3回裏 大阪タイタンズの攻撃
3回裏 大阪タイタンズの攻撃
この回、タイタンズは 8番から。
スコアは 1-0。
たった1点差。
まだまだ試合は分からない。
だからこそ、タイタンズはここで“もう一点”を取りにいく。
8番 村瀬涼太
カウントは 2-1。
御堂悠真の4球目。
内角寄りの球を、村瀬は強く振り抜かない。
あえて勢いを殺して、転がす。
打球はショートの深いところへ。
高瀬蓮が追いつく。
捕球。
だが、体勢が深い。
一塁へ送る――
間に合わない。
内野安打。
ノーアウト一塁。
9番 星野慎一
ここは迷わない。
初球からバントの構え。
御堂も分かっている。
それでも、星野はきっちり決めた。
三塁線へ転がす。
送りバント成功。
ワンアウト二塁。
1番 梶原和樹
カウントは 1-2。
追い込まれた。
だが、梶原は簡単には終わらない。
4球目、ファウル。
5球目、見送ってボール。
そして 6球目。
内角。
厳しい球だった。
だが梶原は体を開かず、しっかり振り切る。
打球は鋭く三塁線へ。
三塁手が飛びつく。
届かない。
ボールはレフト線へ転がる。
二塁走者・村瀬が三塁を蹴る。
ホームへ。
タイムリーツーベースヒット。
2-0。
タイタンズベンチが大きく沸く。
2番 宮本さくら
さくらは初球から振っていく。
鋭い当たり。
だが、三塁正面。
サードライナー。
ツーアウト二塁。
3番 朝倉美羽
美羽は大きく振り抜いた。
打球はレフトへ高く上がる。
かなり深い。
レフトが下がる。
下がる。
フェンス手前。
捕球。
レフトフライ。
スリーアウト、チェンジ。
3回終了
タイタンズはこの回、
村瀬の内野安打
星野の送りバント
梶原のタイムリーツーベース
で、1点追加。
スコアは 2-0。
岸和田の御堂からすれば、またしても“崩された”というより、
小さな隙を確実に突かれた形だった。
3回裏終了後 タイタンズベンチ
タイタンズが 2-0 とリード。
だが、ベンチの空気は浮かれていない。
真央と絵里は、すでに次のデータ整理に入っていた。
真央の分析
真央がタブレットを見ながら言う。
「出ました」
川原監督が近づく。
「何が見えた?」
真央が投球チャートを表示する。
御堂悠真 投球分析
1回
内角平均球速
127.8キロ
外角平均球速
126.9キロ
2回
内角平均球速
126.1キロ
外角平均球速
126.7キロ
3回
内角平均球速
124.8キロ
外角平均球速
126.5キロ
絵里が補足する。
「特に右打者への内角球です」
「球威が少し落ちています」
真央が続ける。
「御堂投手、疲れると腕が少し下がります」
「その結果、内角が甘く入りやすい」
藤原航がうなずく。
「梶原のタイムリーもその球やな」
「本来ならファウルになる球が、少し真ん中寄りやった」
川原監督がニヤリとする。
「つまり」
「内角を捨てる必要はない」
真央が答える。
「むしろ積極的に狙えます」
さらに。
絵里が別の画面を表示する。
「もう一つあります」
岸和田キャッスルズ
2番手投手
名前
南野拓真
右投げ右打ち
平均球速
132~135キロ
最高138キロ
特徴
御堂より球速が速い
球威はある
三振が取れる
しかし――
制球データ
四球率
やや高め
コース別失投率
内角高め 8%
外角高め 10%
外角低め 11%
そして。
真央が赤く表示された部分を指差す。
内角低め
失投率
21%
ベンチが少しざわつく。
絵里が言う。
「ここだけ極端に高いです」
「狙ったところへ投げ切れてません」
真央も続ける。
「特に右打者へのインロー」
「ボールになるか」
「甘く入るか」
極端になっています」
正則が画面を見る。
「なるほど」
「もし御堂が降りたら」
「そこ勝負やな」
亜由美も身を乗り出す。
「インローを引っ張れってこと?」
真央がうなずく。
「そう」
「ただし中途半端に待つと振り遅れます」
藤原航が笑う。
「狙い球一個やな」
川原監督が最後にまとめる。
「よし」
「御堂は内角」
「南野はインロー」
「頭に入れとけ」
その頃。
岸和田ブルペン。
南野拓真が力強い球を投げ込んでいた。
ミットが激しく鳴る。
球速だけなら御堂以上。
だが。
タイタンズのスコアラー陣は、すでにその弱点を見抜いていた。
真央が小さくつぶやく。
「……出てきたら、勝負になります」
そして試合は4回へ。
投手戦の中で、
少しずつ情報戦の差が表れ始めていた。




