表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生、豊臣秀頼  作者: 森部 かい
第1章 豊臣家を背負う者
PR
5/9

05話 お勉強の時間(後編)

 ――――――


 且元(かつもと)との勉強会が始まって約一刻(いっこく)(2時間)、秀頼(ひでより)のお勉強は後半戦へと突入した。


 「これよりお話いたしまするは、日ノ本(ひのもと)情勢(じょうせい)についてにございます」


 「情勢(じょうせい)?」


 「左様(さよう)にござる。(れい)(もっ)てすれば、豊臣(とよとみ)政権の政治基盤(せいじきばん)経済基盤(けいざいきばん)検地(けんち)身分統制(みぶんとうせい)南蛮教(なんばんきょう)についてなど、他にもあれやこれや…………」


 ここまで2時間、現代で言えば歴史の授業のような話に加えて、且元(かつもと)の難しい言い回しに秀頼(ひでより)の頭は容量を()寸前(すんぜん)であった。


 「うう……助けて重成(しげなり)……」


 できすぎる男、木村重成(きむらしげなり)。彼を心待ちにしている者がここにいる。すると……どうやら願いが通じたようである。

 

 「秀頼(ひでより)様!!」


 数時間ぶりの元気のいい声が廊下(ろうか)から聞こえてきた。


 秀頼(ひでより)は自ら(ふすま)を開き、勢いよく重成(しげなり)に飛びついた。


 「わあーー!!!重成(しげなり)ーーー!!!」


 「ひ、秀頼(ひでより)様!?」


 重成(しげなり)は突然のことに驚くも、部屋の中に且元(かつもと)がいるのを見て、秀頼(ひでより)がまた難しい言葉で困っているのだと(さっ)した。

 

 「秀頼(ひでより)様、(それがし)が来ましたゆえ、もう大丈夫にございます!」


 「うう……ありがとう……」


 こうして心強い味方を得た秀頼(ひでより)は、且元(かつもと)とのお勉強を再開するのであった。


 「秀頼(ひでより)様は太閤殿下(たいこうでんか)如何(いか)にして莫大(ばくだい)(とみ)をその手中(しゅちゅう)に収められたかお分かりにございますか?」


 「うーん、天下統一したから?」


 「ふむ、(いささ)か大まかなれど、間違ってはおりませぬ」


 且元(かつもと)秀頼(ひでより)蔵入地(くらいりち)、いわゆる直轄領(ちょっかつりょう)の話をした。豊臣(とよとみ)政権の経済的な基盤(きばん)は大量の蔵入地(くらいりち)にあり、多数の金山、銀山などの鉱山を支配下に置き、京の伏見(ふしみ)、大坂の(さかい)、貿易と外交の長崎など、重要都市を直轄領(ちょっかつりょう)とし、多くの豪商(ごうしょう)豊臣(とよとみ)政権の統制下(とうせいか)に置く事でその基盤(きばん)を整えた。


 「重成(しげなり)は知ってた?」


 「もちろん(それがし)は存じております!」


 続いて政治基盤についてである。且元(かつもと)重成(しげなり)(たず)ねることにした。


 「()れば重成(しげなり)殿にお(たず)ねいたす。今日(こんにち)豊臣(とよとみ)政権の政治体制はどのようであるか、お分かりですかな?」


 「無論(むろん)にございます!太閤殿下(たいこうでんか)は、豊臣(とよとみ)家において就中(なかんずく)(おぼ)目出度(めでた)き家臣を五奉行(ごぶぎょう)()し、雄渾(ゆうこん)なる大大名(だいだいみょう)五大老(ごたいろう)として政務(せいむ)分掌(ぶんしょう)させ、(まつりごと)合議制(ごうぎせい)にて()(おこな)うものとお決めあそばしました」


 「ふむ、(まこと)一点(いってん)(くも)りも()きお(こた)えかな」


 秀頼(ひでより)には重成(しげなり)が何を言っているのかさっぱりなようだが、「五大老(ごたいろう)」と「五奉行(ごぶぎょう)」のことだけは分かった。


 「わ、われは!五大老(ごたいろう)五奉行(ごぶぎょう)が誰のことだか分かるぞ!」


 「なんと!」


 且元(かつもと)の驚きを他所(よそ)に、秀頼(ひでより)は全力で転生前に期末テストの勉強で覚えたことを思い出していた。


 「ま、まずは……徳川家康(とくがわいえやす)殿じゃ!」


 「おお、素晴(すば)らしき限りなり!!正解にございます!」


 且元(かつもと)が感心しているが、この秀頼(ひでより)という男、五大老(ごたいろう)はまだしも、五奉行(ごぶぎょう)など石田三成(いしだみつなり)以外誰一人(だれひとり)として覚えてなどいないのである。


 「あ、あとは……えっと、まえ、前田(まえだ)……、えーと、……前田(まえだ)殿!」


 「如何(いか)にも!大納言(だいなごん)前田利家(まえだとしいえ)殿も五大老(ごたいろう)のお一人でござる!」


 「う、うむ!そうであろう!『だいなごん』だったな、いい名前である!強そうじゃな!」


 (いな)。名前ではなく、ただの役職名(やくしょくめい)である。


 「あ、あと1人くらい、えっと……えーと……う、上杉(うえすぎ)……上杉輝元(うえすぎてるもと)殿!」


 混ざっている。ぐちゃぐちゃである。


 「あ、あの……秀頼(ひでより)様、()上杉景勝(うえすぎかげかつ)殿と毛利輝元(もうりてるもと)殿のことにござりますか?」


 「え、あー……そ、そうに決まっていよう!う、上杉(うえすぎ)殿と輝元(てるもと)殿……ということだ。まとめて言ったのだ。異論(いろん)(みと)めぬ」


 「な、なるほど……まとめるとは、これまた斬新(ざんしん)なるお考えにございますな!」


 なんとも横暴(おうぼう)主君(しゅくん)である。


 「ほ、他には、えっと……石田三成(いしだみつなり)と、んーと……、そ、そうだ!残りの半分は重成(しげなり)(ゆず)ってやろう!われだけ且元(かつもと)()められていては重成(しげなり)可哀想(かわいそう)だからな!!」

 

 且元(かつもと)重成(しげなり)は目を合わせると、くすっと微笑(ほほえ)んだ。


 「では(はばか)りながら(それがし)が他の方々をお答えいたします!五大老(ごたいろう)はあと御一方(おひとかた)中納言(ちゅうなごん)宇喜多秀家(うきたひでいえ)殿、通称備前宰相(びぜんさいしょう)殿にございます。五奉行(ごぶぎょう)御方々(おんかたがた)としては石田三成(いしだみつなり)殿の他、増田長盛(ましたながもり)殿、長束正家(なつかまさいえ)殿、前田玄以(まえだげんい)殿、浅野長政(あさのながまさ)殿ら五名が奉行職(ぶぎょうしょく)にお()きになって、ご政務(せいむ)()られております!」

 

 「まさしく、秀頼(ひでより)様と重成(しげなり)殿の(もう)された通り、合わせて十人の御方々(おんかたがた)によって(まつりごと)()(おこな)われており(もう)す」


 且元(かつもと)五大老(ごたいろう)五奉行(ごぶぎょう)についてさらに詳しく説明した。


 「五大老(ごたいろう)御方々(おんかたがた)はみな巨大な領地(りょうち)を持ち、その地を(おさ)めておいでです。無論(むろん)皆々(みなみな)豊臣(とよとみ)家に臣従(しんじゅう)せしことは事実なれど、それぞれが大きな実権、発言力を(ゆう)しているのもまた事実。豊臣(とよとみ)家の家臣とはいえ太閤殿下(たいこうでんか)のご威光(いこう)あって、いまだ不都合(ふつごう)(しょう)じていないものの、人の思惑(おもわく)とは(はか)り知れませぬ(ゆえ)何卒(なにとぞ)ご注意()されますようこの()、お心にお()()きくださりませ」


 「な、なるほど」


 「とくに、太閤殿下(たいこうでんか)によって国政(こくせい)を任されておられる内府(ないふ)殿、すなわち徳川(とくがわ)殿は五大老(ごたいろう)の中でも頭一(あたまひと)()きんでております。国力においても、発言力においても内府(ないふ)殿に並ぶものはそうおりませぬ」


 内府(ないふ)殿とは朝廷(ちょうてい)官職(かんしょく)である内大臣(ないだいじん)()尊称(そんしょう)で、天皇(てんのう)に近い場所でその政務(せいむ)補佐(ほさ)する役割を持っていた。しかしこの時代では形式的なものに過ぎず、実力を示すための、名前だけの役職(やくしょく)であった。徳川家康(とくがわいえやす)が一時的に内大臣(ないだいじん)であったために『内府(ないふ)殿』と呼ばれるに(いた)ったのである。


 「さて、政治体制についてのお話はこれで(しま)いにござる。これよりは、検地(けんち)身分統制(みぶんとうせい)南蛮教(なんばんきょう)について……」


 「ねえ重成(しげなり)……」


 「は、はい……」


 「……これ終わるのかな?」


 「……一緒に頑張りましょう」


 ――――――


 且元(かつもと)から秀吉(ひでよし)生涯(しょうがい)についてや、これまでの豊臣(とよとみ)家に関係する出来事、現在置かれている状況や、世の中の情勢(じょうせい)事細(ことこま)かに教えてもらっていると、気づけばもう少しで二刻(にこく)、すなわち4時間が()とうとしていた。


 「……とこのように、太閤殿下(たいこうでんか)伴天連追放令(ばてれんついほうれい)(はっ)し、南蛮教(なんばんきょう)排除(はいじょ)に……」


 「秀頼(ひでより)、迎えに来ましたよ」


 スッと(ふすま)が開き、4時間続けざまに且元(かつもと)の話を聞いてすでに限界を超えていた秀頼(ひでより)のもとに、救いの女神が降臨(こうりん)した。


 「ついてきてね」

 

 そう言って淀殿(よどどの)足早(あしばや)に歩き出してしまった。


 「且元(かつもと)!!いっぱい教えてくれてありがとね!!」


 「ははっ!!勿体(もったい)なきお言葉にございます!」


 こうして且元(かつもと)とのお勉強の時間は終わり、秀頼(ひでより)淀殿(よどどの)重成(しげなり)且元(かつもと)の4人は秀頼(ひでより)の部屋を(あと)にした。

次回、「太閤豊臣秀吉」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ