ガール・ミーツ・ガール2
「くーちゃん、って言うんだね!苗字は何て言うのかな?」
「みょうじ・・・?わかんない。くーちゃんは、くーちゃんだよ?」
そっかぁ、分かんないかぁ、でも名前だけでも分かっただけ、良しとしよう!
「で、くーちゃんは何処から来たの?」
「あっち!!」
指を差す方向を見ると、滝の上を指差した。
う~~~ん、あっちの方向がアバウト過ぎてよく分からない・・・。滝の上から来たって事かな?
「あっち!って滝の上から来たの???」
「うん!くーちゃんのお家があるのー!」
家の場所が分かっているなら、迷子ってわけじゃなさそうだね。
「そーなんだ!くーちゃんはお家の場所が分かって、えらいねー!」
頭を撫でてやると、エヘヘ~と嬉しそうに笑いながら、背中に生えた羽がパタパタと動く。
やばい!この子凄く・・・かわいい!
おもわず、ぎゅ~~っと抱きしめそうになる衝動を押えて、次の質問へ。
「それで、くーちゃんはここで何をしていたのかな?」
「これ・・・。」
両手を広げて、手に持っていた物を見せた。
「・・・卵?」
何の卵だろう?この大きさからして、鳥の卵っぽいけど・・・。
「うん!!くーちゃんの、おともだちのたまごだよー、ほら見て、あそこー!」
大木の方を向き、さっきまでしがみ付いていた木の枝を指差す。
枝の先を凝視してみる。んんん?アレは何?
「鳥の・・・巣?」
「そーだよー!くーちゃんの、おともだちのおうちー!」
巣の周りをよく見ると、小鳥がチュンチュンと鳴きながら飛び回っていた。
「あの小鳥さんに、巣の卵が落ちちゃったから助けてーって、くーちゃんの所に来たの。それで、くーちゃんが卵を巣に戻そうとしたんだけど・・・。」
やっぱりそうか、さっきの卵は、鳥の卵で間違いなかったんだ。これで話が見えてきたよ。
「あ~、なるほど。それでくーちゃんは卵を巣に戻そうとして、バランスを崩して木から落ちそうになってたんだね。」
「うん・・・。グスッ。」
落ちた時の事を思い出したのかな?、涙目になって、肩が少し振るえている。いけない、せっかく泣き止んでくれたのに、何やってるんだ私は!・・・ハッ、そうだ!
「くーちゃん任せて!私がその卵、巣に戻してくるよ!」
「えっ・・・?」
「大丈夫!こう見えて私は、アカデミー小等部の頃、木登り大会ベスト4位の実力だよ!」
「すっごーーーい!」
くーちゃんが、凄くキラキラした目で見てくれてる!・・・でもどうしよう、木登り大会の参加者が5人だけのただのお遊びだったなんて、今さら言えない・・・。こうなったら・・・やるしかない!
「くーちゃん見てて!おねーちゃんが、あっと言う間に、卵を巣に戻してくるから!!!」
卵を受け取り、胸ポケットの中へしまうと、覚悟を決めて、大木を登って行く。
「ゆーかー!!!ガンバレーーー!」
大木を登って行くにつれて、くーちゃんの声援が、だんだんと遠くなっていく。しばらく登って行くと、上の方から小鳥の鳴き声が聞こえてきた。
よし、あと少し!さっきからずっとくーちゃんが応援してくれてるんだけど、だいぶ声がちっちゃくなってきたなー。ふと下を見てみると、
「うわっ・・・。」
・・・・やばい、なにこれ、私こんなに登ってきたの!?くーちゃんが米粒くらいの大きさに見えるよ・・・。登ることで頭がいっぱいだったから気にしてなかったけど、この高さは・・・正直怖い・・・。
突然の恐怖心に体が震え始める。
こ、怖いな・・・で、でも、ここまで来たし、引き返すわけには行かない!
恐怖心をグッと押さえ込み、木を掴む手に力を込め、振るえを抑える。
そして一歩ずつ木を登って行く。
「よし!到着!」
小鳥の巣がある枝にようやくたどり着く。
あとはこの卵を巣に戻すだけ・・・。
そっと胸ポケットから卵を取り出し、枝をずりずりと這いずりながら、巣がある木の先端へむかう。
「も、もうちょっと~~~・・・。んんん~~~!」
あーーーっもう!あと少しなのにーーー!手が届かない!
あと数センチの所で枝が細くなっており、これ以上先に進むと、枝が折れてしまいそうだ。
ううう~、どうすれば・・・。あっ!そうだ!
さっき紅ちゃんがやっていた事を思い出す。
確か紅ちゃんは、足の周りに風を集めてふわっと浮いていたよね・・・。だったら!
意識を卵の底に集中させる。
風のカグラ舞は、風との一体化するイメージだよね。自分が風の一部となり、風が自分の一部となるだったっけ?
アカデミーで習った事を思い出しながら、舞の動きをする。
「風の精霊さん!この卵を巣に戻して!!」
意識をさらに集中させると、卵の下に風の渦ができる。
よし!これならいける!
そっと卵を巣の方に放り投げる。卵は下から吹いてくる風の力で落下せず、ゆっくりと巣の中に戻っていった。
風のカグラ舞は見事成功。無事に卵を巣に戻せた事に、満足感が溢れてくる。
「やったーーー!くーちゃん!やったよーーー!」
ぎりぎり目視できるくらいのくーちゃんに大声で叫ぶ。
「ゆーーーかーーー、ありがとーーーー!」
ぴょんぴょんと、飛び跳ねながら万歳をしている。
あ~~~、とりあえず任務完了だ~。こんな高い所怖いし、早く降りよう・・・。
ほっと息を漏らし、木にしがみ付き、降りようと体勢をかえようとした時、突然、横から強風が吹きつけ体のバランスを崩し始める。
あっ・・・。
ここまで登ってきた疲労と、卵を巣に戻して、少し緊張が解けてしまったのがまずかった・・・。
木を掴む握力が落ちており、私の体は強風に煽られ、そのまま木からすべり、落下し始める。
思考すること0.2秒。
私の脳内が冷静に判断を下した。
あっ・・・、これ私、死んだ・・・。




