表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

ジョンの昔話


「すまないが、今はこの書類を見たいんだ」

 ジョンが眉毛を下げ、申し訳なさそうな顔で言った。エヴァはその顔にきゅんとしつつ、彼の手をとった。


「私のことは気にしないでください、ジョン。これはあなたとキングレイにとって、とても大事なことだってわかりますもの」


「ありがとう、エヴァ。それでは、また夕食の時に」


 ジョンはエヴァとつないでいだ手をギュッと握り離す。そして彼は早足で肖像の間から出て行った。


 その後ろ姿を見送ったエヴァは、これからどうしようかと悩んだ。ジョンのことをもっと知りたい。そう思ったエヴァは図書室に行くことに決めた。

 図書室では、クリスの叔父であり司書であるサム・コールウェイが働いていた。彼は小柄で、老齢ゆえの白髪を綺麗に整えた、品の良い老人だった。

「おや、どうかされましたか?」


「すみません、私、もっとキングレイ一族について知りたいのですが、一族の歴史を詳しく書いてある本はありますか?」


 サムはすまなさそうな顔で謝罪した。


「お嬢様、申し訳ありませんが、そのような御本はございません」


 エヴァは肩を落として、がっかりした。サムはその姿を哀れに思い、別の案を提案した。


「私が知っていることでよければ、お話できますよ。我々、コールウェイは昔から一族でキングレイ家にお仕えしていますから」


「ぜひ教えてください! この家の歴史のこと……特にジョンのことを」


 エヴァは瞳を煌めかせた。サムはその煌きに思わず笑ってしまった。そして椅子を持ってくると、エヴァに座るように促した。


「では、ジョン様のお小さい頃のお話をしましょう」


 輝くような笑顔のエヴァは頷き、話を聞いた。


「ジョン様は、それはもうやんちゃでした。お兄様のチャールズ様とあっちで騒ぎを起こしたと思ったら、こっちで騒ぎを起こしている、そんな男の子でした。兄弟仲がとてもよかったんですよ。そして王都にある名門の学校を卒業されてから、軍人におなりになられました」


 軍? エヴァはジョンの子供の頃を想像しつつ、話を聞いていた。


「軍では結構優秀であられたようで、この本邸にお帰りになられることは少なっていきました。三年前にあった、チャールズ様の結婚式にお帰りになられたぐらいで、もう全く……」


 軍は結構大変だものね、帰れなくても無理はないわ……軍? エヴァは自分の休暇がどうなっているのか、急に気になりだした。


「お帰りにならない代わりに、ジョン様は筆まめで、手紙をよく送ってくださっていました」


 サムは昔に思いを馳せながら、ジョンの昔を話す。


「ジョン様はお兄様が大好きだったんですね」


 サムは頷いた。そして手紙と共に贈られていた本を指さした。


「ここにある最近の本の大半は、ジョン様が王都から贈ってくださったものなんですよ」


 エヴァは、サムが差している本棚を見た。話題になったものや、まだ見たことがないものがあり、興味が湧くものだった。


「たくさんありますね。ぜひあとで読ませてください」


「ええ、お部屋にお持ちくださってもよろしいですよ。どんな本がお好きですか?」


 エヴァとサムは、本について様々なことを話した。そしてエヴァはミュルディスについて書かれている本を見つけた。


「ああ、それはミュルディスの方について書かれた本ですね。チャールズ様がよく書かれていると評価していましたよ」


 エヴァは本を自室で読むことにし、サムに別れを告げ、部屋に帰った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ