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三十日目
いつものように散歩している途中、
ふと、とあるものを見つけ、立ち止まる。
「・・・」
「どうした?」
と死神が振り返りかけたが、そそくさと進行方向に向きなおし歩き出す。
「ねぇねぇ」
「・・・今忙しい」
「そんなわけないじゃーん。ねぇってば~」
「どうせお前の言いたいことは想像つく」
「じゃあちょっと話に付き合ってよ~」
浮けるようになったので飛びつく。
「いや…」
「どっちみち担当神でしょ?ずっと逃げ回ってる気?まだまだ日数あるよ?まぁ延々と鬼ごっこするのはいいし、体力的にも問題は無いだろうけどそんなことやりたいの?だったらいっそかくれんぼにしようか?私隠れる方得意だよ」
「尻がつまっていたのにか?」
「いやあれは、そう木が悪い!あんなところにあんな配置しているせいだよ!猫だって困ってたじゃん!」
「お前が通せなくしていたからだがな」
「ふっ、アレはどう行動するか試していたのだよ!って本題に入っていい?」
死神はやれやれといった風に諦める。
「さっきさ~町中でウェディングドレスが目に入ったんだけどさ」
「無理だぞ?」
「まだ何にも言ってないじゃーん!」
「死んだときの持ち物しか着れぬ」
「いやぁまぁそれも無きにしもあらずなんだけど、そもそも相手がいないし。
・・・でも結婚も一度くらいはしてみたかったなーって」
「そもそも大体の人間は一度では?」
「まぁまぁ細かいこと気にしない気にしない」
「細かいか…?」
「生きてるときにできなかったからさ、せめて死後にって」
「確かに冥婚なるものがあるらしいが、実際に効力も疑わしい上に、
死んだ側の身となっては偶然に期待する他ないのではないだろうか」
「いやいや、そんな難しいことを言いたいわけじゃなくってさ」
「??」
「えっと、そのぅ…」
「らしくない。いつものようにはっきり言ったらどうだ?」
「えーでも、中々言いづらいし…。
あー、遊びとかおままごとみたいな感じでいいから結婚ごっこしてくんないかなーって」
「・・・?自分か?」
「だって他にいないんだもん。他の霊は喋れないしさ!選択肢がないんだよそもそも!」
「だからといって一度きりの婚姻を早まるのはどうかしている」
「もう今しかないじゃん!ね?遊びでいいから、お願いお願い!」
「遊びでするものではないだろう」
「じゃあ本気でもいいよ?…それも困るでしょ?」
死神がため息をついた。
「我は人ではないぞ」
「知ってるよ?」
「神だぞ」
「神と人でも結婚した例もあるでしょ?」
「あれは創作だ」
「じゃあ第一号だね、やったーおめでとうありがとう!」
「(ためいきをつく)」
「まぁ珍獣に絡まれたと思って諦めてさ。いやむしろ珍獣を飼ったつもりで」
「その前提がおかしい」
「ほんと一生のお願い!あっ一生終わっちゃったから四十九日に一度のお願い!」
「一度だったか?
・・・そもそも刀だぞ」
「いいよ」
「見ての通り性格も暗い」
「いいよ」
「社も穴が開いている」
「いいよ」
「ドレスも着物も着れんぞ」
「いいよ」
「気の利いたことも何もできん」
「いいよ」
「喋りもうまくない」
「いいよ、私がいっぱい喋る」
「婚姻したとて、何も変わらん」
「いいよ、分かっている」
「分かった」
「いいの?」
「お前が望んだのだろう。手を」
死神が手の平を上に向け差し出す。
「??」
言われるがままに死神に手を重ねる。
「わっ」
例の死神さんの刀が奉納されていた社に移動した。
「中へ」
「お、お邪魔しまーす」
「そこに座れ」
「は、はい」
なんかよくわからない祝詞でも唱えるのだろうか…ドキドキ。目を瞑った方が良いかな?
シュルシュル
・・・!?衣擦れの音?なに?もしやそういうことなのか!?
「あっいや、まさか、そういう?ちょっ、覚悟がっ準備がっ心のッ」
頭を触られまさぐられる。
「????」
「いいぞ」
目を開ける。
刀が床に置いてある。そして触られた部分を何とか見る。
…ああ。
「刀の紐を私の髪に着けてくれたんだね…」
「そうだ。死する時に持っていたモノならばもしや…と思ってな」
「ありがとう、…嬉しい」
「何もできんがな」
「いや、めっちゃ気が利いてるじゃん!」
背中をバンバン叩く。
「残り少しの間だけれど、またよろしく」
「そうだな」
「こういう真面目なシーン、笑いたくなるの私だけ?」
「全てぶち壊しだな」
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丘の上で寝そべり、二人で、星を見ている
「こうしてずっと朝まで夜空を見ていられるなんて贅沢だねぇ」
「そうだな」
「うん」
「大丈夫か?」
「何が?」
「寝てしまってないか?」
「起きてるよ!」
「こないだは寝たじゃないか」
「アレはそういう空間なの!」
「なんだ、じゃあやっぱりナレーションがあっても結局は寝るんじゃないか」
「うぐぐ、バレたか…」
「夜空ではもっと変化に乏しい」
「でも広いよ」
「そうだな、広いな」
「たまに流れ星も見れる」
「そうだな」
「あっ人工衛星!」
「どれだ?」
「ほら、アレ!」
「あれがそうか」
「あれも…いやアレは飛行機か…」
「じっくり見たことはなかったが、最近は空も騒がしいな」
「そうかもねぇ」
手を伸ばし、相手の手を握った。




