ガール・ミーツ・ガール3
あっ・・・、これ私・・・死んだ・・・。
体が空中で一瞬止まった様な感覚のあと、重力に従って落下し始める。
「キャァァァァーーーーー!」
手足をバタつかせ抵抗してみるが、どうすることもできない。
落ち着け、私!まだ何か・・・方法はあるはず!
思考している間も落下は続き、さらにスピードが上がっていく。
・・・ダメだ!何も思い浮かばない・・・。
どんどんと、地面が目の前に迫ってくる。
「ゆーーーかーーーっ!!!」
下からくーちゃんの声が聞こえる。
あぁ・・・くーちゃん。あんなに大声だして泣いちゃって、でも卵はちゃんと巣に帰したから大丈夫だよ。
こんな危機的状況なのに、以外にも頭の中はクリアで落ち着いていた。落下しているスピードに対しての時間が長く感た。しかし、自分が落ちている事には変わりはない。地面激突まであと7秒前後といったところだろう。
覚悟を決め、目を閉じ、歯を食いしばる。
くっ!・・・もうダメだ!
どうする事もできない状況に諦めかけたその時だった、
「・・・丈夫・・?」
突然、体に掛かる重力が消え、ふわっと宙に浮いたような感覚になった。
あれ?体が軽い・・・?あぁ、そっか、私死んじゃったんだ。でもあんまり痛みも感じなかったし・・・即死だったのかな?
意識が遠くなっていく中、頭の上あたりから声が聞こえた。
「夕華、大丈夫?」
どこかで聞き慣れた声が聞こえる・・・。これは・・・紅ちゃんの声?。もしかして、これが走馬灯って言うやつなのかなぁ・・・?
ゆっくりと目を開き、声のした方を見る。
「あぁ、やっぱり紅ちゃんだぁ~・・・。ってことは、ここは天国???」
「ハァ・・・夕華、寝ぼけてるの?」
ペシッ!っとおでこを軽く叩かれた。
「あいたっ!・・・あ、あれ?紅ちゃんがどうしてここに?いや、それよりも私、確か・・・木から落ちてそれで・・・」
紅ちゃんと会話していく内に、だんだんと、意識がはっきりしてくる。
「うん。落ちてたね。夕華、とりあえず、下をみて見ようか。」
「うん・・・?」
言われた通り、首を傾け下を見る。
「うわっ!うわっ!」
思わず紅ちゃんの首に手を回す。下を覗いてみると、さっきまで登っていた大木よりさらに高い場所にいた。
「はい、夕華、落ち着いて深呼吸~。」
ゆっくり空気を吸い込み、長く吐く。
「えっと・・・な、何で・・・?私、木から落ちてたはずじゃ・・・?」
「うん。落ちてた夕華が見えたから、風のカグラ舞使って飛んできたんだよ。地面ギリギリだったから流石に焦ったね。」
あぁ・・・なるほど。地面に激突する直前、体がふわっと軽くなったのは、紅ちゃんが助けてくれたからだったんだ。
納得すると同時に気持ちが少しずつ落ち着いていく。
「それじゃあ、そろそろ降りようか。」
紅ちゃんは、私を抱きかかえたまま、ゆっくりと降下を始める。
私が卵を戻した巣の辺りまで降りてくると下の方から声が聞こえてくる。
「ゆーーーかーーー!!!」
両手で大振りに手を振り、大声で叫ぶ姿があった。
この声は・・・くーちゃんの声だ!
「くーーーちゃーーーん!卵戻してきたよーーー!!!」
私も負けじと大きな声で手を振りながら返事をする。
地面に着くと、くーちゃんが急いで駆け寄り、私の体に、ぎゅっとしがみ付てきた。
「ゆうかっ!!!大丈夫っ!?」
「うん!ありがと、くーちゃん。私は平気だよ、紅ちゃんが助けてくれたからね!」
紅ちゃんの方を向くと、こくりと頷いてくれた。
「もみ・・・ちゃん???」
くーちゃんが首を傾げながら紅ちゃんの方をじっと見ていた。
「うん、紅ちゃん!このおねーちゃんが助けてくれたんだよ。」
「夕華、もしかして、この子が・・・?」
紅ちゃんがくーちゃんの方を見て、確認するように私の方を見た。
「うん。さっき木から落ちそうになってたのがこの子、くーちゃんって言うんだけど、まだちゃんとした名前は分かってないんだ。」
話しながら、紅ちゃんはくーちゃんの方を、じっと見たままだ。
「う~~~ん、背中に4枚の羽が生えてるし、もしかしてこの子は・・・。」
紅ちゃんが、独り言のように呟き、くーちゃんの方に近づいて来る。
「・・・。」
「・・・???」
紅ちゃんが、くーちゃんの目の前に来ると、もう一度くーちゃんを頭から足までじっくり観察するように全身を見た。そして沈黙すること10秒。気まずい空気が流れ、聞こえてくるのは滝の水しぶきの音だけになった。内心私はかなり焦っていた。
あぁぁ・・・どうしよう。二人とも何も喋らないし、ずっとお互いの事見たままだし!た、確かに紅ちゃんは、あんまり自分から喋る方じゃないから、もしかすると、子供が苦手なのかもしれない・・・。
でもでも、くーちゃんはまだまだ子供だし、人見知りをする子なのかも・・・。
よ~~~っし!こうなったら私が一肌脱いで、二人の間を繋いでみせましょう!そうしましょう!
よし!っと気合を入れて二人の間に立つと、
「パンパカパーン!ではでは、ここで自己紹介タイ・・・。」
「紅・・・。十五夜紅よろしく。」
私の気合の入った自己紹介タイム計画を遮り、初めに声を出したのは、紅ちゃんだった。
「もみ?」
くーちゃんが不思議そうな顔で紅ちゃんの方を見ている。
「そう、もみ。十五夜紅。わたしの名前。」
「もみ・・・もみ・・・もみ。」
くーちゃんが何度も繰り返し、紅ちゃんの名前を繰り返し呼ぶ。
「もみ・・・紅・・・もみ!・・・もみもみ!もみもみ!」
「ううん、違う違う。もみもみじゃなくて、紅。」
紅ちゃんが間違いを指摘しても、くーちゃんは楽しそうに”もみもみ”と連呼する。紅ちゃんは少し困った表情で私の方を見て、助けを求めて来た。
「いいんじゃない?もみもみで。」
「いや・・・でも・・・。変じゃない?」
「大丈夫、変じゃないよ。むしろカワイイんじゃない?」
そうかなぁ、と紅ちゃんが少し考えると、
「分かった、じゃあ”もみもみ”でいいよ。」
渋々納得した形で、もみもみに決定。くーちゃんは楽しそうに、もみもみ!と連呼するのだった。




