女子会(恋愛とは、理不尽の巣窟である。人間的に優れているからといって選ばれるわけではない。むしろ、マンボウのような女が勝つことすらある。)
(14日目;日曜日)
今日も午前中は勉強で、3時からはエリーが部屋に遊びに来てくれることになっている。
3時からの女子会を楽しみに勉強を頑張る。前世は学生の時、この科目は受験に使わないから、と適当に手を抜いたりしていたけど、社会人になってから無駄なことなど何一つなかったことに気付いた。だから全科目全力投球っ!ただし、詩、お前は除く。お前は敵だ。カリカリ。
3時になるとエリーが、アシュレイのお勧めのお店のチョコレートズコットをお土産に部屋に来てくれた。
ニーナがお茶を淹れてくれる。
「ここのお店、きっとバターまでこだわってるのね。スポンジが最高に美味しいっ」
「そうね、ふんわりと優しい甘さでつい食べ過ぎてしまうわ。なんて罪な子」
「それに、なんでこんなにアーモンドやピスタチオが香ばしいのかしら。甘さと香ばしさが、口のなかでふくよかに広がる。しあわせ〜」
ふふふ。と笑いあう。
しあわせに浸っていると、エリーがあのね、と切り出す。
「――ねぇ、とても言い辛いのだけど、私はジークハルト様のことを諦めたほうがいいと思うわ」
エリーがためらいがちに、でも真剣な目で私を見つめる。
婚約者と別れた方がいいなんて、そう簡単に言えることじゃない…。
きっと「そんなこと言わないで」とか言われて嫌われてしまうかも、とか葛藤を抱えながら言ってくれてるんだろうな。――それでも、私のことを思って言ってくれる。
なんて友達思いのいい子なんだエリー。
エリー、大好きだよ。
「ありがとう。心配してくれて。――そうだね、私も男性なんて他にもたくさんいるし、もっと、素敵な男性だっていると思う。頭では分かってるんだけど……なんでか、まだすごく好きなんだよね」
力なく笑うと、エリーのアイスブルーの瞳に波紋が広がる。
「――頭ではね、分かってるの、酷い人だって」
たくさん傷ついて、たくさん泣いた。
「入学式の後、私以外の誰かを待ってるみたいだったじゃない?あれも今となっては……本当は私を待っていたんじゃないか、って考えてるの。私に冷たくして、私から婚約を白紙にされるのをきっと待ってるのよ。――嫌わられる勇気がないから。酷い自分になりたくないから」
「――――」
「案外別れって切り出しにくいものだし、すごーくエネルギーもいるからね。それに、ヒロイ…メアリーが相手を1人に絞ってないのもあるかもね。ジーク様は決定打がないから、私を振れないっていう。ほんと、最低。………でも、好き」
「そ、う…なの。そんなに……理解…してるのね。――でもそれならもっと最低じゃない!私は、もっとリアのことを大事にしてくれる人がいい。あんなくそビッチになびいちゃうようなジークハルト様なんて、もう信用できないし、大事なリアを…任せ、られないよ…」
エリーは長い睫毛を伏せて自分の胸の辺りの服を握りしめて、下唇を噛み締めた。自分のことのように憤ってくれるエリーに胸が熱くなる。
「そうだ!!アシュレイなんてどう?彼、すごくカッコよくなるわよ!頭もいいし、出世間違いなしよ!!リアのことも大切にしてくれそう」
「そんなに私の事思ってくれてありがと。大好きだよ、エリー。でも、でもね…」
前世のダイジェストを思い出す。
「――恋愛に関しては、必ずしも人間として良い人が好かれるわけじゃない。必ずしも綺麗だったり、センスが良い人が好かれるわけじゃない。むしろ、同性から超嫌われてて、そんなに可愛くなくて、センスも無いような地味な子が選ばれたりする、この世の理不尽の巣窟のようなものなの。――だから、ジーク様の事もある意味仕方ない事なのよ」
前世で一度だけした本当の恋は、一目惚れから始まり、両思いになり、最後は…友達のフリして相談に乗ってくれていた、マンボーに良く似た可愛くもなくお洒落でもない女子に取られて終わった。
その時に学んだのだ、恋愛において見た目と人望は関係ない、最終的に(好きな人を)勝ち取ったものが勝利者であり正義なのだ。いくら、多くの外野が「あいつは見る目がない」とか言ったところで、そんなものはその恋愛においてはビタ一文として有利に働いたりしない。自分の慰めになるかならないかだ。
いや、寧ろ私の方がいい女なのにどうして、とか思って失恋に浸ってしまう分、負債と呼んでも過言ではない。
「仕方がない、ってリア。都合のいい女になるつもり?」
「ううん、それはない」
私はきっぱり言い放つ。
そして嫣然と笑んでみせる。
「私、入学2日目の日にリボンをジーク様に見せつけたでしょ?ジーク様が約束を思い出して、髪飾りをくれるまでは許すつもりは無いし、みじめったらしくすがったりなんか絶対にしないわ」
エリーが目を見開く。
「りあ、?」
今度は幼気な少女が夢を語るように、にこり、と微笑む。
「それにね、先週その期限も作ったの。今度の卒業パーティーまで、って。それまでに間に合わなかったら、ジーク様にはザマァをしようと思ってるの。ふふ」
「ざ、ざまぁ?」
「そう、ジーク様に、私を手放したことを、骨の髄まで後悔させるの。1人じゃ無理だろうからエリー、ルド、アシュレイにも協力してもらってね!」
私は茶目っ気たっぷりにウィンクしてみせる。
…まぁ、建設的な考えでは無いけど、やられっぱなしは嫌なんだ。
「ふ、あはははっ。リア、本当に変わったね。そういうことなら、私も次の卒業パーティーまでは黙ってるよ」
エリーも茶目っ気たっぷりにウィンクした。
評価・ブックマーク本当にありがとうございます!




