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1-71 ステージの作成と(物理的に)振り回されるゴン

 そしてキャシーはともちゃんの運転するバンで護衛の銀二をつけて家に向かい、残った俺と怪力自慢のピーコ、マルクス、ついでにゴンが残ってちまちまと駐車場の車をどかしていた。


 駐車場の車は鍵がなければ動かせない。無論レッカー車なんて便利なものもないしあっても操作方法も知らない。


 難しい事を考えずにシンプルに力技が一番効率がいいため、俺は彼女たちに指示を出しつつ時折マップに表示されるゾンビを見つけては金属バット片手に連中のところに向かって仕留めに行く。そして戻る、その繰り返しだった。


「えっさ、ほいさ」

「ちょい右、ちょい右」

「意外といけるものだな……!」


 俺は指示を出すだけで彼女たちは健気に一生懸命運んでいる。まるで引っこ抜かれて戦って食べられるどこぞの星の小さな生命体のようでちょっと可愛らしくもあり申しわけなさもある。


 力持ちの二人でもさすがに1トンを超えるような車を運ぶのはしんどそうだがスムーズに作業は進んでいる。力仕事は男の仕事と言われているが人外コンビ相手では俺が手伝っても役に立たなさそうだ。そういうのは昔ながらの考えとはいえやはり肩身が狭い気もしなくはない。


「さて、とりあえず動かせる車は全部動かしたか?」


 俺は駐車場を見渡す。車は駐車場の金網を補強するように内側に配置し綺麗に隙間なく配置して鋼鉄の囲いが出来た。もちろんちゃんと大型のトラックやバスが通れる程度の幅のある入り口は作っておいたしこれで問題ないだろう。


「こっちも出来たよー。うん、我ながら完璧だね」

「お、そっちも出来たか」


 ゴンの存在をすっかり失念していたが駐車場の入り口を見ると彼女が作った門があった。


 といっても駐車場の金網に隣のホームセンターで調達した可動式の蛇腹の金属の門を取り付けただけだが雑魚ゾンビを防ぐには十分な耐久力だろう。あまり頑丈にしすぎていざという時に拠点に入れなくてゾンビに噛まれる、なんて事態は好ましくないし。


「ふー、疲れた」


 ピーコはんー、と大きく背伸びをして脱力する。マルクスの表情からは疲れているようには見えないが規格外の身体能力の彼女たちにとってこれはどのくらいの労力なのだろうか。


「お疲れさん、ピーコ、マルクス、ついでにゴン」

「うんー」

「そっちもゾンビ退治ご苦労だった」

「あたしはついでかい」

「冗談だ、お前もお疲れさん」


 俺は彼女たちにねぎらいの言葉をかける。とりあえず自分たちに与えられた仕事は終わった。あとはキャシーたちの帰りを待つだけだが時間が余ってしまった。


 このまま店内に戻ってもいいがとりあえず気になった事があったので話を振ってみる。


「ところでお前たちはマックスでどのくらいの重さまで持てるんだ? 今後のためにも知っておきたいんだが」

「見てのとおり二人がかりでなら車程度は持ち上げる事は出来る。だが軽々と振り回すとなると別だな」


 確かに動きを見ていても結構大変そうだった。だが通行に邪魔な車があればどかすだけなら可能だろう。今後もこの怪力に頼る機会があるかもしれない。


「自販機とかオートバイ程度なら多分振り回せるよ」

「マジで? すげえゴリラだね」


 その説明にゴンは目を丸くしていったが、女性への称賛の言葉としては好ましくない表現にピーコはちょっとムッとしていた。


 しかしそれらものを振り回せるならゾンビとの戦いに使えそうだ。そのあたりの物を拾って力技で圧倒的な重量を利用した大ダメージを与える攻撃はシンプルだが非常に有効だろう。


「結構筋肉ついてるの気にしてるんだよー。筋トレのし過ぎで」

「へー、じゃあちょっと触るね」

「ピィ!?」


 ゴンはピーコの許諾を得ず彼女の太ももをふにふにと触り、思わずピーコは奇妙な悲鳴を上げる。


「うわあすげぇ、女子高生の固さじゃないね。膝枕とか出来んの? あ、腹筋もすげえ固い! 鉄板でも仕込んでるの!?」

「してないから!」

「のお!?」


 興奮して体を触りまくるゴンに怒ったピーコは、彼女の胴体に手を回し農家が米俵を担ぐように持ち上げた。車を持ち上げれるくらいだしそれくらいは余裕だろう。


 ピーコは少し恥ずかしそうに俺のほうをチラチラとみてくる……ゴンを担いだまま。


「ね、ねぇ、トオル君。私は本当にただの隠れマッチョだから外から見れば柔らかそうだからね? そ、その、見てみる?」


 筋トレ好きとは言えやはり年頃の女の子らしい悩みはあるらしい。俺は軽く笑みを浮かべて言った。


「別に俺は筋肉質でも気にしないぞ。健康的でいいんじゃないか?」


 だが、そのフォローのあとマルクスが余計な一言を言った。


「お前の想い人はその程度で嫌ったりせんよ」

「ピィーピッ!?」


 ピーコは再び独特な叫び声をあげ、持っていたゴンの足首を掴んで振り回しマルクスを殴りつけた。


「んぉッ!?」

「ぎゃうッ!?」


 その攻撃で二人ともノックダウンし、地面に転がったゴンが恨めしそうな顔をしてこう言った。


「ねぇ、ピーちゃん。初対面の時もそうだったけどピーちゃんの中であたしは武器扱いなの? あたしそこまで威力はないからね? 人を振り回して武器にしていいのは虎ファンだけだからね?」

「虎ファンでも人を武器にしたら駄目だからな」

「あ、ご、ごめん、つい」


 ゴンは何事もなかったかのようにむくりと身体を持ち起こし俺のツッコミのあとピーコは謝罪する。結構な衝撃のはずだが彼女はピンピンしていた。


 そして車の走行音がして俺はそちらに視線を向ける。どうやらキャシーたちが戻ってきたらしい。俺はすぐに門を開け車は俺たちの整備した駐車場に入ってくる。


「おー、いい感じに整備してるっすねぇ。けどなんでマルちゃん死んでるんすか?」

「いろいろあってな」

「まあいいっすけど。あ、荷物おろすの手伝ってください。ついでにゲームとかいろいろ持って帰ったんで」


 俺がピーコをちらりと見ると彼女はえへへ、と困ったように笑う。そして先ほどの事には一切触れず荷物の搬出作業を始めた。


「いや、心配してくれないのか?」


 予想どおりほぼ無傷のマルクスは声をかけられるのを待っていたらしいが、誰にも声をかけられず、しょんぼりとした顔で身体を持ち起こして砂を払うと同じく作業を手伝うのだった。

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