↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/56

(ジークハルト視点)

(ジークハルト視点)

 俺には3つ下の婚約者がいる。アメリアはとても可愛らしく、全身全霊で俺の事を好きでいてくれる彼女のことをとても大切に思っていた。


 学園に入り多くの令嬢と接するようになると、自分の婚約者が少し頼りなさすぎると思うようになってしまった。自分がしっかりすればいいだけだ、とは思うけど物足りなさを感じてしまう時があった。


 そんなときメアリーと出会った。同じ学年に編入してきた彼女が貴族のルールをあまり知らないせいで、クラスで衝突を繰り返していた為、生徒会の一員として仲裁に入るうちに仲良くなった。

 いつも前向きで、平民の女の子達のためになりたい、と語る彼女はキラキラしていて支えたいと思うようになり、気づけば好きになっていった。


 どこで知り合ったのか彼女は殿下とも仲良くなり、生徒会に出入りするようになっていた。そして、生徒会の皆も彼女にどんどん惹かれていった。徐々にライバルが増えるにつれ、自分も彼女を取られまいと益々夢中になっていった。


 あれだけ仲の良かった生徒会も、今はメアリーがいないとギスギスする。ライバルだから当然と言えば当然か。俺も、自分にはそこそこ自信はあるが、生徒会のメンバーが相手となると不安に思うこともある。きっと、殿下は卒業前のタイミングでメアリーに告白するだろう。メアリーは誰を選ぶのだろうか。


 4月にアメリアが入学してきた。先延ばしにしていた、今の不誠実な関係を終わらせようと、入学式の後に廊下で待つ。俺を見つけると全身で喜びを表しながら寄ってきた。その姿に、久しぶりに自己肯定感を得た。それと同時に、本人に自分が言おうと思っていたことを伝えにくくなってしまった。やはり、泣くのだろう。とたんに、恥ずかしい話、逃げたくなってしまった。やっぱり手紙で知らせようと。


「あぁ…うん。君も変わりなさそうでよかったよ。じゃ、僕は忙しいからこれで。」

「あの…わたくし何か…ジーク様のお気に障るようなことを…して、しまいましたでしょうか?」


 そのとき、一瞬卑怯な考えが思い浮かんだ。そうだ、俺のことを嫌ってもらってアメリアから婚約破棄を切り出してくれないか?と。


「エデン嬢、そういうわけじゃないんだけど…。僕自身の問題…いや…ごめんね。率直に言うと僕はもう君に興味がないんだ。」


 彼女はやはり、泣きださんばかりになって去っていった。

 傷つけてしまったことに対する罪悪感と、冷静になってあの場で言うことでは無かったと反省し、翌日、謝りに言った。想像していたよりも話かけてこられず、正直ほっとした。少し話した内容は意味不明だったけど。



 学園ですれ違っても話しかけてこられないことに安堵して、婚約破棄したいと伝えなくては・・と思いながらもズルズルと先延ばしにしていた。次に話しかけてこられたら言おうと自分には言い訳していた。


***********************

 

 中間試験の成績発表の後の1年生は、毎年大なり小なり貴族と統一試験組との間でいざこざが起きるので、生徒会で見回りをすることになっていた。


 案の定、第1学年のクラスからもめている声が聞こえた。クラスに入ろうとすると、鈴の音のような声が聞こえてきた。


 まさかと思い、教室の中を伺うとアメリアだった。しっかりと相手を立てながらもクラスのために言葉を紡ぐ姿に衝撃を受けた。いつもふわふわとして頼りなかったあの、アメリアが!?入学してから変わったのか?いや、俺が連絡を取っていない2年間の間に?


「…りあ。」


 思わず声が漏れる。アメリアが振り向き、アクアマリンの瞳と目があう。その瞳は凪いでいた。


「マグノリア様…生徒会のお仕事でしょうか?」


「そうですか。お勤めご苦労様です。では、私はこれで。」


 それだけを無感情に告げると、くるり、と背をむけた。サラサラと彼女のストレートの金色の髪が流れる。今までにない声と表情と・・・その対応に少し茫然として、我に返り、教室から離れる。


 なんだ?どうしてそんなに俺に興味が無い?怒るわけでも、喜ぶわけでもない。寂しがるでも突き放すわけでも無い。単純に興味が無くなっている目。



 微かなわだかまりのような感情が心の奥底に残る。


*************************


 その後、遠くからアメリアを見かけることが何度かあったが、いつもパッと花が咲いたような可憐な笑顔をしていた。特に連休明け以降は内から輝くような明るい笑顔だった。大きな瞳、口紅を注さなくても桃色の唇、柔らかな頬…穏やかで優しく艶やかな笑顔に思わず見惚れた。


 前はタイミングが悪かったのかもしれないと思い、廊下ですれ違ったので、声をかけると前回と全く同じ反応だった。


 胸の内がグラグラした。急に立つ瀬がなくなったような気分だ。


 いや、婚約を白紙にしようと思っていたし、自分が望んでいたとおりになった。



 ・・・自分が望んだとおりになった、のに、なんだか面白くないような、急に惜しいような、、、わけの分からない気持ちが渦巻く。


 いや、俺はメアリーが好きなんだし、これでいい・・・。



その後もなんとなく後味が悪くて、手紙を書いてしまった。

・・自分で自分がよくわからない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。