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説得。【エスパルマ編】

今回が妄想の山場です。エスパルマ編苦手な方は本当にごめんなさい、4月28日からは普通に戻りますので、飛ばしてください。

 最高級のビスクドールよりも綺麗なアシュレイと2人で優雅に、ゆっくりと地下の部屋へと続く扉・・・その前で見張りをしている男の人に近づいていって、のほほんとした感じで声をかける。


「こんばんは。」


 私が言い終わるやいなや、バキって音がして次の瞬間には男の人が倒れていた。アシュレイ…すごいな。


「ねぇ、こればれたら、私たち敵認定されちゃうんじゃない?」

「ははっ。話せば無事に通してもらえるなんてお花畑なこと考えていたわけじゃないよね?」


 …か、かんがえてました。


 確かに、昨日アシュレイが言ってた通り、美少女2人なら油断を誘えるよね。あ、今自分のことをちゃっかり美少女って言っちゃった。てへ。


  地下へと進んで奥の扉の前で立ち止まる。中を覗くと熱弁をふるい、語り合う商人の方たちがいた。


「もう我慢ならねえ!!あいつら、ついに俺たちに交易船からの仕入れを禁止してきやがった!!俺たちがこの国の経済を支えてやっているにも関わらず!!」

「これは決行を速めたほうがいいんじゃないか?」

「まて、まだもう少し武器が欲しい。」

「もう、サンドワープへの締め付けが厳しくてこれ以上の仕入れは不可能だぞ!!!ならば、向こうの準備が整う前に仕掛けるべきだろう!!」


 この中に入るのか~。うん、無謀!!今すぐ帰りたい。けど、自分で言い出したことだし、アシュレイもいるからダイジョウブ。

 女は度胸と愛嬌よ!

 アシュレイに頷き扉を開ける。


「ごきげんよう。」


 空気がシーンとして、一斉にこちらに視線が来る。緊張をおくびも出さず、挨拶をする。大勢の前はサロンで鍛えてるんだ!


「私は、エレトリア王国、エデン伯爵の娘アメリア・エデンです。あなた方を我々の領地にリクルートしに来ました。」


 ゆったりと微笑む。敵意はアリマセンヨー!


「あなた方の多くの才能と資質を崇拝する私は

 これから始まる戦争に心から深く悲しみを覚える。」


 最初の一言だけは考えたよ。ちょっとかっこいいかと思って!!厨二心がくすぐられて!


 あと・・・ど、どうしよう。

 まずは褒めてからの共感か!

 前のライナスの時の成功体験にしがみつく!


*************** 

(視点:一般(商人))


「ごきげんよう。」


 突然、場の空気にあまりにもふさわしくない、カナリアよりも愛らしい澄んだ声が聞こえた。

 声のした方を見るとその声に相応しい宝飾品のような美少女達がいた。

 あまりの美しさに思わず見惚れていると、1人の少女がゆったりと微笑む。


「私は、エレトリア王国、エデン伯爵の娘アメリア・エデンです。あなた方を我々の領地にリクルートしに来ました。」


 は!?貴族の娘が何でここに?しかも、隣国?!どうして?どうやってここを知った!?は?りくるーと???


 混乱から誰一人立ち直る前に、再び少女が宝石のように美しい声色で、まるで神からの使者のように言葉を紡ぐ。


「あなた方の多くの才能と資質を崇拝する私は

 これから始まる戦争に心から深く悲しみを覚える。」


 少女が少し思案する。その姿は未来を憂う穢れなき乙女のように見えた。


「あなた方は既に事業で成功していますね。

それは、あなた方に何が何でもやり遂げてやるという気力、危機に瀕しても折れない胆力、時代の潮目を見る先見性があるからです。

それは、形の無い、だけど、かけがえのない人類の財産であり、宝です。あなた方はこの西大陸の人類の財産であり、宝です。


この国はそんなあなた方に弾圧と圧政という、この世の理不尽を強いている。 許されることではないと思います。」


 穢れを払うような声で紡がれる、おしみない称賛と理解に、くすぐったいような気分になる。とりあえず、敵ではなさそうだと安心する。少女2人、それも貴族…下手なことをするよりかは喋るだけ喋らせて脅して帰って貰おう。


「それに対し武力をもって対抗しようという気持ちも分かります。あなた方が勇敢にも戦争に挑めば、輝かしい勝利あるいは敗北が語られるでしょう。


 きっとその話の中には、

 優秀な商人だった男たちの血の滲むような苦労がある。

 その話の中には、

 家族が彼らの無事の帰還を待ちわび、

 勝利への喝采を送ろうと備えていることも描かれている。


 しかしその全ては敗れ去る。

 全ては打ち砕かれる。

 全ては水の泡と化す。」


 士気を折るような事を言っているのに、神託のように告げられて、ただ息を飲むことしかできない。


「優秀な商人である、あなた方に問います。


 あなた方にとって1番大切なものは何ですか?

 1番重要なものは何ですか?


 あなた方が独立戦争をしてまで守りたかったものは何ですか?

 それは、この地でなければならない事ですか?

 故郷は…大切です。

 あなた方の心の拠り所となるでしょう。

 追われる人の辛さなど、私が推し量ることすらおこがましく思います。

 けれど、かけるものは命です。

 辛いのも悔しいのも悲しいのも嬉しいのも命があるから。」


少女の愛らしい顔に張り付いた信念が、神々しいくらい美しく少女を魅せていた。


「優秀な商人であるあなた方はこの国の経済の心臓部です。あなた方もご自身の価値をよく分かっておいででしょう。


 でも、だからこそ、

 不都合な真実から目を背けていませんか?


 どこかでこの国が本気で自分達を攻めてくることは

 無いと考えてはいませんか?


 どこかで自分達の本気を見せることで

 改宗を諦めて貰えると思っているのではないですか?

 心のどこかで自分達の価値を王が認めていると思っていませんか?


 全ては希望的観測です。」


 ――確かに最後まで戦い抜くとは皆で語っていたが、心のどこかで最終決戦まではいかずに済むと思っていた。自分達を殺してしまえば、この国の経済は大打撃をうける。そんな事をする筈がないと。



「本当は自分達が一番気付いているのではないですか?

 王の本質を。


 あえて見ないようにしているのではないですか?

 王は自分達の価値を理解していないという事を

 自分達を不埒な異教徒としか思っていないという事実を。


 あえて目を逸らしているのではないですか?」


 言われて、思う。点と点がつながったかのように。

 常識的に考えれば、王ともあろう人が、しかも執務は優秀だと評判の王が自分たちの価値を理解していないとは考えられない。だけど・・・国は…王は…税金もこちらが勝手に計算して出したものを信じて、チェックはしていない。…明らかに異常だ。


――お金に関して無頓着。


ぞくり、とする。交易船からの収益をおもいっきり横取りしている奴がいるのに、現王は一度も動いていない。泳がしているだけかと思っていたが・・まさか本当に・・・お金に全く興味がないのか?だとすると・・。


――アストン教では金儲けが悪とされている。


 全身が泡立つのが分かった。血の気が引いていく。『最終決戦』の言葉が急に重みを増し、冷や水を浴びさせられたように恐怖が体を覆う。


「優秀な商人たちに、今一度問います。

 本当にこの地で流れる血が

 これからの闘いに相応しいものなのか

 胸に手を当てて考えて欲しい。


 もし、違うと思う者がいるならば私たちが手を差し伸べます。出来る限り支援します。その為に私は来ました。


 新しい地ではやらなくてはならい事も沢山あります。

 やり直さなくてはならない事も沢山あります。

 でも、幸せの種も沢山あるでしょう。


 私たちも誠意を尽くすつもりです。

 今じゃなくてもいい、

 どうか逃げ道もあるのだと、

 逃げてもいいのだと、

 逃げ場所もあるのだと

 心に留めておいて欲しい。」


 少女の言葉が、まるで、死の恐怖の闇に差し込んだ一筋の光のように感じた。

 再び体に血が通い熱が戻ってくるのを感じる。


 自分も仲間も声を発する者はいなかった。

 目の前の美しい少女から発せられる熱量のせいでもあり、痛い所を突かれたせいでもあった。彼女の言う通り、王は俺たちを単なる異教徒とみているだろう。…自分達は甘く見ていた。彼女の言う通りだ。

 

 もう一人の美しい少女が近くにいる者に紙を配り、残りを入り口付近に置くのが見えた。


「そこには、こちらから掲示できる条件などが記載してあります。細かい点については交渉しましょう。その紙には私たちの名はあえて記載していません。私の名前はアメリア・エデン。もし、領地に来ることが有れば、私の名前を出しなさい。」


 アメリア・エデン。覚えた。俺は死にたくない。俺はこんなところで終わりたくない。


「私達は朝早くにこの街をでます。ここでの事は一切口外しません。では、失礼します。」


 危険を顧みず、こんなところに単身で乗り込んでくるような、お嬢さんの育つ領地なら…自分たちの価値をちゃんと理解してくれるだろう。悪いようにはされないはずだ。なにより、どうせなら自分の価値を分かってくれる者の元で俺はやりたい。それに可愛ければ尚更。


 おもわず、口元が笑ってしまう。


********************

(視点回帰:アメリア)


 優雅に部屋を出て扉を閉めると、できる限りの早歩きで移動する。


 こ、怖い!めっちゃ士気折っちゃったけど、怒った人追いかけてきたらどうしよう!!怖くてついアシュレイの服を掴んでしまう。

 アシュレイがこちらを見て、溜息をついて手を差し出してくれた。


「あ、えりー…私できたかなぁ?」


 アシュレイがくすりと笑う。…いつもの笑みに安心する。


「さぁね。」

「ちょ!!1人でも反応してくれるといいんだけど。」

「難しいかもね。」

「そうよね、小娘だものね。」

「まぁ、よくやったよ。…歌えばよかったのに。」

「・・・馬鹿にしてるでしょ?」

「まぁ、言いたいことだけ言って、何事もなく無事に戻ってこれただけでも僥倖だよ。」

「そうだね。」


二人で地上まで出ていく。


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