つたない作戦
自分がお金の管理もしない子だったとわ。
頭の中がお花畑だった自覚はあるけどびっくりです。
夜、私は部屋で前世の自分の数少ない恋愛経験から、婚約者奪還作戦を考えていた。
作戦はシンプル。
『押してだめなら引いてごらん?』作戦!
まだ、押してもないんだけどね。
熱しやすく冷めやすかった前世は、1年で恋人に飽きてしまうような人間だった。
前世のダイジェストの中の私は、恋が冷めてしまった後に、相手からどれだけ尽くされてもなんとも思わないし、むしろ鬱陶しく感じていた。
そして、相手に冷め始めると相手が追いかけ始めてくる事が大体だった。
後者に関しては何とも言えないけど、
今、私がジーク様に色々アピールしたところでウザがられるだけだ、ということはたぶん真実だ。
駆け引きに関して本当に大事な時は少なくとも、半年とか1年単位のスパンで見なくてはいけない。
…と前世の知識が言っている。
私は、当て馬役のあわれなピエロなので、恋愛戦闘力は0の頭でっかちなのだけど、前世の頼りない知識の他にすがれるものもないので、信じるのみ。
信じる者は救われる。 アーメン。
…なので、私がするべき1番大切なことは。
『連絡を絶つ』こと。
すなわち我慢。
今こうしてる間もジーク様の気持ちが自分から離れていっているんじゃないかって不安だし、純粋に会いたすぎてつらいけど。我慢!
次に、ジーク様と会っても『そっけなく』すること。
…自分の精神衛生上、ジーク様のことは忘れよう。どこか遠い国に留学に行ったことにしよう。
私は早速、例のリボンと今までジーク様から頂いた手紙やらプレゼントやらの全てを、大切に箱に入れてクローゼットの奥深くにしまった。
なんとなーく、この箱から重い執念や情念のようなもの(素は自分のなんだろうけど)が放たれる気がして、お守り代わりに持っていた水晶を気休めに、ことり、と上に置いておく。
どうか、私の無念が成仏しますように。
ついでに、恋愛運が向上しますように。
なーむー。
でだ。本題の恋愛のテクニックについて。
前世の私の知っていたテクニック……
【うわめづかい・ほめる・服の裾ツンツン】
以上。
おいぃ! 頼りない! しょぼい!
大丈夫なの?!私、二十半ばくらいまで生きてたよね?なんで無いの?ねぇ!!前世のわたしぃ!
日本人ならば、遅くとも小学校高学年には会得してるようなこと(やるかやらないかは別)しかないなんて!!
ここにきて前世の知識を頼ることにかなりの不安を覚える。
まぁ、賽は投げられた。
いや、投げてしまったのでこのまま続行させるけども!
前世の私は「メール職人の純子」と呼ばれる友人に頼り切りだったのだ。
あいつは、メール(L●NE)のやり取りだけで狙った男を確実に落としていた。
仲間うちからは「ハンター」とか「チェリー狩りの純子」とか畏敬の念を込めて呼ばれていた。
…まぁ、やれるところからやるしかないよね。
『押してだめなら引いてごらん?』作戦と並行して、『自分磨き』作戦もしなくては。
『自分磨き』…これは、外見もだし、中身も必要だよね。
外見は、会った時に変わったな…って思ってもらえるように、ちょっと大人っぽくしていこうと思ってる。今日はそれを踏まえてお買い物行ったしね。
中身…中身って何すればいいんだろう。特に誰かをいじめたりしていたわけでも、極端にわがままだったわけでもない。
目標もって頑張ればいいの?でも、1番見えにくいよね。
む~…せっかく、学生なんだし、勉強頑張るということで。
もっと、前世知識を思い出さなきゃな…知識無双とかできたらいいのだけど…。うむむ。