㉛ 弓子の不安
「いやあ、今回、僕の出る幕は無かったですね?」後席の雪村が言った。
「ええ、まさかこんな展開になるとは……やはりメジェド君には敵いませんね?」
サン・ジェルマンも半ば呆れながら、そう言って苦笑いした。
当のメジェドは、"どうしたの?早く帰ろうぜ"とでも言いたげな顔をしている……ように見えた。
件のアビアコ航空機は、無事にサンタデール飛行場に着陸出来たようだった。ただ後々、ポータルを隠していた雲の中で、ズレた時空の17分間が、各方面で物議を醸す事になるのだが、機体も壊れず、死傷者もゼロなのだから、この際、細かい事には、目をつぶって欲しいところである。
ビートルが名護屋テレビ塔の地下駐車場に戻ると、いつの間にかメジェドの姿は消えていた。
危機になると颯爽と現れ、トラブルを解決したら、人知れず去って行く。
それはまるで、"ウルトラマン"のような振る舞いだった。
科学特捜隊のイデ隊員が、第37話のエピソードで言っていたセリフ「ウルトラマンが居れば我々科特隊は必要無いんじゃないか?」の気持ちが、弓子にも少しだけ分かったような気がした。
これまでは、"そのポジション"に雪子が居て、次に雪村が居たのだが、そこにセト神やメジェドが、代るがわる入る。近頃はすっかりそんな感じだ。
弓子としては、もちろん、雪村の負担が減るのは、大歓迎なのだが、少し寂しい気もした。
(イヤだわ、何て贅沢な悩みなのかしら。)
自分でもそう思う。
とにかく今は、来るべき1999年の7月の危機に向けて、強力な味方は、多ければ多い程イイのだ。
一抹の不安が有るとすれば、あのメジェドが、いつまで自分たちのサイドに居てくれるか、という心配だ。
真田香子の家に産まれ堕ちたアレは、その仲間である私たちを、家族として認識しているからこそ、味方でいてくれている気がする。
しかし例えばもし、人類が地球にとって有害な存在だと、或る日神々が断じた場合、メジェドは、私たちの敵側にまわるのではあるまいか?そんな心配をついしてしまう弓子なのである。
何故ならメジェドが、テレパスの自分に対して、これまで一度も、心を開いた事が無いからなのである。
そうなのだ。彼は由理子には見せている心を、弓子に対しては決してオープンにしないのだ。
多分それは、弓子のテレパスが、相手の自分に対する、敵意・悪意・殺意に特化したモノである事と、無関係とは思えない。それ故に、彼女は不安を抱くのである……自分の悪い予感が外れて欲しい。心からそう願う、弓子なのであった。
以上で第27巻はオシマイです。
引き続き第28巻もどうぞよろしくお願いします(>ω<)




