(ジークハルト視点)
(7月8日 月曜日:99日目)
アメリアの事が気になって用もないのに、第1学年の教室の前を通ってしまう。
ふと、はりだされた期末試験結果が目に入る。
アメリアの名前を探す…無い。
まさかと思って上の方に名前を追う
・・・まだ無い
・・・更に上を見ていく、
・・・あった…。7位。
呆然とした。足に根が生えたようにその場に立ち尽くす。
自分の知っているアメリアとかけ離れていて。自分が知っていたと…いつからか無意識のうちに自分のもののように思っていたアメリアが、完全に違う人物として現れたようだった。そもそも、無意識だったとはいえ自分のものだなんて・・・我ながら呆れてしまう。
自分が彼女の成長を知ろうとしなかっただけだろうか?どこが、頼りないというのだろうか。勉強も、サロンも、頑張っている。結果だって出している。少女が大人に変わっていく、今だけの儚い可憐さが言いようもなく彼女を美しく見せている。
こんな事になるまで気づけないなんて。
・・・失いかけてやっと気づくなんて。
自分の馬鹿さ加減に辟易した。自分で自分を殴り付けたやりたい。
生徒会室に行くとメアリーが笑顔で駆け寄ってくる。…最近になって冷静に見えるようになってきた。メアリーは結局成長していない。クラスの他の女子とも打ち解けられず、生徒会のメンバーとずっと一緒にいるから試験結果も散々だ。
それで、どうして平民の女の子の立場を上げる事ができるだろうな。志は崇高だったけど、口だけだったのだろう…現に彼女が具体的にアイデアを出したり考えたりしているところを見た事がない。
本当に俺は馬鹿だった。落ち着いてみればすぐに分かる事なのに…。メアリーに冷めてきてようやく気づくなんて。
腕に絡もうとする彼女をさり気なく避けると、潤んだ瞳で見られる。
庇護欲がそそられ、可愛く見えていたその顔も今となっては何となく不愉快にしか思えない。
「ど…して…?ジーク!!・・私やっと気付いたの、本当に好きだったのはジークだったんだって・・。」
メアリーが可憐に笑む。
「そうか…俺もやっと自分の気持ちに気付いたよ。」
「嬉しい!!じゃ「悪いけど、俺が大事なのはアメリアだ。」…え?」
「ごめん、これからは今までのように話しかけてこないで欲しい。彼女のことを大切にしたいから。」
「なんで?!妹にしか見えないんでしょう?」
――思っていた事は事実だけど、メアリーにそんな事言った記憶は無いんだが。
「俺の婚約者は彼女だ。君には生徒会の皆がいるだろう?クラスメイトとして必要最低限は話す。だけど、それ以外で話しかけてこないで欲しい。」
…我ながら最低だな。でも、アメリアともう一度やり直せるなら…その可能性を上げられるなら、他の奴らに嫌われたってどうでもいい。
「さようなら。」
「うそだよね?…ジーク」
メアリーが涙を流すけど、その場を冷たく去る。
メアリーへの想いは殿下達への嫉妬があったりしたが、概ねドキドキしたり楽しかったり明るいイメージのものが多かった。
アメリアへの今の想いは甘く切なく狂おしいものだ。1つ言えるのはアメリアへの想いの方が大きく重い。
「アメリア…」
名前すらも愛しい。許してくれるだろうか?こんな愚かな俺を。いや、許してくれなくてもいい。逃したくは無い。今度こそ大切にすると神に誓う。もう、2度と離さないと。
だから、もう一度チャンスが欲しい。




