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助けてくれた証 前篇

あれから、雪奈が泣き終わるまでどれぐらいの時間が掛かったのかそれはわからなかった。ただ相当心の内に溜めていたのかわからないが数十分間以上はずっと泣いていたのは覚えている。ただ、その時は不思議とその泣いていた時だけは何故かわからないが時間のことはどうでもいいとそう思えていた。


目の前にいる雪奈を慰めることができれば、一緒に傍にいてあげられれば良い、陽太は只々そう思っていた。親に怒られようが、捜索願いを出されようが、そんなことはどうでも良い、少しでも目の前で泣いている一人の人間の力になってあげられれば、助けることができればそれだけで良い。


そう陽太は雪奈が泣き終わるまでの間ずっと背中を撫で続けてはそう思っていた、途中スマホが鳴った気がしたがそんな事を無視しては雪奈が泣き終わるまでずっと撫で続けては無言でいたのだった。


そしてそれから、どれぐらい時間が経過したかわからないが、やっと、雪奈は泣き終わったのかそっと、体を起き上がらせては離れた。


「……もう、大丈夫そうか…?」


「…はい、もう、大丈夫、です…」


流石に泣き終わった直後なだけある為か、雪奈は笑みを浮かべてはいなかった。かなり泣いたせいか声もかなりガラガラと枯れていて、目元も泣いたせいかかなり充血しては痛々しく腫れている。


そんな雪奈を見ては少し大丈夫か、と思うもすぐ家はそこだから大丈夫だろう、そう思ってはなにもしないことにした。ただ、泣いたおかげか若干だが晴れたような、曇っていた暗い表情は今はもう無いように感じる。


そしてそんなことを思っている内にふと、肩が濡れていることに気づいては陽太は思わず苦笑いしてしまった


「・・・?どうしました…?」


「っあ、あぁ、いや、夜桜かなり今まで心に溜めてたんだなぁってわかるって言うか…まぁ、証拠、がね」


ほんの少し失礼なんじゃないか、そう思うもこれぐらいなら、このなんとも言えない微妙にしんみりとした空気を和ませるには丁度良いだろと思えては苦笑いしながら指さしては言った。


言っている途中これは少し卑怯なんじゃないか、そう思うも仕方ない、そう割り切っていた、また当然そんなことを言った為雪奈は焦った表情をしては急いで陽太に近寄った


「っご、ごめんなさい…!濡らしてしまって!」


制服のポケットの中から白い綺麗なハンカチを取り出しては慌てて雪奈はそう言いその濡れている肩の部分を拭いた、陽太はそんな雪奈にどう対応したら良いのかと苦笑いしてはここしかないだろ、とそう思い声を掛けた


「…少しは、すっきりした?」


「!・・・はい、おかげさまで、今までずっと溜めてたものを吐き出すことができました…」


陽太のその言いたい内容が伝わったのか雪奈は何故だか少し照れくさそうに、でも嬉しそうにしてはそう言った、またゆっくり、ゆっくりとそのシミになりそうになっている肩の部分をトントンッ、とハンカチお当てては拭いていた


「…そっか、よかった」


陽太はそんな雪奈の表情を見ては陽太もまた心から安心することができたのか思わず腰から力が抜けたのか膝付いては転んだ、そして陽太が突然膝付いたことに雪奈は驚いては慌ててしゃがみこんだ


「っ!?か、狩野くん!?」


「っあ、あはは…俺も安心したら一気に腰の力が…」


「!…ふぅ、そうですか…って、狩野くんお爺ちゃんみたいですね」


陽太のそんなおっさんのような事を言ったのが雪奈にとっては面白かったのかクスクスと口元に手を当てては笑った、またそんな雪奈に陽太は驚くも笑わすことが出来た、と陽太も嬉しくなったのか笑った


「ふふふっ、狩野くん」


「あはは、っん?」


笑っていたところで雪奈が呼んできたことに陽太は雪奈を見た、そして雪奈はなにを思ったのか陽太にちゃんと目を合わせては笑みを浮かべ、言った




「   ありがとう   」



たった一言、たった一言に過ぎなかったがその一言はとても、今日一日見てきた中で一番魅力的で、一番美しい、そう思えた。風も丁度吹いたためか、腰までの長い綺麗な黒髪。


そして目元まである前髪は横に靡いた、電柱の蛍光灯のおかげか、光照らされキラキラと光っているようにも見えていた。そしてそんな雪奈を見た陽太は驚きのあまり思わず見惚れている。


敬語じゃなくタメ語のおかげで魅力的に見えたのかもしれない、だがそれだけじゃなくもっと他のなにかなのかもしれない。


笑みのおかげか?またはその長い綺麗な黒髪なのか?そう思うがそれよりも今、起こった事を忘れたくない、そう思えていた。変に思うかもしれないがそれほどまでに雪奈は魅力的だった、きっと他にも誰かがいたら見惚れるぐらいに


「っ…え、えっと…う、うん…」


「・・・私、最初狩野くんが教室に入ってきた時、あの女の子二人の連れなのかな、ってそう思ったんです」


「・・・っえ」


俯いたと同時に若干笑みなようで笑みじゃない表情を浮かべてはそう雪奈は言ってきた、陽太はそこで少し驚くも話を聞こうと雪奈の話に耳を傾けた


「っあ、も、勿論そう思ったのは最初だけですよ?、ただ…こんな時間に来る人なんてきっとこの二人と一緒につるんだりしている彼氏さんなんだろうなぁ…って、そう思ってたんです」


「それでそう思ったら私はきっとこの彼氏さんらしき人にもボコボコに蹴られたり殴られたりするんだろうな、って…痛い目に合うんだろうなって、もう、諦めてたんです…でも、そんな事は、予想は外れたんです…」


「・・・」


雪奈がゆっくりと消え入りそうな声を出してはそう話すことに陽太も思わず俯いてはあの時の、謎のわけのわからない衝動に襲われた時のその瞬間を思い出していた


「教室に入ってきたと思えば私を蹴っていた人がいきなり大声を出したかと思えば近寄って、後もう一人の方も…でもその次の瞬間凄い悲鳴が聞こえて…私あんまり覚えてないんですけど…」


「その、狩野くんがすごい怖い顔でその私を蹴っていた子の腕を握っていました…どれぐらいの痛みなんだろう、って私は不思議と何故だか安心していたんです…きっと恐怖から静かにしていたんだと思うんですが…ただ、その子の腕から尋常じゃないぐらいな、骨が砕けるような音がしたんです…」


「!?」


陽太はそんな妙に生々しい雪奈の言ったことに驚いては顔を上げた、怖い顔、一体どんな表情を浮かべていたのかわからない、またその骨が砕けるような、この時点で陽太はかなりおかしい、そう思った、自分にはそんな力があるわけがない、と


「…私って、ひどい子、なんですかね…」


「っえ…?」


突然顔を上げたかと思いきや苦笑いしてはそう言ってきた雪奈に陽太は唖然としては見た


「…その、私を虐めてた、蹴ってきた方が凄い苦痛な、悲鳴を上げてた時、後またもう一人の方が怖さから腰を抜かしている所を見たら私、こう思ってしまったんです…ざまみろって」


「・・・」


「・・・ふふっ、これじゃああの二人と同じ、ですよね…思ってること…」


「・・・いや、それは違うだろ」


「っえ・・・?」


一体なにをどう思ってそんな二人とお前を一緒にしなくちゃいけないのか、そんな二人とお前を一緒の存在なんかにしないでほしい、する必要性すらもない、そう思って当然だ、そう陽太は少し怒りそうになっていた


「…俺は今日、君と、夜桜と初めて会って、そしてほんの少しの時間しか過ごしてないけど少なくとも俺はあんな二人と一緒だとは思わねえよ、いや違うな、あんな二人と一緒の存在なんて思いたくもねえよ」


「っ…か、狩野、くん…?」


「…俺は君のことなんも知らねえよ、君が一体なにが好きだとか普段なにをしてるのかとか君の趣味はなんなのかだとかそんな事はなにも知らねえよ」


「でもこれだけは言える、あんたはあんな二人と一緒なんかじゃねえよ、そう思って当然なんだよ、あんたの話を聞く限りそう思ったって不思議じゃねえよ、いや違う、逆にそう思わねえ方が不思議なぐらいだ、よっぽどどっかの聖人ぐらいだそんな思わないのは。夜桜、お前のその思ってることは普通なんだよ、そう思って普通なんだよッ!!」


「っ…」


息を切らしてはそう少し激怒してはそう陽太は言った、またそう言うと同時に目の前にいる雪奈があんな二人と同じ存在だと言う雪奈に腹が立っていた。まったく全然どこも似てもいないしそこまで自分を卑屈に例えることに腹が立っていたのだ。またそう感情的になり激怒したことによるのか、雪奈は大きく目を開いてはとても動揺していた


「・・・俺はあんたみたいな優しい奴、今までずっと見てきたことが無かった、まだたったの16年間しか生きてきたことなかったけど…俺はあんたみたいな人、生まれて初めて見た…すげぇなって思った…でもそう思うと同時に俺はあんたのそのどこまでも他人に優しいところ、でも自分を卑屈に見ているのが腹立たしい…そう思った…」


「!」


「・・・ごめん、言い過ぎた…俺は君の、夜桜の友達でもなんでもないのに…」


陽太は好き勝手ぶちまけた事の後悔からか頭に手を当ててはそう言った、やってしまったと、いくらなんでも言い過ぎだろと


「・・・いいえ、そんな事はないです」


「っ・・・?」


「…ごめんなさい、でも、ありがとうございます」


「っえ、えっ…?」


酷いことを言ったにも関わらず逆に謝られては挙句にはなんとも言えない笑みを浮かべてはそうお礼を言ってきた雪奈に陽太は戸惑った


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