① ウチの不審者
真田香子は、愛知県豊橋市の公立小学校に務める教諭である。
担当クラスは6年4組。
専門教科は社会科である。
が、小学校の先生だから、当然、全教科を教えている。
そんな彼女には、最近ちょっとした悩みが有る。
職員室内の男尊女卑思想が、まだまだ払拭出来ないから?
サービス残業が横行する、職場環境がキツイから?
……そんな、当たり前の話ではない。
ここのところずっと、彼女の家には、謎の不審者が居座っているのだ。
いや、ソレはむしろ、謎の生物と言うべきなのかもしれない。
初めてソレに出会った時も、自分の部屋の中だった。
その時は、出会いがしらだったからなのか、ソレはすぐに走って外に逃げて行った。
しかし、いつの間にかソレは、彼女の部屋の中に戻って来ていた。
ソレについては、以前、亜空間レストランの仲間たちに相談した事もあった。
ソレに詳しい人の話によると、ソレは香子の家に、生まれるべくして生まれた存在なんだそうだ。ソレの必殺技は、眼からビームを出す事らしいが、別に彼女に対しては、害を成さないはずだから、恐れる事は無いと言う。
そうは言われたところで、慣れるまでは、流石の香子も落ち着かなかった。
何故ならソレの姿が、余りにも不気味だからだった。
ソレは、白い布を頭の上からスッポリと被り、下から素足を出している。
そして目の部分だけ、布に穴が開いて見えている。
ソレをマンガやアニメのキャラクターに例えるなら、"オバケのQ太郎"、もしくは銀魂に出て来る"エリザベス"だ。
ソレは常に無言だ。邪魔にはならない。
でも、何を考えているのか、さっぱり分からない。
ソレは気がつくと隣に居て、いつの間にか居なくなっている。
余りにも行動が自由だ。
そしてソレの行動は、日を追うごとに自由度を増して行った。
ある日、こんなことがあった。
彼女が学校の職員室で、テストの答案の採点をしていた時だった。
ふと気配を感じて振り返ると、ソレが後ろに立っていた。
彼女は危うく大声を出すところだった。
しかし、ギリギリでこらえた。
何故なら、職員室内でソレの姿が見えているのが、どうやら、自分だけのようだったからだ。他の教員たちは、まるでソレの存在を、気にも留めていない様子だった。ただ、物理的にソレはそこに居るらしく、みんながソレにつまずくような現象は、有ったのだった。




