大阪府大会――準々決勝。
大阪府大会――準々決勝。
ベスト4進出をかけた戦い。
タイタンズの次の相手は、
岸和田キャッスルズ
打撃力と分析力を兼ね備えた強豪だった。
ただ勢いで振ってくるチームではない。
相手投手の癖、配球、フォーム、リリース位置。
徹底的に研究してくるタイプ。
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試合前日。
岸和田キャッスルズのミーティングルーム。
壁には、タイタンズ戦の映像が映し出されていた。
正則の投球。
智雄の超スローボール。
星野の速球。
何度も繰り返し再生される。
岸和田の監督が言う。
「タイタンズは、普通に打ちに行ったら崩される」
選手たちは真剣な表情で画面を見る。
「特に、外角を待つとやられる」
映像には、岬や松原の打者たちが外角低めで泳がされるシーン。
さらに、インコースを意識しすぎて差し込まれる映像も流れる。
監督がホワイトボードに赤線を書く。
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『狙いはインハイ』
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「正則も智雄も、最後は内角で詰まらせに来る」
「だったら逆や」
「最初からインハイを狙う」
選手たちがうなずく。
岸和田の4番が言う。
「差し込まれる前に振り切るってことですね」
「そうや」
監督はさらに続ける。
「ただし、腰が引けたら終わりや」
「タイタンズの球は重い」
「だから、踏み込め」
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さらにデータ班が資料を配る。
タイタンズ投手分析
河内正則
* 決め球:内角高め速球
* カウント有利時:外低め増加
* 二巡目以降:内外の幅を広げる傾向
池永智雄
* 超スローボール後の速球注意
* プレート三塁側使用率高
* 外角見せ球からインハイあり
星野慎一
* ストレート主体
* 初球ストライク率高
* 高めで押し込む傾向
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岸和田の監督が最後に言う。
「タイタンズは強い」
「でも、崩せない相手ちゃう」
「向こうが配球で勝負するなら、こっちは準備で勝つ」
空気が引き締まる。
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その頃。
タイタンズ側でも、真央と絵里が次戦データを整理していた。
真央がタブレットを見ながら言う。
「……岸和田、かなり分析してきます」
絵里もうなずく。
「特にインコース狙い、増えると思います」
その話を聞いた正則が、静かに笑う。
「なるほどな」
智雄もニヤッとする。
「じゃあ逆に、そこ利用できるな」
星野が腕を組む。
「読み合いやな」
川原監督はベンチの壁にもたれながら言った。
「野球はな」
「最後は、“分かってても打てるか”や」
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夏の大会は、ここからさらにレベルが上がる。
勢いだけでは勝てない。
分析。
駆け引き。
心理戦。
そして――
負けられない理由。
準々決勝、開幕まであと一日。




