ほうれんそう。
テストの返却も終わり、学園は水曜から日曜までお休みだ。
きっと、ホームシックになる子のための連休なんだろうな~。そんなわけで、私も久しぶりに実家に帰省だ。ただし、領地は少し遠いので王都のタウンハウスにだけどね。
「お帰りなさいませお嬢様。」
「ただいま戻りましたわ。」
馬車が家に着くと、執事のルイスがエスコートしてくれ、後ろから侍女のニーナがついてくる。
「皆さま首を長くしてお待ちですよ。」
「え?お父様もお兄様も?お仕事は?」
「お嬢様が戻られるのにそんなもの行けるか!と。」
「まぁ、嬉しいわ。」
とクスクス表面上は笑ってるが内心は苦笑いものである。私の両親は超過保護で私に激甘なのだ。これくらい当然だ。お兄様には厳しいのに何故だ。
「「「リア!!!しばらく会わないうちに大きくなって。」」」
父・母・兄が駆け寄って抱きしめてくる。どうどう、人は1ヶ月ちょいでそんなに変わらな・・・変わったわ。
「ただいま戻りました。」
「リア?雰囲気がだいぶ落ち着きましたね?」
するどいですお母さま。貴方の娘はだいぶやさぐれましたよー!学園でジーク様とヒロインが一緒にいるのを見るたびレベルアップしました。最初の頃は泣いちゃったりしたけど、もう強いもんですよ。
「学園で様々な刺激をうけまして。」
ほんとに。強すぎる刺激を受けまくりました。
「こんなところもなんだし、早速みんなでお昼にしよう!リア、昼食の際に学園の話をたくさん聞かせてくれ。」
「はいお父様。久しぶりの家族団らんですね、急いで着替えてまいりますわ。」
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私のお父様は、サムソン・エデン。亜麻色の髪に空色の瞳の思慮深そうなナイスミドルだ。お母様はマリア・エデン。金髪に琥珀色の瞳のふわふわした雰囲気の美魔女、綺麗と可愛いの中間位で私とも姉妹に見える。もはや、人外なのではないだろうか。若さの秘訣を後で聞かなきゃ。
お兄様は私と8歳違いで亜麻色の髪に琥珀色の瞳の優男、フランシス・エデン。ご令嬢たちから非常におモテになっている優しくて優秀な自慢のお兄様だ。
ご飯を食べながらも、学園の話題は尽きない。濃すぎる生活を送っておりましたからね。
学園での成績を伝えると、家族はもちろん部屋にいた執事のルイスすら驚きのあまり、しばし固まっていた。私の妄想か現実か判断できず迷っているのだろう。私は助けを求め、ニーナを見る。ニーナは頷き、私の代わりにこたえてくれる。
「成績は本当のことです。お嬢様は学園からお帰りになると、ほとんどのお時間を授業の予習と復習に当てられ、人が変わったように頑張っています。」
「・・・本当に?いや、そんなことが。」
茫然とする父。
「ニーナが言うなら本当のことでしょう。人は変わることができるのです。」
母よ、悟ったような顔でどこぞの宗教のようなことを言わないでくれ。
「そうか、頑張ったなアメリア。」
「お兄様っ!!!」
お兄様に抱き着く。私が聞きたかったのはその言葉なの!!褒められると伸びるタイプなんだ。もっと褒めて。いや、褒め讃えて!!
その後しばらく家族に褒めまくってもらった。えへへ。頑張ってよかった。
次にサロンの話をするとさっきの勉強の時と全く同じことになったので割愛する。
「そういえば、ジークハルト君はどうだ?学園では話をしているのか?」
私は思わず固まる。本当のことを言うべきか否か。きっと、この過保護さんたちは本当のことを話せば即、婚約を白紙にするだろう。だからといって、相手から急に婚約破棄されて実家に迷惑をかけるなんて絶対にしたくない。報告連絡相談は社会人の基本なのだ。
「まず、最初に言います。私に1年間の猶予を下さい。」
「「何かあったのか?」」
お父様とお兄様が体を乗り出す。
「私を信じて、今年の12月末まで見守って下さいませんか?お願いします。12月末まで一切何もしないと約束してください。」
毅然と強く言う。
沈黙が訪れる。私は顔を上げ強く両親とお兄様を見据える。
お父様が息を吐き「分かった、約束するから話してくれ。」と言ってくれた。
私は嫣然と笑む。
「言質頂きましたからね、もし、お父様や、お母様、お兄様が私に内緒で勝手な事したら、二度とお父様とは口をききませんから。」
「リア!!!なんてことを言うんだ!!!私が悪かった。家名に誓うからそんなことは言わないでくれ!!!!」
泣きだしそうなくらい悲痛な声で父が叫ぶ。おおう。怒られるかもってくらい高飛車に言ったのに、必死過ぎるよお父様。
「ありがとう、パパ、信じてるからね。」
にっこり、とアシュレイスマイルをする。
「リア、変わったな。」
お兄様が頬を引きつらせている。
「あら、女は強かじゃないと生きていけないもの、ね~?リア。」
「ふふ、そのとおりですわお母様。」
「僕の天使が…。」
お兄様、女に夢を抱いてはいけませんわよ?
「それで、何があったの?リア?」
「はい、私が学園に入学したところジーク様は同級生のご令嬢に懸想していましたしかし私が12月末までにジーク様のお気持ちを取り戻すつもりですのでどうぞご心配なさらないでください。」
途中、口を挿みそうになった男2人を一息に言い切ることで黙らせる。
「先ほど家名をかけて約束してくださいましたね?」
目を全く笑わせることなく、微笑みかける。
「しかし…」
「お父様は、私のことが信じられないのですか?お父様とお母様の子供である私がジーク様のお心を取り戻せないとでも?」
少し悲しげに笑む。今日の私は主演女優賞ものだ。
「もし、不安があるようでしたら、ジーク様奪還作戦のレポートを提出しますが。」
「「りあ・・・。」」
「ふふっ。大丈夫よリア。お母様の威信にかけてこの2人には何もさせません。それより、よく話してくれましたね。」
「お母様…大好きです。・・・家にだけは絶対に迷惑をかけたくなかったので。」
「「リア!!!」」
「ニーナからの報告で貴女は変わったと聞いていましたが本当にしっかりしましたね。」
「お母様っ!!!」
「「リアー!!!」」
「「うるさい。」」
男2人はさっきから私の名前しか喋っていないではないか!
その後、お母様と2人だけでお茶会をすることになった。




