ガール・ミーツ・ガール4
「それで、これからどうするの?」
くーちゃんの頭を撫でながら、紅ちゃんは淡々と言葉を繋いでいく。
「う~~~んっとね、この滝の上にくーちゃんの家があるみたいだから、そこまで送り届けようと思ってる。」
「ふ~ん。この・・・上に?」
紅ちゃんが滝を見上げ、本気?といった表情でこっちをみる。
まぁ、無理もないよね・・・。
紅ちゃんが首が痛そうに眺めている滝は、軽く30メートルくらいはあるだろう。それを登り、家まで送り届けようとしているのだから、紅ちゃんが疑問に思うのも当然だ。
「ま、まぁ、この滝をよじ登って行く訳じゃないし、ほら!あそこ!傾斜はきつそうだけど、あの山道ならなんとか、上に登って行けそうだし!」
そう言って指差した先には、山道と呼ぶにはあまりにも険しく、むしろ獣道と呼ぶほうが、しっくりとくる山道があった。
「くーちゃんも、あそこの道からきたんだよー!」
私が指差す方を見てから、同じようにくーちゃんも指を差す。
くーちゃんも、あの道から来たんだ・・・。なら私でも大丈夫かな・・・?
「そっか、あの山道を行けば、クーの家まで行けるって事だね。」
紅ちゃんが、冷静に状況判断をする。しかし、それ以上に気になる事が、
クー・・・?誰のことだろう。・・・あっ!くーちゃんのことか。紅ちゃんは相変わらず、初対面でもサラッと愛称をつけるね。
「くー?」
くーちゃんが首をかしげながら、紅ちゃんに尋ねる。
それに対して紅ちゃんが、コクリと頷き、
「そう。くーちゃんだから、クー。分かった?」
「うん!くーちゃんは、クー!」
くーちゃんは嬉しそうに、自分の事をクー、クー、と連呼していた。
以外に、この二人は息が合うのかも?
そんな事を思いながら山道を登り始めた。
傾斜のキツい山道を登り始め、しばらくすると、ふと疑問に思ったことを、私の先を行く、くーちゃんに投げかけた。
「ところで、くーちゃんは山の中にひとりで住んでるの?」
「ううん、ひとりじゃないよ、あーちゃんと住んでるの。」
あーちゃん・・・?誰だろう。
ハァハァ、と息切れしながら私の後ろを歩く紅ちゃんに話しかける。
「ねぇ、紅ちゃん。あーちゃんって、くーちゃんのお母さんかな?」
「ハァハァ・・・いや・・・それは・・・ない・・・。」
「どうして?」
「クーは、・・・おそらく・・・式神。・・・式神にはお母さんって概念は・・・無い。」
言葉が、途切れ途切れになりつつも律儀に答えてくれる。
紅ちゃん、アカデミーのころから運動だけは苦手だったよね~。マラソン大会の時なんか、カグラ舞で学校燃やして大会を無くす!なんて無茶苦茶言ってたし。
などと思いながらも、紅ちゃんは続けて、
「式神は・・・神様が作り出すもの。ハァハァ・・・だからこの子の言ってる・・・”あーちゃん”って人は・・・おそらく・・・神様の事・・・だと思う・・・あぁ・・・もう無理・・・。」
紅ちゃんが説明を終えると、前のめりに倒れこんだ。
「も、紅ちゃん!?」
急いで紅ちゃんに駆け寄り、体をゆする。異変に気づいたのか、前を進んでいたくーちゃんも、戻って来て、心配そうに紅ちゃんに近づいてくる。
「もみもみ!大丈夫!?」
「む、むきゅ~。」
目を回しながら、ガクッとうなだれる紅ちゃん。
紅ちゃんが・・・動かない!・・・まるで屍のようだ・・・。なんて呑気な事言ってる場合じゃない!と、とりあえず休憩できる場所を!
周りを見渡すと、ちょうど座るのによさそうな切り株があった。とりあえずそこに、紅ちゃんを座らせる。
「紅ちゃん、大丈夫?」
下を俯いたまま、放心状態の紅ちゃんに話しかける。
「少し疲れただけだから、休めば大丈夫。」
「そっか、あんまり無理しちゃダメだよ?」
「うん。アリガト。」
紅ちゃんの顔色も少しずつ良くなってるから、このまま安静にしていれば、大丈夫そうだね。それと、くーちゃんは大丈夫かな?
くーちゃんの方をみると、しゃがみ込み、地面をじっと見つめ何かを探しているようだった。
「くーちゃん、何してるの?」
近づいて声をかけると、
「これ!ゆーかにあげる!」
はい!と渡された物を見ると、
「これは・・・どんぐり?」
「うん!さっき卵を戻してくれたお礼!」
「そっか・・・ありがと!」
お礼を言うと、くーちゃんは満面の笑みで、
「どういたしまして!あーちゃんも、くーちゃんがお外遊びにいってお土産にどんぐりもって帰ったら、ありがとう!って言ってくれるのー!」
「へぇ~、そうなんだ。その、あーちゃんって言う人はどんな人なの?」
質問すると、くーちゃんは腕を組み、真剣な表情で考え込む。
「う~~~んっとね、あーちゃんはね・・・。」
答えようとした時、空の方から声が聞こえてきた。
「空ーーー!お空ーーー!何処におるーーー!」
声のする方向を見ると、空中に一人の女の子が浮いており、大声を上げて誰かを探している。
その声を聞くと、くーちゃんが、
「あっ!あーちゃんだ!あーーーちゃーーーん!おーーーい!こっちだよーーー!」
くーちゃんも負けじと、大きな声で叫んだ。
すると、くーちゃんの声に気づいたのか、ゆっくりとこちらに女の子が向かってくる。
そして、そっと地面に降りると、
「お空!何処におったのじゃ、急にいなくなったから探したんじゃぞ!」
と、くーちゃんと同じくらいの背丈の女の子が両腕をがっしりと組み、どっしりと仁王立ちしていた。




