第12話 朝はくる
暖かくて気持ちがいい。
誰かが私の頭を撫でている。
かと思えば髪の毛を梳かれてさらさらとくすぐったい。
「ふふっ」
少女は微睡みから目を覚ます。
「セリエム」
「くすぐったいわ?ダヴィーラ」
まだ少し寝ぼけているのかダヴィーラと呼ばれた黒い髪の男の手に少女はすり寄る。
「夢を見たの」
ダヴィーラはどんな夢だったかと聞く。
少女は絹糸のように細く滑らかな自分の髪で口元を隠して。
「あなたを初めて見た日の夢よ?」
と言った。
するとダヴィーラもセリエムの深く黒い瞳を見つめながら。
「私も同じ夢を見た。けど、もっとずっと長い夢だった」
と言った。
セリエムはダヴィーラの視線からそっと目をそらす。
ダヴィーラに見つめられるとなんだ恥ずかしくなってしまうからだ。
「ところでダヴィーラ?いつまで私の髪の毛を触っているつもり?」
セリエムの髪の毛を触ることをやめようとしない手を見る。
「すまない」
少しも済まなそうではない様子のダヴィーラはおはようと挨拶をして髪に唇を落とす。
「ダヴィーラ!」
反省の色がまるでない。別に嫌ではないのだがなんだか恥ずかしくなる。
「いちごみたいだ。食べてしまいたくなる」
ダヴィーラは微笑みを浮かべ、朝食の準備をしに部屋を後にした。
部屋には恥ずかしさと喜びに身悶えるセリエムがいるのみであった。