第1話 妹の友人という方の席次
三十七家のうち、同じ卓に着けてはならない組み合わせは十一ある。
そのうち三つは水利の訴訟が理由で、二つは二十年前に壊れた縁談による。残りの六つは、はっきりした理由を誰も説明できない。説明できないものほど厄介で、ドーレ家の当主は今も、ヴェルニーの名を耳にしただけで席を立つ。
茶会の客は十二人までにするものと決まっている。それ以上招くと、卓の端と端で話が二つに割れて、どちらの端も気まずくなる。わたくしは椅子の数を数え、名前を一つずつ当てはめていった。
紙は使わない。書いてしまうと、その通りにしなければならなくなる。当日の朝に一人が風邪をひけば、十一人の並びは全部組み直しになる。
手帳は机の端に置いてある。表紙は少し反っていて、中はほとんど白い。三年前に旦那様から贈られたもので、贈られた日に一度だけ日付を書いた。それきりになっている。
「奥様、水曜の分はいかがなさいますか」
ノエルが銀の盆を持って戸口に立っていた。
「水曜は晩餐です。十四人になりますから、腕は先に決めておきます」
食堂へ移る前に、紳士を一人ずつ捕まえて、どの婦人を伴うかを小声で伝えて回らなければならない。夫婦は組ませない。それが決まりだから、わたくしは毎回、自分ではない誰かの腕に旦那様を預ける。
「ドーレ様とヴェルニー様は離してください。去年の秋のことがありますから」
「かしこまりました」
「それと、菓子は杏を外してください。ロジエ様の奥様が召し上がりません」
ノエルは聞き返さない。去年の秋に何があったのかも、なぜ杏なのかも尋ねない。この屋敷で、わたくしが何も書き留めないことに気づいているのは、この娘だけだと思う。
盆の上に、まだ名札が積んである。まっさらな紙に、これから名前を書いていく。誰の名がどこに置かれるかで、その夜の序列が全部決まってしまう。書き損じは許されない。
「名札は昼過ぎに書きます。それまで乾いた場所に置いておいてください」
ノエルが下がった後、わたくしは十一人の並びをもう一度頭の中で通した。三度通して、二度目と同じであれば、それで決まりにしている。三度目で変わることは、年に二度ほどある。
玄関広間の卓に、カードが五枚溜まっていた。
婦人が訪ねてくるときは、自分のカードを一枚と、夫のカードを二枚置いていく。家の主人に一枚、女主人に一枚。扉を開けて受け取るのは使用人で、主人が自分で扉を開けることはない。
一枚ずつ検めた。ブランシャール家は先週の晩餐の返礼だから、三日のうちに返さなければならない。ロジエ家は紹介を受けた後の最初の訪問で、これは四日。ソレル家のカードは右上の角が折ってあった。使用人に持たせたのではなく、本人が扉の前まで来たという印になる。折ってあるものは、折っていないものより急ぐ。
ル・グラン家のカードだけ、しばらく手に持っていた。ル・グラン家は喪が明けていない。この家に祝いの品を贈ってはならないという決まりごとが、今この王都には二つある。二つとも、わたくしの頭の中にしかない。
ソレル家の先代が亡くなったのは去年の十一月で、その報せを受けた朝、この卓には角を左下に折ったカードが十九枚並んだ。数えたのはわたくしである。誰がその日のうちに来て、誰が三日遅れたかを、今も家ごとに言える。
順番を組み替えた。返礼の期限が近い順に並べ直すと、明日は午後の三時から六時のあいだに三軒を回ることになる。刻限の外に訪ねるのは無礼にあたるし、昼餐の前に行くのは無礼の中でも最も重い。
匣を開けて、明日持ち出す分を選んだ。婦人のカードは紳士のものより大きく、紙も厚い。匣に入れて持ち歩くと、他人の家の名前の枚数だけ、手首の内側に重さが来る。
去年の春はこの匣が閉まらなくなって、留め金を一度直させた。直してからも、朝に一度、蓋を押さえないと閉まらない。
朝の間に入ると、旦那様が新聞を膝に置いたまま椅子に沈んでいた。
「リディア。来月の僕の誕生日だが」
「はい」
「贈り物の手配を頼めるかな」
窓の外で庭師が鋏を使っていた。わたくしは扉を後ろ手に閉めてから、卓のそばまで歩いた。
「どちらへ、何をお贈りいたしますか」
「去年と同じでいい」
去年、どこへ何を贈るかを決めたのはわたくしで、旦那様は品物を見ていない。誕生日に届いた祝いの品への返礼を、その日のうちに手配したのも毎年わたくしである。自分の誕生日の贈り物を、自分で選んで、自分で礼を書く。そういう年が十度続いた。
「かしこまりました。ル・グラン家は外します」
「なぜ」
「喪中でいらっしゃいます」
「そうか」
旦那様は新聞をめくった。紙の音が二度。
「君がいると助かる。僕は君の夫として、そういうところを大事に思っているよ」
わたくしは窓の方を見ていた。庭師の鋏がまた鳴る。切り落とされた枝が芝の上に落ちて、そのまま拾われずに残った。
「それと、茶会に一人加えてくれ。ドゥブレ子爵家の娘だ」
「ドゥブレ様の」
「三女だったかな。妹の友人でね」
義妹が王都を離れて二年になる。二年のあいだ、義妹の友人が屋敷を訪ねてきたことは一度もない。わたくしは椅子の数を頭の中で数え直した。
「お席はどちらに置きましょうか」
旦那様は新聞から目を上げなかった。
「君は覚えているだろう。任せるよ」
覚えている。ドゥブレ子爵家は三年前にヴェルニー家と揉めていて、去年ようやく和解の形だけは整った。同じ卓に着けても、話しかける順番さえ間違えなければ持つ。年齢からいって末席になるけれど、末席は主人の目に入りにくい席でもある。入りにくい席と、入りやすい席を、わたくしは十二の椅子について全部言える。
「承知いたしました」
朝の間を出て、扉を閉めた。廊下の絨毯は先月替えたばかりで、まだ足音を吸わない。
昼過ぎに、名札を書いた。
十二枚。一枚に一つずつ、ペン先を紙に置いて、乾くまで待ってから重ねていく。ヴェルニーの綴りにはeが二つ入る。ブランシャールのlは一つ。ソレルは去年から当主が代わっているから、卓に置くのは息子の方の名になる。ここを間違えると、亡くなった当主を卓に招いたことになってしまう。
十一枚目まで書いて、手を止めた。
インク壺の中身が減っていた。十二枚目だけ色が違うのは体裁がよくないので、壺を傾けて、残りをペン先に取った。
十二枚目の紙を引き寄せる。ドゥブレ、と書いた。子爵家の三女の名を、旦那様は言わなかった。わたくしも尋ねない。
名札を乾かすあいだ、卓の上に十二枚が並んでいた。並べ替えれば、そのまま明日の卓になる。
十二枚を重ねて、ノエルに渡した。
「明日の朝、この順で置いてください」
「かしこまりました」
ノエルは受け取ってから、一番上の名札を見た。
「お客様は、家名だけでよろしいのですか」
「それで結構です」
ノエルは名札を胸に抱えて部屋を出た。廊下の途中で足音が一度止まり、それからまた歩き出す。
夕方、明日の三軒分のカードを匣に入れた。蓋を押さえると、留め金が鳴って閉まった。
その夜、寝室の机で明後日の返礼の期限を数えた。ブランシャール、ロジエ、ソレル。三軒。ル・グラン家の喪が明けるのは、数えて八月の末になる。
手帳は開かなかった。開いても、そこには三年前の日付が一つあるだけである。
わたくしは、その名を紙の上に置いた。頭の中には置かなかった。




