の中の神様!あーちゃん事、アマテラスじゃーーー!」
自信満々に言う少女に対して、私はいきなりの出来事に、頭の回転が間に合わず、呆気にとられていた。
えっ・・・?アマテラス・・・神様・・・?神様のアマテラスって言えば、神様達の頂点にいて、八百万の神々を束ねている存在だよね・・・。
呆気にとられるのも無理はなかった。なぜなら、アマテラスと言えば、正式名称、天照大御神。天界、高天原を統治・管理し、八百万の神々の頂点に君臨する存在、まさに、神様の中の神様だからである。この事はアカデミーで、一番初めに習う基本中の基本だった。いくら勉強が苦手な私だって、アマテラス様がとてつもなく凄い神様だという事は知っている。
でもでも、流石に、こんな小さな子が神様のトップ、アマテラス様とは信じられない・・・。
「ふむぅ。あまり信じてもらえんようじゃな、まぁ無理もないか。今は信仰する者も少なくなって、だいぶ力も弱まっておるしの。」
私の考えていた事が表情に出てしまったのか、アマテラスと名乗る少女は、やれやれと首を振り、そして、ゆっくりと右腕を垂直に、上に伸ばすと、
「百聞は一見にしかず、じゃな。娘よ、まぁ見ておれ。これが神の力じゃ!」
そう言って、切り株の上で座り、休んでいる紅ちゃんに目掛け右腕を振り下ろした。
すると、紅ちゃんの周りに、白い小さな光が集まり、その光が、紅ちゃんの体の中に吸収されていく。そして、さっきまで、荒かった呼吸が落ち着いてきて、顔色もだんだんと血の気を取り戻していく。
「す、凄い・・・。」
「そうじゃろ!そうじゃろ!どうじゃ、驚いたか?これが神の力、”無病息災”じゃ!恐れ、敬うが良いぞー!かっかっか!」
目を見開いて驚く私に、少女は上機嫌で笑った。
「ほ、ホントにアマテラス様なんですね!?」
「あぁ、間違いない、わらわがアマテラスじゃ!」
「わ~~~っ!まさか、初めて高天原に来て、最初に会った神様が、アマテラス様だなんて・・・感激です!」
あまりの感動に、思わずアマテラス様の手を、ぎゅっと握手する。
「かっかっか、嬉しい事を言ってくれるのぉ、まぁ、これも何かの縁じゃ、お空を助けてもらった礼もかねて、ウチまで来て休むとよい。あそこで、ぐったりなっておる、十五夜家の者も連れてくるがよい。」
そう言うと、アマテラス様は右腕を垂直に上に挙げ、大きく半円を描きながら右腕を下に下ろすのと同時に体を一周させる。そう、これは、紅ちゃんが使った、風のカグラ舞と同じものだった。
「かっかっか、では、わらわは先に家に行って待っておるからの、家まではあと少しじゃ、がんばって登ってくるのじゃぞ~~~。」
舞が終わるのと同時に、アマテラス様は空高く飛び、家の方向であろう、方角へ飛んで行った。
しばらくして、切り株の上で、休憩していた紅ちゃんが、いつもの淡々とした口調で話しながら、近づいてくる。
「夕華・・・さっきの子は?」
「あっ!紅ちゃん!もう具合は大丈夫なの?」
紅ちゃんはコクリと頷き、
「ん、大丈夫。なんか座ってると、急に具合が良くなってきた。」
「そ、そうなんだ。」
やっぱり、さっきのアマテラス様の”無病息災”だっけ?その効果がでてるみたいだね。
紅ちゃんの顔色も良くなり、ほっと胸を撫で下ろすと、やっぱり本物の神様だったんだ。と、納得するのであった。
「それより、さっきの子は?」
紅ちゃんは余程、さっきの子が気になるのか、グイグイ顔を近づけて迫ってくる。その勢いに押され、返事をするのに少し戸惑ってしまった。
「えっと・・・さっきの子は・・・」
いきなり言って信じてくれるかな?相手はだって、あのアマテラス様だよ、神様の中の神様だよ?それがあんな・・・小さな女の子だったなんて。
そんな事を考えている最中も、紅ちゃんは無言でグイグイと近づいてくる。
「ア、アマテラス様だよ。」
ぽつりと、小声で呟いた。
「はい・・・?」
聞いたことの無い、素っ頓狂な声で答える紅ちゃん。
確かにそういう反応になるよねぇ~。私だって、あんな小さな女の子がアマテラス様だなんて、思わなかったし・・・。
「え~~~っと、さっきの女の子がアマテラス様だよ。」
もう一度同じ事を、今度ははっきり聞こえるように言う。
頭に?マークを付けたままフリーズした紅ちゃんが再び動き出す。
「さっきのって、さっきの子?」
「うん、そ。私も最初は信じられなかったけど、実際、紅ちゃんの体調が良くなったのも、アマテラス様が、神様の力を使ってくれたおかげなんだよ~。」
その事を聞くと、紅ちゃんはしばらく黙り込み、そして、なるほど、と呟き、
「それで、そのアマテラス様は何処に行ったの?」
「えっとね、この先に、アマテラス様が住んでる家があるから、くーちゃんのお礼をしたいそうなんで、家で待ってるって。」
「ふ~ん、ってことは、もうすぐ目的地到着って事だね。そうと決まれば早く行こ。もう山道は・・・もう十分・・・。」
ハァ~~~。っとまるで魂の抜けていく様なため息を深くついてから、また山道を登りだす紅ちゃん。
よっぽど、運動するのが苦手と見える。
「ま、待って!おいてかないで~!ほら、くーちゃんも行くよー!」
スタスタ先に行く紅ちゃんに置いて行かれない様に、後を付いて行こうとするが、さっきからずっと静かだったくーちゃんが気になり、目を向けると、
「・・・おしり・・・ペンペン・・・こわい・・・おしり・・・ペンペン・・・やだ。」
肩を抱き、体育座りして、ガタガタと体を震わせながら、何度も呪文のように唱える、くーちゃんの姿がそこにあった。




