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初サロンの日。

(13日目:土曜日)


 今週は、月曜から金曜までは割と平穏に過ぎ去った。


 平穏に・・・って言っても、選択科目の法学の授業の後には必ず『メアリー襲来』事件が起き、木曜の詩の授業の終わりには、また歌わされ(ちなみにテーマは「絶望」だった)、時々ヒロインとジーク様の集団を見かけては精神をえぐられていたけど。



 先週と比べれば、穏やかに感じてしまう。

 アシュレイとルドとはすっかり仲良くなったし、同学年の皆も、なんだか私にかなり同情してくれているらしく仲良くなれた。

 メアリーが仮想敵国のようになっている気がする……共通の敵ができると仲良くなるっていうね。


 だからなのか、同学年で今日の私たちのサロンに招待した人たちは皆すごく喜んでくれた。


 ちなみに私達のサロンは、今が四月で陽気もいいこともあって、学園の庭の一画にある四阿で開くことにした。桜の近くは有力なサロンに抑えられてしまっていたのでここにしたけれど、ここはラナンキュラスやマーガレットが色とりどりに咲き誇り目に楽しい。周りが春の色で色鮮やかなのでテーブルの上はあえて派手に飾らずサクラソウを使った水面アレンジメントにした。


 どきどきするけど、あわれなピエロ、もとい客寄せパンダとして今日は頑張ろう!


 今回は、同学年の有力な領地のご子息・ご令嬢たちと、エリーの兄のヴィンス様とそのご友人達なので、のほほんと始まった。


 話の流れで、私が詩の授業で披露した2曲を歌わされる。

 歌い終わると、ヴィンスとその友人が寄ってきた。


「アメリア、すごいじゃないか!!なんだか魅了されたよ。アメリアが作詞作曲なのか?」

「ヴィンス様、ありがとうございます。えぇ、まぁ」


 頭の中に『著作権』の3文字が思い浮かび、冷や汗が出る。いや、異世界だからダイジョウブ。


「雰囲気も落ち着いたみたいだし、成長したんだな」

「お兄様?なんです?その上から目線は?」


 エリーが目が全く笑っていないイイ笑顔でいうとヴィンス様の顔が青くなり友人たちが笑う。

 その後、少し歓談していると、


「ジークハルトも馬鹿だよなぁ。こんな可愛い婚約者がいるのに。俺もこいつらも、すごいドキドキしたし、エデン嬢さえ良ければ、みんなすぐにでも付き合いたいくらいなんだぜ?」

「「「おい!」」」

「本当のことだろ?」

「まぁ、そりゃぁな。正直、できたら自分のものにしたいけど」

「え、ええ?」


 正面からなんてこと言ってくるんだ!!

 お世辞とわかってても恥ずかしくて真っ赤になってしまう。

 先輩方も照れてきたのか皆んな顔が赤くなっていく。

 な、なんなんだ。はたから見たら顔の赤い変な集団だ。いっそ揶揄ってくれたら乗っかるのに…っ!


 エリーがこほん、と咳をすると、先輩方が再起動し始めた。


「確かに、メアリー様も綺麗だけどさ、トラブルメーカーというか。女子たちから蛇蝎のごとく嫌われていて、僕らから上の学年は空気がすごく悪いんだよ」

「エカテリーナ様自体は美人だし優秀で素敵な方だけど、信奉してる令嬢達がなぁ…ネチネチとした嫌味を言ったりしてな」

「見てると女性恐怖症になりそうだよ。正直、生まれる学年を間違えたと思ったね」

「違いない」


 あはははと、彼らは笑うけど、これ、私笑ってもダイジョウブ?


「ふふ。そういえば、僕たち是非先輩方にお聞きしたいことがあったんですよ。秋に剣術大会があると聞いていたのですが…」


 アシュレイ!

 助かったよ。ありがとう~!

 その後も、アシュレイは銀座のママのごとく、聞き上手に話し上手で、まんべんなく皆が話せるように話題を提供し、為になる情報を引き出していた。


「あの……私達もアシュレイ様とお呼びしてもいいですか?」

「ごめんね、ルドから『俺以外にアシュレイと呼ばせるなよ』てキツく言われてるからね」


 と頬を染めながら、ピンクの形のいい口元に人差し指を当て意味ありげに微笑みながら答えると、女の子達がきゃぁぁ――!!と色めき立つ。


「アイツ、とっても嫉妬深いんだよ」


 何人かの女子達が鼻を抑えてしゃがみ込み、ルドは顔を真っ青にして口をパクパクさせている。


 ・・・ルド、ご愁傷さま。


「ぷっ。あのご令嬢たち絶対にルドがそっちの人だと思ったわね」

「ふ。きっと一瞬にして絡みまで想像したに違いないわね」


 ほんとアシュレイは容赦ないな。


「いや、楽しかったし、非常に有意義な時間を過ごせたよ。ありがとう。よかったら是非また誘ってほしい。他の友人も連れてきたいから」


 招待した人たちが、みんな笑顔で帰っていってくれる。

 よかったあ。一応成功したらしい。



 その後の反省会でルドがアシュレイに「アシュレイ、お前なぁ…っ!」と文句を言っていたけど、アシュレイは優雅にお茶を口に含みながら視線だけチラリとルドに向けて、わずかに目を細める。


「エリーは上級生とのパイプになってくれたし、リアは客寄せとして機能してくれた。僕も少しは客寄せとして機能できてると思う?それで?」


 にっこりと笑うアシュレイにルドはバッサリと袈裟斬りされた。


「ナンデモゴザイマセン」


「だよね?よかったね。昨今は、()()()()()が好きな女子が多々いるみたいで」


「おま……俺が結婚できなかったら恨むからな」


 ルドが、盛大なため息とともに鳶色の短く切りそろえた頭をがしがし掻く。


「いやだなあ。それはルドの器量の問題でしょ?僕は全く関係ないよ」


「おま、おまえぇぇ!!」


 涼し気なアシュレイに振り回されるルドが何だかおかしくて、エリーとクスクスと笑ってしまう。本当いいメンバーに恵まれてよかった。


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